巻き込む!オウンドメディアの作り方 第10回

TOKYO VOICE創刊の突破力②

2017.12.27

コンテンツマーケティング

  • 山本 由樹

    株式会社「編」代表取締役社長 山本 由樹

前回は、『TOKYO VOICE』というフリーマガジンのコンセプトについて語りました。今回は、フリー(無料)媒体の価値を示し、ブランドとして成立させる手法について考えましょう。

フリーマガジンは販売するメディアではありません。タダで配るものです。その点で企業のオウンドメディアと近い存在だと言えます。無料で配られるものは無料なりの低いクオリティのものが多いように思います。そういう意味では無料はポジティブな価値にはなり得ていません。

ああ、タダなんだ。ポイッ!(その辺に放り投げる音)

せっかく作った雑誌なのに、粗末に扱って欲しくないですよね。でも原因は「無料なりのもの」を作ってしまったことにあります。あなたの企業のオウンドメディアがあまり反響を得られていないとすると、その原因は無料を超える価値を提供できていないからだと思います。TOKYO VOICEにはこんな声がたくさん寄せられています。

「これが無料だなんて。お金を出して買う価値があります」(20代女性)

今回は無料という価値を、PRICELESS(お金で買えない)に高めるためのヒントをお教えしましょう。ちなみにTOKYO VOICE Vol.2が絶賛配布中です。
ご興味のある方は、http://tokyo-voice.jp/に配布店が掲出されていますので、取りに行ってください。

TOKYO VOICE Vol.2TOKYO VOICE Vol.2

フリー媒体の出発点は、競合との差別化

実は「無料を超える価値」を生み出すことは意外と簡単なんです。「無料とは思えないほどのクオリティ」のものを作ればいいんですから。

TOKYO VOICEはA3サイズほどで40ページあります。メディアの原点を思わせるような手触りの紙を使い、持つと意外なほどの重さを感じます。紙の選定から版型まで、何種類もの紙を取り寄せてセレクトしました。この紙と版型ですでにクオリティを感じさせることができます。一見高そうだと誰もが思うこの紙、実は安いんです。フリーマガジンなので制作コストは低くなければ採算上厳しいので、コスト管理はしています。
それに比べて企業の雑誌形式でオウンドメディアをつくる時、深く考えずに型にはめて考えてしまってはいませんか?

「版型は郵送するのでA4サイズで、紙は一番軽くて安い紙で」

こんな風に簡単に決めてしまったら、どのフリーマガジンも同じに見えてしまいます。メディアにとって一番大事なユーザーインターフェースは、雑誌ではまず紙と版型です。そこで立ち止まって、他の“オウンド雑誌”との差別化を図りましょう。

老舗のタウン誌で『銀座百点』というフリーマガジンをご存知でしょうか? 創刊が1955年といいますから、すでに60年以上続いている素晴らしいフリーマガジンです。向田邦子の『父の詫び状』などの名作も生んだことで知られていますし、文化人たちが「いつかは連載したい」と夢見るほどの文芸誌でもあります。僕もたまに銀座のお店でご飯を食べたりすると、カウンターに置いてある『銀座百点』をもらって帰るのが楽しみでしょうがありません。文化人たちが愛した銀座カルチャーを、今に伝える貴重なフリーマガジンだからです。

『銀座百点』の版型はタテ13センチ × ヨコ18センチで、横長のポケットサイズ。男性は上着のポケットに、女性はハンドバッグに入れられるサイズとして考案されたといいます。その後さまざまなタウン誌やフリーマガジンがこのサイズを真似しましたから、やはり際立っていたということです。

勝負は一つのコンテンツでかけよう

次にどんなコンテンツを盛り込むのか考えましょう。

企業のオウンドメディアですから、企業の伝えたいことや買って欲しい物の情報を優先したいと思うかもしれません。しかしながら、果たしてその企業目線の情報は、受け手にとって価値のあるものでしょうか? ここは大切な分かれ道です。

ポイッと捨てられてしまうか、大切に読んでもらえるか。

『TOKYO VOICE』はとてもシンプルに、大きなビジュアルと当事者の言葉(VOICE)だけで構成されています。『銀座百点』はきらびやかな文化人たちの、エッセイや小説だけで構成されています。どちらの雑誌も、書店で売っているような分厚い雑誌ではないので、内容はそぎ落として、単品勝負で特徴をつけています。

それはいわば、安い幕の内弁当ではなくイカめし弁当のようなものです。

少ないページ数で人の心をつかもうと思ったら、おかずは1品だけ。その代わり、とびきりおいしそうなおかずにしましょう。安い幕の内弁当は、食べ終わった後にすでに印象が残っていません。なんとなく食べて、何を食べたか覚えていなくて、あまり美味しくない。そんな弁当より、もち米でお腹を膨らませたイカがどーんとあって、イカのうまみが凝縮されたイカめし弁当は、食べた後もずっとイカの香りが残っています。

そぎ落としてどんなコンテンツで勝負するのか。
そこを徹底して考えてください。
そうすると企業目線の情報であっても、価値あるものに変換されるはずです。

話は変わりますが、先日ファミリーマートの澤田社長がテレビ番組『カンブリア宮殿』(テレビ東京・11月2日放送)に出ていました。この番組の中で、『プレミアムピザまん』を開発する様子が紹介されていました。中華まんを開発する井村屋が20億円もかけて最新の生産ラインを作って勝負しているのですが、ピザまんもベーコンをたっぷり入れて新製品を開発したのです。これが面白くて、実は私は夜中にファミマに行ってプレミアムピザまんを買ってしまいました(プレミアムピザまんは現在は販売終了)。

興味のある方はオンデマンド放送もしています。
http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/2017/1102/

ファミリーマート

ファミリーマートの澤田貴司社長

と、ここまで書いて紙幅(ウエブの表現としては謎です)は尽きてしまいました。
次回は、「企業目線の情報であっても価値を伝える方法」について語りたいと思います。

山本 由樹

株式会社「編」代表取締役社長山本 由樹

1986年光文社に入社。週刊女性自身で16年、その後「STORY」創刊メンバーとなる。2005年~2011年同誌編集長。2008年には「美STORY(現美ST)」を創刊し、「国民的美魔女コンテスト」を開催。美魔女ブームを仕掛ける。2013年9月に株式会社giftを設立するとともに、自立したアラフォー女性をターゲットとした月刊誌「DRESS」を創刊。読者のコミュニティDRESS部活は30以上の部活数、3万人以上の部員が集っている。編集長退任後は「編」にてメディアの枠を超えたコンテンツ・プロデュースをしている。2017年9月まで日本テレビ『スッキリ』でレギュラーコメンテーターを務める。 著書/「『欲望』のマーケティング」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「会社を辞めても辞めなくてもどこでも稼げる仕事術」(共著・SBクリエイティブ)

※肩書きは記事公開時点のものです。

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