コンテンツマーケティングが注目されているわけ

コンテンツマーケティングを理解しよう(第1回)

コンテンツマーケティングが注目されているわけ

コンテンツマーケティングが注目されています。実はマーケティング活動の中でコンテンツを利用することは、従来も行われていました。なぜ今、コンテンツマーケティングが必要なのでしょうか。

以前からあったコンテンツマーケティング

 最近、コンテンツマーケティングという言葉をよく耳にします。米国では2010年ごろ、日本国内でも2014年ごろから注目されるようになり、指南書や解説本も出てきています。
 こういうと最新の難しい経営戦略のようですが、基本的な考え方自体は、決して新しいものではありません。マーケティングの中でコンテンツを活用することは、これまでも行われてきたからです。

消費者の購買は「コンテンツ」ありき

 マーケティングを考えるときには、消費者が商品などを買うときの「購買プロセス」が重要になります。
 マーケティング分野の世界的権威であるフィリップ・コトラー氏やケビン・レーン・ケラー氏は「購買プロセスは、消費者が問題やニーズを認識したときに始まる」としています。そして、ニーズの認識から購買までの5つのステップを「消費者購買プロセスの5段階モデル」と提唱しました(注1)

消費者購買プロセスの5段階モデル
消費者購買プロセスの5段階モデル

「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント第12版」を基に作成

 この図の「情報探索」の段階で、消費者が頼りにする主な情報源を次の4つに分類しています。
① 個人的情報源:家族、友人、隣人、知人
② 商業的情報源:広告、Webサイト、販売員、ディーラー、パッケージ、ディスプレイ
③ 公共的情報源:マスメディア、製品評価をする消費者団体
④ 経験的情報源:製品の操作、検討、使用
 ここでいう「情報源」が、「コンテンツ」です。
 私たちの購買行動を振り返ると、友人・知人の口コミをはじめ、インターネット上のレビューサイトやブログ、企業の商品ページなど様々な情報源を見て、商品を購入するかどうか検討します。
 企業も消費者に購入を検討してもらうため、商品の詳細を説明したWebサイトや広告を作ったり、カタログを提供したりします。
 つまり、マーケティング活動の中で「売る側」が「買う側」にコンテンツを提供することは自然に行われていました。
 後ほど詳しく説明しますが、展示会やセミナーの開催もコンテンツの1つですし、eBook(電子ブック)や動画などもコンテンツといえます。

インターネットで閲覧できるコンテンツが増えた

 消費者購買プロセスのモデルは、ほかにもいくつか提唱されています。有名なのは、1920年代にサミュエル・ローランド・ホール氏が著した『Retail Advertising and Selling』にある「AIDMA(アイドマ)」です。商品を知ってから購入にいたるまでの消費者の心の動きをモデル化したもので、この頭文字を取って「AIDMA」といいます。
 これに対し、ネットでの購買行動プロセスモデルとして電通が提唱しているのが「AISAS(アイサスまたはエーサス)」です。ネットでの購買ならではの「検索」「共有」が含まれているのが特徴です。

AIDMAとAISAS
AIDMAとAISAS

 インターネットの登場以前、買い手は自力で商品やサービスに関する情報を収集していました。売り手である企業も、店舗や展示会への訪問、カタログ希望や問い合わせがあったときに初めて情報を提示するのが一般的でした。
 しかし購買プロセスは変わり、買い手は、売り手がインターネットで公開している商品やサービスの情報にアクセスして事前に詳細を知ったり、購入した人の口コミや評価を見て中身を検討できるようになりました。
 様々な情報にアクセスできるチャネルが増えれば、そこに掲載する情報(コンテンツ)も増えます。買い手は多くのコンテンツに触れ、検討し、購入します。購入後は、商品の使用感や企業の対応などの経験をコンテンツとして発信し、それがまた次の買い手が接するコンテンツとなります。

インターネット登場以前と以後の情報チャネルの違い
インターネット登場以前と以後の情報チャネルの違い

 こうした状況の中、企業は次のように考えるようになりました。「増え続けるコンテンツをどのように戦略的に活用すれば、購買をより促せるのか?」
 昔からマーケティングで使われてきたコンテンツですが、その戦略的活用に注目が集まった理由は、インターネット技術によるチャネルの多様化、消費者行動の変化によるものなのです。

(注1)Philip Kotler, Kevin Lane Keller(2006) Marketing Management 12th Edition, Peaarson Education Inc., 恩藏直人(監) 月谷真紀(訳)『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント第12版』(2014年)、p.239-240

第2回「こんな企業に向くコンテンツマーケティング」へ続く)

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