巻き込む!オウンドメディアの作り方 第2回

企画力を身につけよう

2017.02.28

コンテンツマーケティング

  • 山本 由樹

    株式会社「編」代表取締役社長 山本 由樹

第2回 企画力を身につけよう
企業や組織にとって、オウンドメディアは今や必要不可欠のコミュニケーションツールです。しかし、闇雲に企業都合のPR活動を行っても逆効果です。ターゲットに届くオウンドメディア制作のポイントを、多彩な実績を誇るカリスマ編集者であり、数々のブームの仕掛け人でもある当社の編集アドバイザー、山本由樹氏が伝えます。第2回は、編集者に必要な企画力についてです。

前回からずいぶん間が空いてしまいました。
全ては私の不徳の致すところ。
ここから先はペースを維持して更新していきましょう。

前回の振り返りダイジェストから。
今や企業のオウンドメディアの時代がやってきた。
でも企業のPR発想で一方的に情報を発信しても、届かない。
ではどうすれば届くのか?
届けるためには「編集力」が必要になってくる。
編集とは「誰に、何を、どう」届けるのかを考える仕事。
オウンドメディアであってもある程度ターゲットを明確にした方がいい。
また編集とは企業と消費者の間に入った通訳のようなものである。
届けるためには消費者の理解する言語に翻訳して伝える必要がある。
B to Cのコミュニケーションを、あたかもC to Cのコミュニケーションのように感じさせることができたら、大成功。

と、こんなことを書いたわけです。
今回は「編集者に必要な企画力」について書きます。
この連載でいう「編集者」とはプロの編集者のことではありません。
企業の中にいてオウンドメディアを担当する人や、広告や宣伝の部署にいてお客さんとのコミュニケーションを担当する全ての職種の人を指して言っています。
編集力を必要とする人は、編集者としての自覚を持って欲しいのです。
伝えるプロ=編集者です。

消費者の価値観をつかむことが第一歩

では企画力とはなんでしょう?
企画とはひと言でいうとアイデアのことです。
アイデアとは「おや、まあ、へえ」のあるものです。
「おや?」と知らないことに気づきを与えたり、「まあ!」と驚きを与えたり、「へえ〜」と納得させたり。つまりは発見や驚きや納得に帰結する情報です。
もうちょっと今っぽく言うなら「いいね!」のあるものです。
「いいね!」とはポジティブな評価のことですから、価値判断の基準はその人自身にあります。ですから編集者はターゲット(消費者)の価値観を掌握していなければなりません。
もっと言うとターゲットの価値観を我がものにしている編集者は無敵です。
実際売れている雑誌の編集者はよくこう言います。
「それはうちの読者的にはないね」
キュレーションサイトの著作権問題で閉鎖してしまった「MERY」は、いろいろと問題はあったのかもしれませんが、今の時代の女子ごころをがっちりつかんでいたはずです。
「MERYなくなってさみしいよ」という言葉が一時ネットに出回っていましたが、単なる情報以上の価値感をユーザーと共有していた証しではないでしょうか?

編集者は誰よりも消費者について深く知っていなければならない

企画は有から有を生み出す作業

ちょっと話が横道にそれてしまいました。
企画力、つまりアイデアを生み出す力についてでした。
アイデアをひねり出すとよく言いますが、無理にひねり出す必要はありません。
まずは根拠のあるところから考え始めましょう。
例えばこんなテーマはどうでしょう?

  • ターゲット:30代から40代の中堅サラリーマン
  • テーマ:健康食品の訴求
  • 企業:お酒のメーカー

あなたはお酒メーカーの広報部員です。
自社のオウンドメディアのターゲットはビールや発泡酒を消費してくれる中堅サラリーマンです。いつまでも健康でお酒をたくさん飲んでもらうために、健康に関するオウンドメディアを作っています。
肝臓に効く「呑むときに飲む!」という健康食品も売っています。
でも「呑むときに飲む!」はCMも打っていないため知名度はありません。
販売も目標額に届かず予算もないため、オウンドメディアでの宣伝が唯一の希望です。
上司から「呑むときに飲む!」を訴求するためのコンテンツを作れと指令を受けました。
普通に考えれば「呑むときに飲む!はこんなに効果的」というコンテンツを作ってしまいそうです。実際に使用者の話を聞いて、薬事に触れないように微妙な表現で。
これが誰でも思いつく当たり前のアイデアです。
退屈ですよね? 誰も読みたくない、企業論理だけのコンテンツです。
では、どのように「いいね!」と言わせるアイデアを生み出せばいいのでしょうか。
アイデアとは無から有を生む作業ではなく、有から有を生み出す作業です。
天才でもない限り、歴史上どこにもないアイデアなんて生み出せません。
私が企画を考える時、まずこんなことを考えてみます。
「ターゲットの現状と課題とは何なのか?」
まずはターゲットを知ることから始めます。
次回は、ターゲットの分析のコツと、論理的に企画を生み出す方法をお届けします。

山本 由樹

株式会社「編」代表取締役社長 山本 由樹

1986年光文社に入社。週刊女性自身で16年、その後「STORY」創刊メンバーとなる。2005年~2011年同誌編集長。2008年には「美STORY(現美ST)」を創刊し、「国民的美魔女コンテスト」を開催。美魔女ブームを仕掛ける。2013年9月に株式会社giftを設立するとともに、自立したアラフォー女性をターゲットとした月刊誌「DRESS」を創刊。読者のコミュニティDRESS部活は30以上の部活数、3万人以上の部員が集っている。編集長退任後は「編」にてメディアの枠を超えたコンテンツ・プロデュースをしている。2017年9月まで日本テレビ『スッキリ』でレギュラーコメンテーターを務める。 著書/「『欲望』のマーケティング」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「会社を辞めても辞めなくてもどこでも稼げる仕事術」(共著・SBクリエイティブ)

※肩書きは記事公開時点のものです。