カスタマージャーニーは顧客のコンテンツ体験

BtoBの「顧客」を理解しよう(第3回)

カスタマージャーニーは顧客のコンテンツ体験

最近、カスタマージャーニーという言葉をよく聞くようになりました。ここではその意味と意義、コンテンツマーケティングとの関係について見ていきましょう。

商品を巡る「顧客の旅」

 コンテンツマーケティングでは、買い手、つまり顧客の様々な状態に合わせて、どのようなコミュニケーションを図るかが重要になってきます。

 顧客が商品やサービスを知って興味を持ち、最終的に購買にいたるまでの行動や心理状態を「旅(ジャーニー)」にたとえてモデル化したものを「カスタマージャーニー」と呼びます。商品を巡る「顧客の旅」ということで、この様子を可視化したものが「カスタマージャーニーマップ」です。

 購買した後に商品を気に入って取引を継続したり、他者に推薦したりするのも「旅」の一部といえます。

カスタマージャーニーは商品を巡る「顧客の旅」

カスタマージャーニーは商品を巡る「顧客の旅」

 カスタマージャーニーマップは、第1章の「消費者購買プロセスの5段階モデル」と似ています。ただし今のカスタマージャーニーが5段階モデルと異なる点は、買い手が購買にいたるまでの行動が複雑で多岐にわたっていることです。

 以前は買い手が商品やサービスに接触するチャネルは、新聞やテレビ、雑誌広告で商品を認知し、BtoBの場合は展示会やセミナー、ショールームに行き、予算に応じて検討し、購買にいたるというものでした。

 現在はWebサイトをはじめとして、買い手が商品を認知し関心を持つまでのチャネルが増えています。

 商品の検討段階でも、Webサイトに掲載されている製品導入事例、報告書などのホワイトペーパー、他社製品との比較など、参考にすべき情報は山のようにあります。

カスタマージャーニーマップを描いてみよう

 このように顧客の行動が複雑化する中で、商品やサービスに関してカスタマージャーニーを描くことはとても重要になってきています。

 前述のようにカスタマージャーニーは買い手が購買にいたるまでの行動や心理状態を図式化したものですが、購買後のアフターサービスやリピートのプロセスもカスタマージャーニーに含める場合もあります。

 特にBtoBの場合は、BtoCの消費財と比較して高額の商品を購買し継続して使うことが多いため、購買後の買い手の行動も重要になってきます。

 下に、カスタマージャーニーマップを示します。買い手がどんなチャネルやコンテンツによって商品を認知し、興味を持ち、購買にいたるかを整理していきます。

カスタマージャーニーマップの例

カスタマージャーニーマップの例

カスタマージャーニーに沿ってチャネルを整理し、各チャネルで提供できるコンテンツを検討することで、コンテンツの種類の過不足や掲載すべき内容を整理できます。

カスタマージャーニーはどこまで設計できるか?

 カスタマージャーニーマップを作成する最大の目的は、顧客がたどる道筋を把握し、ジャーニー内のチャネルに最適なコンテンツを配置することです。

 カスタマージャーニーの設計に当たっては、既存顧客へのヒアリングや調査を通じて、購買にいたった経路を確認する必要があります。

 しかしBtoB企業がカスタマージャーニーを設計するときに失敗しやすいのは、次のような理由によります。

カスタマージャーニーを設計するときに失敗する理由

カスタマージャーニーを設計するときに失敗する理由

カスタマージャーニーを設計するときに失敗する理由

 実際にカスタマージャーニーが例示されているものは、BtoCの小売業であるECサイトや、消費財が商品である場合が多く見られます。

 上の図で分かるように、商品の購買までに多くの人が関わるBtoBの場合、カスタマージャーニーを描くのが難しいのも事実です。

BtoBのカスタマージャーニー設計の正解は?

 しかし、だからといってBtoBではカスタマージャーニーは無意味というわけではありません。BtoBでカスタマージャーニーを描くには、顧客の売上額や企業規模に関してモデルケースを洗い出すという方法があります。

実際に3つのモデルケースを見てみましょう。

3つのモデルケースを基にカスタマージャーニーを描く
  • ① 平均的な顧客企業をモデルケースにする
  • 自社の中で最も層が厚い顧客をモデルに、カスタマージャーニーを描く。ただしモデルケースを選ぶに当たって、何をもって「平均」と位置づけるかが難しいところ
  • ② 売上額で上位の企業をモデルケースにする
  • 売上高の大きな企業をモデルケースとし、同様の売上が見込める顧客のカスタマージャーニーを描く
  • ③ 1 年以内に取引を始めた新規顧客企業をモデルケースにする
  • 新しい取引先が、どのようなチャネルで自社製品の購買にいたったのかを洗い出し、最新のカスタマージャーニーを描く

 BtoBでは顧客企業の売上高や規模、取引開始時期などによって、上のようなモデルケースを基にカスタマージャーニーを描くことができます。

 3つのモデルケースを紹介しましたが、③とは逆に、古くからの顧客企業をモデルケースとし、リピートにいたるカスタマージャーニーを分析する方法もあります。ただしどのモデルを選んでも「これが一般的」というカスタマージャーニーはありません。カスタマージャーニーは、あくまで顧客が接するチャネルとコンテンツの配置の戦略を考えるたたき台です。

あとはコンテンツマーケティングを実践しながら微調整を繰り返し、最適なカスタマージャーニーを設計できるよう努力することが必要です。

第4回「マーケティングで「創客」営業で「増客」」へ続く)

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