巻き込む!オウンドメディアの作り方 第15回

共感の時代の伝え方

2019.04.10

コンテンツマーケティング

  • 山本 由樹

    株式会社「編」代表取締役社長 山本 由樹

カリスマ編集者 山本由樹が考察 巻き込む!オウンドメディアの作り方 第15回 共感の時代の伝え方
前回は、コンテンツマーケティングとブランドジャーナリズムの違いをお話ししました。今回は、あらゆるメディアで最も重要な要素である「共感」について、歴史上の観点などから、あらためて考えてみようと思います。

前回、コンテンツマーケティングとブランドジャーナリズムの違いについて語りました。今回はブランドジャーナリズムを行う上で「どこに置くか?」という問題について語ると前回述べました。その前に今回は、ちょっと横道にそれたいと思います。いえ、横道というよりももっと大切な『共感』についての考察です。
どちらかというとメインストリームかもしれませんね。

ここで僕が述べるまでもなく、社会の中における企業活動はより高い公共性を求められるようになってきました。いえ、求められるというレベルではなくすでに企業存続の必須条件になってきたと言ってもいいでしょう。例えばESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)という言葉は2020年に向けて企業側からより積極的に発信していかなければ、急速に時代に取り残される可能性さえあります。
詳しくは日経BPコンサルのSDGsデザインセンターのサイトをご覧ください。

そんな時代を思うとき、私はよく思い出す言葉があります。
マーシャル・マクルーハンの有名な「メディアはメッセージである」という言葉です。

メディアに載せられる情報よりも、メディアそのものが重要な意味を持つことを解いたこの言葉は、メディアによる「人間の変容」を語っています。マクルーハンが脚光を浴びた1960年代の社会は、テレビの登場によるメディアシフトが起きた時代でした。グーテンベルクが生み出した活版印刷によるメディアが『視覚型人間』を生み出し、五感に訴えるテレビは『触覚型人間』を生み出すと、マクルーハンは予言していました。そして活字型の論理化された知性ではなく、テレビ的な感覚的知性によって人は「原始」に帰っていくと。

マクルーハンの時代からすでに50年以上がたち、私たちの文明はまだ「原始」には帰っていないようですが、世界的なナショナリズムの台頭をしばしば実感するとき、予言は的中していたのではないかと思うのです。

そして現代です。ふたたびメディアシフトの時代が訪れています。言うまでもなくデジタル・SNSメディアの台頭です。このメディアシフトはテレビの登場以上に大きな変革です。それは情報発信の主体が『組織から個人』へとシフト(移行)する時代でもあるからです。
実際メディアが新聞社やテレビ局、ラジオ局、出版社などの組織によって運営されている時代は、人類の歴史においてはごくわずかな期間にすぎません。活字印刷の登場する以前はいわゆるマスメディアはなく、情報は手書きの文字か口コミによって人から人へと伝達されるものでした。ほとんどの時代、情報の発信元は組織ではなく、個人だったのです。

その観点に立てば、SNSの登場はメディアの主権を再び個人が取り戻したとも言えるわけです。違いは、個人の情報発信が巨大なネットワークにつながっていること。つまり「個人がマスメディア化」した時代だということです。その結果生み出されたものは「巨大な口コミ社会」の出現です。マクルーハンの時代、SNSはまだ登場していませんでしたが、世界的規模の村社会の誕生を『グローバル・ヴィレッジ』という言葉で予言しています。あらためてその慧眼に刮目せざるを得ません。その意味では、私たちの社会は「高度に文明化された原始社会」とも言えるのではないでしょうか。

さて、SNSメディアによって人間はどのように変容していくのでしょうか。
私は『共感型人間』を生み出すと考えています。SNSによって個人がすべての価値判断の基準になったときに、一番説得力を持つものは『共感』です。自分の価値に合致した体験をすると『共感システム』が作動して、SNS的人間は「いいね!」ボタンを押します。

その「いいね!」が広がる範囲がその個人にとっての『共感限界』で、その範囲の中では『個人的共感』は『社会的共感』となります。そして『社会的共感』が極まると『社会的熱狂』を生み出します。
ちょっとイメージしにくいと思うので、図式化してみました。

個人的共感は「いいね!」がないとひとり言でしかない。

個人的共感は「いいね!」がないと独り言でしかない。

矢印

「いいね!」が広がると、個人的共感が社会的共感となる。

「いいね!」が広がると、個人的共感が社会的共感となる。

矢印

社会的共感が極まると社会的熱狂を生む。グローバルヴィレッジの誕生。

社会的共感が極まると社会的熱狂を生む。グローバル・ヴィレッジの誕生。

 

つまり現代は「個人的共感」とその集合である「社会的共感」によって形作られていると考えられるのです。「社会的共感」はハッシュタグコミュニティーのような趣味でつながる範囲のものから、まさにグローバル・ヴィレッジまで大小取り混ぜて至る所に遍在しています。SNSはそんな狭い範囲の価値観でつながる『巨大な共感社会』を生み出したと言えるのです。そしてその社会で生きる人間は『共感型人間』へと変容していくと考えられるわけです。

GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)はすべて『巨大な共感社会』の成功者です。GAFAにはなれなくても、個人的共感と社会的共感が一致したところに、製品やサービスを生み出すことが共感社会での成功の必須条件でしょう。
その意味で、冒頭に語ったESGやSDGsを考える必要があると思うのです。
私のような「伝える仕事」も、個人的共感と社会的共感を理解しないと成り立たない時代です。

この項、次回に続きます。

山本 由樹

株式会社「編」代表取締役社長山本 由樹

1986年光文社に入社。週刊女性自身で16年、その後「STORY」創刊メンバーとなる。2005年~2011年同誌編集長。2008年には「美STORY(現美ST)」を創刊し、「国民的美魔女コンテスト」を開催。美魔女ブームを仕掛ける。2013年9月に株式会社giftを設立するとともに、自立したアラフォー女性をターゲットとした月刊誌「DRESS」を創刊。読者のコミュニティDRESS部活は30以上の部活数、3万人以上の部員が集っている。編集長退任後は「編」にてメディアの枠を超えたコンテンツ・プロデュースをしている。2017年9月まで日本テレビ『スッキリ』でレギュラーコメンテーターを務める。 著書/「『欲望』のマーケティング」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「会社を辞めても辞めなくてもどこでも稼げる仕事術」(共著・SBクリエイティブ)

※肩書きは記事公開時点のものです。

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