BtoB企業こそ始めるべきコンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングを理解しよう(第5回)

BtoB企業こそ始めるべきコンテンツマーケティング

ここでは、BtoB企業こそコンテンツマーケティングをやるべき理由をあげながら、マーケティングにおけるコンテンツ活用の必要性を見ていきます。

コンテンツがなければチャンスすらない

 コンテンツマーケティングが注目されるようになった背景には、情報チャネルが増えたことがあるためと説明しました。
 特にBtoBでは、先述したように買い手は商品の購入前にインターネットを使った事前調査をしっかり行うようになりました。新たな取引開始に当たり、製品の特徴や優位性を知りたいと思うのは当然です。
 「多様化する情報チャネルに買い手が欲しいと思うコンテンツがなければ、購入候補に上るチャンスすらない」ことになります。
 ビジネスの世界では当たり前ですが、現在の取引先と未来永劫取引があるとは限りません。常に新たな取引先を探し、新たな商材を提供してこそ企業は成長します。その候補に残るかどうか、それを決めるのがコンテンツなのです。

営業の役目が変わってきている

 買い手がWebサイトなどのコンテンツを通じて事前に情報を収集するようになったため、BtoBでは営業担当者の役割も変わってきます。昔のように「商品の話を聞きたい」といきなり営業担当者を呼ぶ企業は減ってきています。これまで営業担当者が担ってきた「商品に関する詳細なコンテンツの提供」という役割はWebサイトに移行しつつあります。「人間が対面営業で行ってきたことをWebサイトで補完するものが、コンテンツマーケティング」といっても過言ではありません。
 買い手が初めて接点を持つのは営業担当者ではなく、Webサイトなどの商品の詳細情報やレビューなどのコンテンツです。今や購買プロセスで、コンテンツが果たす役割はかつてなく大きなものとなっているのです。

商品について買い手の方が詳しいことも

 リーディング・ソリューションが2015年10月に行った調査「BtoB購買行動の調査結果レポート」によると、取引業者を選定する際に参考にしている情報源として「企業のWebサイト」をあげた回答が65.2%となりました。これは第2位の「カタログ・パンフレット」(55.8%)、第3位の「営業担当者による説明」(55.5%)をおさえてトップの情報源です(注1)

取引業者選定で参考にする情報源はWebサイトが1位
取引業者選定で参考にする情報源はWebサイトが1位

 こうした買い手の情報収集行動を考えると、「Webサイトにコンテンツがない」という状態は、ビジネスチャンスを逸するといっても過言ではありません。
 自社にコンタクトがあった時点で、相手の情報収集はすでに終わっているともいえます。営業担当者よりもむしろ相手の購買担当者の方が、商品やサービスについて詳しいことさえあります。そんなとき、営業担当者が自社製品の説明を一から始めても、相手は「そんなことは分かっている」と思い、かえって購買意欲が削がれてしまうでしょう。

 

営業プロセスと結びつけて戦略的に

 とはいえ、コンテンツマーケティングで営業担当者が不要になるわけではありません。コンテンツが自動的に見込み顧客を運んできて、登録や申し込みを促し、受注件数が上がるわけではないのです。
 特にBtoBの場合、コンテンツマーケティング“だけ”で完結するのではなく、営業プロセスと結びつけて確実な受注を実現する戦略を考えなくてはなりません。BtoBでは、デジタルだけで完結するケースは非常に少ないのです。
 文房具や消耗品などの商材を除けば、BtoBでは従来型の展示会やセミナーなどリアルな場でのスタッフによる説明や、営業担当者による営業活動、購入後のフォローも重要になってきます。BtoBの購買は対企業の取引なので、購入にいたるまでのプロセスが長く、与信調査も必要です。また一度取引すると長期にわたって関係が続くという特徴もあります。

5年後、10年後、今と同じ営業体制が保てるか

 コンテンツマーケティングに取り組むべき視点の1つとして、この先、現状と同じ営業体制が組めるのか、という点があります。労働人口が減少に向かう今後、人が関わる必要性が高い営業の部分に人的リソースを集中投下し、見込み顧客を呼び込むという入口部分の営業はコンテンツに働いてもらうのが有効です。このため、今からコンテンツマーケティングに取り組むことは、5年後、10年後に優秀な営業として活躍するコンテンツを育て上げることになるのです。

コンテンツを持たない企業は存在しない

 コンテンツマーケティングの重要性は分かっていても、なかなか本格的に進められない企業もあります。よくBtoB企業の担当者が「当社には、人に見せられるようなコンテンツはない」と口にします。
 しかし、コンテンツを持っていない企業はありません。商品やサービスがあれば、「どんなときに役に立つのか」「他社にはない優位性は何か」「顧客からどんな評価をされているのか」など、語ることは山ほどあるはずです。
 顧客に渡すカタログ、自社Webサイトに掲載している情報、すべてがコンテンツといえます。営業担当者のトークをコンテンツにしてもよいでしょう。顧客からの疑問にどう答えているのか、悩みを解決するために最適な商品はどれで、どう勧めているのか。敏腕営業担当者の言葉だからこそ、将来の顧客の心に響くコンテンツが生まれるのです。

(注1)リーディング・ソリューション 2015年10月調査「BtoB購買行動の調査結果レポート」

第6回「デジタルマーケティングとコンテンツマーケティング」へ続く)

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