「コミュニケーション・ディスタンス」克服の道 【2】

1500人緊急調査「コロナで変質した企業内・企業間コミュニケーション」

  • コンテンツ本部編集1部 菅野 和利

コミュニケーションは対面が一番――その概念を変えざるを得ない事態が進行しています。緊急事態宣言が解除された後も、もはや対面コミュニケーションを主にしていてはビジネスが進みません。目的に応じて、対面と遠隔の両方のコミュニケーションを組み合わせる知恵が求められます。日経BPコンサルティング(東京都港区)は、国内のビジネスパーソンに新型コロナウイルスの影響を尋ねる緊急調査を実施しました。企業“内”コミュニケーションも企業“間”コミュニケーションも大きく変化していく兆候が見られました。
実施日:2020年4月21日~27日
対象:国内の企業・組織に所属するビジネスパーソン
母数:有効回答数1556件

今回の調査では、対面によるコミュニケーションの機会が減少した実態が明らかになりました。企業・組織では、ソーシャルディスタンスならぬ「コミュニケーション・ディスタンス」が進行しています(記事「コロナショックと企業コミュニケーション 1500人緊急調査」参照)。企業内と企業間の2つの観点から、コミュニケーションがどう変わったのかを読み解きます。

【調査のポイント】
新型コロナウイルスの影響によるコミュニケーション課題

●企業“内”コミュニケ―ションに関する課題のポイント

  • 「上司・同僚・部下の行動が見えない」が課題のトップ。情報共有に関する課題意識も高い
  • 業務上のコミュニケーションだけでなく、インフォ―マルなコミュニケーション(気軽な会話や懇親会など)にも高い課題意識が見られた
  • 社内教育、新人教育の変化を感じる割合が約5割。eラーニングへの言及が多い

●企業“間”コミュニケ―ションに関する課題のポイント

  • 対面型の営業自粛やセミナー中止の影響が大きい
  • 一方、広報誌やWebでの発信などコンテンツを活用したコミュニケーションへの影響は2割強どまり
  • 対外メッセージ(ニュースリリースや製品情報など)の発信への影響は少ない

企業内ではインフォーマルなコミュニケーションに課題感
<新型コロナ調査>

新型コロナウイルスの影響で勤務先の社内にどのようなコミュニケーション課題があるか聞いたところ、「上司・同僚・部下の行動が見えない」「必要な情報の共有が徹底できない」が30%を超えました。業務上のコミュニケーションに課題を感じている状況がうかがえます。

この設問で特徴的だったのが、インフォーマルなコミュニケーションへの課題意識の高さです。「社内で気軽な会話ができない」「(歓送迎会など)親睦をはかれる場をもてず、コミュニケーションが激減している」の回答も30%を超えました。これまで当たり前のように交わしていた雑談や飲み会がなくなった結果、気軽なコミュニケーションの重要性が浮き彫りになりました。

調査結果:図1「新型コロナの影響による、企業内のコミュニケーション課題」(複数回答)

同じ設問でのクロス集計では、興味深い結果が得られました。「上司・同僚・部下の行動が見えない」において最もポイントが高い業種は、ITツール活用で先頭を走っているイメージがある通信・情報処理業でした。「社内で気軽な会話ができない」においても、最もポイントが高い業種は通信・情報処理業となっています。

調査結果:図2「新型コロナの影響による課題『上司・同僚・部下の行動が見えない』」(業種別)

「新型コロナの影響により、今後、勤務先で社内外のコミュニケーションにどのような問題が起きると思うか」を尋ねたところ、「コミュニケーション不足によるトラブル」「人間関係の希薄化」「組織的目標の一体感の低下」「アイデア創出の低下」「変化についていけない社員の離職」などが挙げられました。企業内のコミュニケーション減少により、組織に大きな影響があるという懸念が表されました。

また、同じ設問の回答をテキストマイニング(出現テキストを抽出)した結果、キーワード出現数のトップ5に「コミュニケーション不足」「意思疎通」が入りました。「テレワーク」にも言及が多い結果が得られました。

こういったコミュニケーション課題に対して、「会社の愛着心・信頼感向上のための施策(社内報での発信、社長メッセージの送付など)」を実施したビジネスパーソンは12.5%でした。宣伝・広報部門に限れば、31.3%でした。

調査結果:図3「新型コロナ対応で、『会社の愛着心・信頼感向上のための施策』を実施」(職種別)

社員教育、新人教育では「eラーニング」に注目
<新型コロナ調査>

教育の切り口で企業内コミュニケーションの変化を尋ねたところ、「社員教育に変化があると思う」が54.3%、「新人教育に変化があると思う」が47.8%でした。約半数のビジネスパーソンが変化を想定していました。

調査結果:図4「新型コロナの影響で、勤務先の社員教育に変化がありそうか」

調査結果:図5「新型コロナの影響で、勤務先の新人教育に変化がありそうか」

「社員教育をどのように変える予定か」「新人教育をどのように変える予定か」を自由回答で尋ねたところ、eラーニングに関する言及が目立ちました。テキストマイニングした結果、キーワード出現数のトップもeラーニングでした。

