巻き込む!オウンドメディアの作り方 第13回

原点をどう伝えれば届くのか

2018.05.23

コンテンツマーケティング

  • 山本 由樹

    株式会社「編」代表取締役社長 山本 由樹

前回は企業の原点を組織内で共有する大切さをお伝えしました。今回は原点をオウンドメディアで伝える方法を語ります。自社におけるインナーブランディングと、顧客へのアウターブランディングを同時に行う、まさに一挙両得の活用法です。

オウンドメディアをインナーとアウターのブランディングに効かせるために大切なのは、企業活動の原点を言語化することです。歴史のある企業であるほど、原点をわかったつもりになっています。しかし社員にそれを語らせると一人ひとりが違うことを言う。その解釈のズレが企業の輪郭を曖昧にしてしまいます。ひいてはサービスの質の低下につながります。

言語化するメリットは、持つべき意識を明確にすることです。各社員、スタッフの意識が同調すれば、企業活動の質も上がることが期待できます。ではその言語化された企業活動の原点とは具体的には何でしょうか?

当たり前の話ですが原点は始まりの物語にあります。

企業活動の原点を言語化する

私が編集したワコールのオウンドメディア『Wacoal Journal』を例に語りましょう。

Wacoal Journal

ワコールは日本を代表する世界的なインナーウェアのブランドです。創業者の塚本幸一は、太平洋戦争でもっとも無謀な作戦と呼ばれ、おびただしい戦死者を出したインパール作戦に従軍しました。死線を越えて1946年に復員した塚本は、ワコールの前身となる和光商事を創業しました。

創業時の思いを塚本は次のように語っています。とても素晴らしい言葉なので、ちょっと長くなりますがワコールのHPから引用しましょう。

《本来、女性が生きているということは、裏返して言えば、美しくありたいという願いそのものだ。しかし、戦争の時代は、美しくありたいという望みを捨てなければ生きていけない。戦争で女性が未来の姿を捨てる光景を目にしたため、戦争が終わるとともに、女性を美しくしたいという思いが、一気に私の中でふつふつと沸き上がった……》

赤字にしてある部分《女性を美しくしたい》という言葉が、今につながるワコールの原点です。ただ創業から70年以上たち、企業活動は女性の下着だけに留まらず、男性の下着も含め様々な製品やサービスに拡大しています。そのためこの《女性を美しくしたい》という言葉では全てをカバーできなくなっていることも事実です。

そこで、ワコールは《女性を美しくしたい》という原点は変えずに、自社の現在と未来の指針となる言葉を新たなタグラインとして作り直しました。それが《より美しく》です。

以下のサイトでは《より美しく》を伝えるためのショートムービーが見られます。 
http://www.wacoal.jp/4stories/

タグラインとブランドジャーナリズム

タグラインとは、その企業の本質的価値を短いコピーに凝集したもので、コーポレートメッセージやキャッチフレーズとも言い換えることができます。

私の好きなタグラインは、資生堂の《一瞬も一生も美しく》や、マツダの《Be a driver.》、ナイキの《JUST DO IT.》などです。聞いただけで企業のイメージが湧いてくるような、とても大切な言葉です。

ワコールの《より美しく》というタグラインには、女性に限らず男性や子供、老人までを対象とした、ワコールの製品やサービスの価値が凝縮されています。その《より美しく》を提供するワコールの過去と現在と未来を、この『Wacoal Journal』では伝えています。

例えば最初の見開きには《原点の美》として塚本幸一から始まるワコールの歴史が。次の見開きには《変わらない美》としてワコールのもの作りや商品テスト、研究所の活動を。その他にも《情熱の美》として、顧客を《より美しく》するためにいるビューティアドバイザーの活動や、未来を《より美しく》するためのピンクリボンなどの社会貢献活動まで、ワコールの《より美しく》の取り組みをすべて伝えています。

この『Wacoal Journal』で意識したのはブランドジャーナリズムとしての手法です。
企業の売り上げを追求するコンテンツでも、単なる企業広報でもなく、ジャーナリズム的手法で企業価値を切り取って伝える手法をブランドジャーナリズムと言います。その目的は企業活動の本質を客観的に伝え、ロイヤルティの向上を目指すことです。平たく言うと、「もっと好きになってもらう」のが狙いです。そのためには第三者的視点から、企業活動の価値を伝える必要があります。つまり、「手前味噌にならない」ように注意しなければなりません。

まとめると、「もっと好きになってもらうために、手前味噌にならないように伝える」。通常の企業の広報活動として認識してしまうと、その違いは分かりません。自分たちにとっては当たり前に思えることも、外からは新鮮に見えたり、高い価値を持っていたりします。それを発信し、いかに受け手の共感を得るかが鍵です。

そのためのオウンドメディア制作については、客観的視点を持った私のような外部編集者に発注するという選択肢もあるでしょう(と、ちゃっかり営業活動)。

《より美しく》は企業の原点を進化させたタグラインでしたが、あなたの会社にはそんなタグラインはあるでしょうか? なければまず企業の原点を振り返って、言語化する必要があります。そして、その価値を伝えるためにオウンドメディアを活用しましょう。

その時、ブランドジャーナリズムの手法を取り入れれば、単なる企業広報ではない価値が伝わります。そのメディアは、インナーブランディングとアウターブランディングの両方に効果的なツールとなるはずです。

以下、まとめます。

内と外に効くオウンドメディアに必要な要件

  • ①企業の原点を振り返ること
  • ②その原点を言語化すること(タグラインの作成)
  • ③ブランドジャーナリズムの手法
山本 由樹

株式会社「編」代表取締役社長山本 由樹

1986年光文社に入社。週刊女性自身で16年、その後「STORY」創刊メンバーとなる。2005年~2011年同誌編集長。2008年には「美STORY(現美ST)」を創刊し、「国民的美魔女コンテスト」を開催。美魔女ブームを仕掛ける。2013年9月に株式会社giftを設立するとともに、自立したアラフォー女性をターゲットとした月刊誌「DRESS」を創刊。読者のコミュニティDRESS部活は30以上の部活数、3万人以上の部員が集っている。編集長退任後は「編」にてメディアの枠を超えたコンテンツ・プロデュースをしている。2017年9月まで日本テレビ『スッキリ』でレギュラーコメンテーターを務める。 著書/「『欲望』のマーケティング」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「会社を辞めても辞めなくてもどこでも稼げる仕事術」(共著・SBクリエイティブ)

※肩書きは記事公開時点のものです。

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