有力な見込み顧客に最適化 ABMという戦略

BtoBの「顧客」を理解しよう(第5回)

有力な見込み顧客に最適化 ABMという戦略

マーケティング部門と営業部門を連携し、成果を高める戦略として期待されるのがABM(Account Based Marketing)です。この考え方と成功のポイントを見ていきましょう。

ABMの考え方

 マーケティング部門が集めた顧客のリストからクオリフィケーション(見込み顧客を選び出す)をする手段として注目を集めているのが、「ABM」(Account Based Marketing)と呼ばれる戦術です。

 マーケティング部門と営業部門が連携し、マーケティング施策の成果を高める戦略として期待されています。その考え方と成功のポイントを見ていきましょう。

 欧米のマーケティング専門サイトにABMという言葉が頻出し始めたのはここ数年ではありますが、実はこの概念自体は10年以上前から存在していました。

 最初に提唱したITSMA(IT Services Marketing Association)の定義によると、ABMとは「有力な見込み顧客に最適化されたマーケティング活動を行う」という考え方です。

 ABMを行うメリットは3つあります。まずは、効率よいマーケティング活動が期待できること、次にマーケティング部門と営業部門の連携がスムーズになること、そして増客に結びつきやすいことです。

ABMを行う3つのメリット
  • 効率よいマーケティング活動が期待できる
  • →「売上の8割は、2割の上位顧客によって生み出される」という「パレートの法則」に基づいてターゲットを選定することで、効率のよいマーケティング活動が期待できる点。ターゲットを絞りやすいBtoB向きといえる
  • 営業部門の目標とより密に連携できる
  • →営業部門が狙っているポイントをマーケティング部門が的確にフォローすることで、成約の確度をあげられる。確度の高いマーケティング活動にできる
  • 増客に結びつきやすい
  • →ABMでは、1つのターゲットアカウントに対して部門間で連携しながらマーケティングと営業活動を行うため、クロスセルやアップセルといった増客に結びつきやすい

日本企業の営業活動にマッチしたABM

 「今までの営業活動と何が違うのか」という疑問が出るかもしれません。

 実はABMは、日本企業ではかなり古くから行われてきた手法なのです。

 ただし従来の営業とABMとは明確に異なる点があります。デジタルマーケティングの力を借り、より効率よく展開できるという点です。

デジタルマーケティングが営業活動を後押し

 『デジタルマーケティングとコンテンツマーケティング』でも触れたように、デジタルマーケティングが普及したおかげで、見込み顧客の行動を基に、その人がどんな情報を求めているのか推測がしやすくなりました。

 下の図のように、B社のメールマガジンを熱心に読んでくれるA社の社長がいたとします。A社長はメルマガの誘導ページのほか、様々なページを見て情報を収集しているようですが、中でも「マイナンバー対応ソリューション」に関心があるらしく、説明ページや問い合わせページを何度も見た形跡がログから分かりました。

見込み顧客の行動を分析しニーズに合った営業活動をする

見込み顧客の行動を分析しニーズに合った営業活動をする

 マーケティング部門でこのようなA社長の行動を把握していれば、営業部門と連携することで、営業担当者がよりA社長のニーズに合った提案をすることができるようになります。これまではこういったニーズを把握する活動は営業担当者の力量にかかっていましたが、コンテンツマーケティング施策と連携することで、営業活動を効率化できるのです。

 このように、ターゲットとする層に対し効果的な営業活動を展開できるのが、デジタルを活用したABMの最大のポイントです。

ABMを成功に導くための条件

 とはいえ、ABMを成功させるには次のような条件があります。

  • 部門間の連携が必要

 部門間の連携がしやすい雰囲気を社内に作る必要があります。

 ABMは、マーケティングだけで完結するものではないので、営業部門にメリットを訴求して巻き込んでいかなくてはなりません。

 そのため、営業とマーケティングの2つの部門を横断して統括する責任者を置くといった人事的な対策も必要になるでしょう。

  • 長期プランで戦略を練る

 コンテンツマーケティングと同様、ABMもすぐに成果が出る戦略ではありません。

 特にBtoBの場合、場合によっては顧客の事業戦略を年単位で考え、フォローしなくてはならないでしょう。長期プランで戦略を練っていくことも必要です。

  • すべての見込み顧客を網羅

 デジタルのメリットを生かし、直近の売上になる顧客だけでなく将来顧客にしたい層や、今回は取引に結びつかなかったが来期はぜひ取引したい、といったすべての顧客を網羅することです。

 直接的に取引がない企業や、契約更新がなかった企業など、営業担当者が訪問できないケースはかなりあります。

 そうした企業もすべてターゲットとし、コンテンツを活用しながら探客することで、より効果を最大化できるのです。

ABMのKPI設定の方法

 ABMを進めるに当たり、次のようなKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。

 ABMとコンテンツマーケティングを結びつければ、効果が高いと期待できるターゲット層に対してコンテンツで訴求していくことができます。

 例えば新規のターゲット層に対しても、メルマガの反応がよかった人に直接電話をかけるテレマーケティングを行うというのもABMの一種です。

ABMを確実に推進するためのKPI項目
  • ターゲット企業との接点を網羅しているか?
  • →ターゲットとした企業の中で、製品の購買に決定力を持つと思われる接点(例えば、技術責任者や購買担当者、CEOなど)を網羅しているかを判定します。それぞれの接点のどのようなコンタクト情報を取得しているかを確認します
  • どのくらいターゲットの興味を引いているのか?
  • →実行しているマーケティング施策が、的確にターゲット企業の興味を引いているかを判定します。メールマガジンの開封率や、誘導用URLのクリック率など、アクセス元のIPアドレスのデータを活用してアクセス分析を行います
  • 案件が進んだか?
  • →マーケティング施策によって、購買意思に変化があったのかを判定します。①で可視化した接点ごとに、購買意思の強さを濃淡で表したヒートマップで変化を確認します
  • 施策はABMに沿っているか?
  • →マーケティング施策がABMで定義したターゲット企業に即した活動となっているかを判定します。各施策への参加者のうちどのくらいがターゲット企業からの参加かを見ることで、施策が効率的な投資になっているかを確認します
  • ABMが営業活動に役立っているか?
  • →「ABMを導入することで、これまで90日掛かっていた成約までの期間が30日に短縮された」など、案件に掛かった期間、費用、訪問回数などを数値化して効果を判定します

第6回「チャネルの変化により顧客の行動も変化している」へ続く)

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