企業間の課題は対面。コンテンツ発信への影響は少ない
<新型コロナ調査>

新型コロナウイルスの影響は企業内にとどまりません。企業間のコミュニケーションにも大きな課題が出ています。ビジネスパーソンに社外とのコミュニケーション課題も尋ねました。「対面型の接客や営業活動が減少している」が52.9%、「取引先との対面での会合延期などにより意思の疎通ができていない」が42.7%。対面コミュニケーションの不足に課題を感じている実情が明らかになりました。

一方、「対外メッセージ(リリースなど)の効果的な発信の減少・中止」は4.8%と、影響が少ない結果となりました。

調査結果:図6「新型コロナの影響による、企業間のコミュニケーション課題」(複数回答)

広報活動に絞って影響を尋ねたところ、通常時と広報活動が「異なっている」が46.3%、「異なっていない」が34.8%でした。約10ポイント違うものの、異なっていないが3割を超える回答となりました。

「広報活動では通常時と何が異なっているか」を尋ねると、「イベントやセミナーの開催中止」が76%でトップ。「広報誌の発行中止、頻度の減少」や「Webでの発信の中止、縮小」が2割を超えました。ただ、「その他(自由回答)」の中には、Webでの情報発信を強化させる意向の回答も含まれていました。

調査結果:図7「新型コロナの影響で、広報活動では通常時と何が異なっているか」(複数回答)

企業間コミュニケーションでは、対面コミュニケーションの課題感が強い状況が見えてきました。この課題意識を、DX(デジタルトランスフォーメーション)の好機と捉える考え方もあります。コロナ対応の実施策の中で「営業活動のデジタル化」を行ったのは13.4%でした。職種を販売・営業部門に限ると20.8%、コロナ対応を機にデジタルへの移行を進めている企業もあります。

調査結果:図8「新型コロナ対応で『営業活動のデジタル化』を実施」(職種別)

社外とのツール利用、1位は「Microsoft Teams」
<新型コロナ調査>

Web会議など社外とのコミュニケーションで使うツールに悩むビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。最後に、社外とのコミュニケーション用に承認・推奨されているツールについて、調査結果をお伝えします。

「勤務先で承認・推奨されている外部とのコミュニケーションに使っているシステム(アプリケーションやツール)」を尋ねたところ、「Microsoft Teams」が最多で33.1%。「Skype」31.5%、「Zoom」23.8%と続きました。

調査結果:図9「勤務先で承認・推奨されている外部とのコミュニケーションに使っているシステム(アプリケーションやツール)」(複数回答)

社外とのやりとりにコミュニケーションツールを使っていないビジネスパーソンも一定数いました。「特にない」という回答を従業員数別で見ると、100人未満で52.9%、100人以上1000人未満で29.9%、1000人以上1万人未満で24.9%、1万人以上で20.5%。従業員数とWeb会議ツールの使用比率は、比例関係にあるといえます。

【調査のポイント】
新型コロナウイルスの影響によるコミュニケーション課題

●企業“内”コミュニケ―ションに関する課題のポイント

  • 「上司・同僚・部下の行動が見えない」が課題のトップ。情報共有に関する課題意識も高い
  • 業務上のコミュニケーションだけでなく、インフォ―マルなコミュニケーション(気軽な会話や懇親会など)にも高い課題意識が見られた
  • 社内教育、新人教育の変化を感じる割合が約5割。eラーニングへの言及が多い

●企業“間”コミュニケ―ションに関する課題のポイント

  • 対面型の営業自粛やセミナー中止の影響が大きい
  • 一方、広報誌やWebでの発信などコンテンツを活用したコミュニケーションへの影響は2割強どまり
  • 対外メッセージ(ニュースリリースや製品情報など)の発信への影響は少ない

1500人超のビジネスパーソン調査から、新型コロナウイルスの影響による企業内コミュニケーションと企業間コミュニケーションの変容を明らかにしてきました。2020年4月末時点では、企業内、企業間とも対面コミュニケーションの減少による課題が大きく出ていました。

今後、これらの課題をどう解決するか、いかに早く解決するかが、組織の強化と競争力の向上につながるでしょう。調査結果から読み解くキーワードとしては、コミュニケーション不足や会社の愛着心・信頼感向上、eラーニング、営業活動のデジタル化などが挙げられます。課題感を持っていても解決にまで取り組めていない企業が多い今、いち早く取り組んだものが有利になるはずです。

連載:「コミュニケーション・ディスタンス」克服の道

コンテンツ本部 編集1部/周年事業ラボ コンサルタント
菅野 和利

BtoB企業の広報誌やWebサイト、ニュースリリースなど、企業メディアの戦略立案から媒体設計、制作まで支援。PR誌制作においては日本BtoB広告賞を5年連続で受賞している。企業コミュニケーション全般のコンサルティング、周年事業のコンサルティングにも携わっている。

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