イベントレポート〈NBPC2019拡大セミナー〉

エビデンス起点のコンテンツ開発でブランド力向上

2020.01.31

コンテンツマーケティング > マーケター向け

2019年12月12日(木)、日経BPコンサルティング主催「結果にこだわる企業コミュニケーション全体設計
~エビデンス起点のコンテンツ開発でブランド力向上!~」が都内で開催された。これまで当社が数多くの企業のブランディングをサポートする中で蓄積してきた多彩なヒントが披露され、来場した約170人の参加者たちは熱心に耳を傾けていた。ここではその様子をダイジェストで紹介する。

企業コミュニケーションの第一歩は「KKO」の排除から

セミナーは日経BPコンサルティング社長の寺山正一の挨拶でスタートした。寺山はコミュニケーションの達人として本田技研工業創業者の本田宗一郎氏を挙げ、「エビデンスとデジタルの活用によって、効率的なコミュニケーションを実現する手法をお伝えしたい」と語った。

Opening Sessionとしてブランド本部長の高橋健太朗が「なぜ、いまエビデンス起点なのか」と題した講演を行った。高橋は「勘(K)・経験(K)・思い込み(O)に頼ると誤った判断をしがち。防止にはエビデンス、つまりデータに基づいて考えることが大切だ」と述べた。

高橋健太朗

続いて、2019年のノーベル経済学賞を受賞した研究テーマ「世界的な貧困緩和への実験的アプローチ」を紹介した。同賞は、ランダム化比較試験(RCT)を用いた実証実験によって、貧困問題の具体的な解決手段を提唱した米国の3人の研究者に与えられた。

【ランダム化比較試験(RCT)】

RCTとは、評価のバイアス(偏り)を避けるため評価対象をランダムに分け、施策の効果をデータによって客観的に評価する研究手法。経済学においても活用されている。

「RCT普及以前の開発経済学は、エビデンスよりも理論と直感に基づいて結論を導き出す傾向があった。今回の受賞事例は、まず現状を洗い出し、問題点を抽出して解決方法を検討するプロセス自体は従来と同様である。しかし、RCTを活用して検証することで、効果をエビデンスとして見せることができた」と高橋は指摘した。

では、企業がエビデンスに基づく事業展開を行うにはどうすべきか。そのヒントとして高橋はRCTに注目し、「偏りのない客観的な比較対象の設定が重要。その際の視点は空間と場所(競合企業・競合商品など比べる対象)、全体と部分(部分の総和が全体になること)、時間の流れ(過去、現在、未来)の3つに集約できる」と述べた。
最後に高橋は、過去や現在のデータを基に未来を考える際のヒントとして、まず「あるべき」未来の姿を決め、その実現に必要な要素を考えていく、バックキャスティングの手法が効果的だと語った。

エビデンスに基づいた価値創造ストーリーが必要

Session1ではブランド本部ブランドコミュニケーション部長の吉田健一が登壇し、「エビデンス起点の企業コミュニケーション設計」のタイトルで講演を行った。
「ブランド」は顧客視点で語られる言葉であり、情報の受け手にとって何が価値であるかを考えることが重要だと指摘。新規事業展開やリブランドなどによってブランドイメージを効果的に発信している企業の取り組みを紹介していった。

吉田健一

「この企業・この商品なら間違いないと顧客に思わせたら勝ち。顧客視点によるブランディングに成功した企業は、エビデンスをベースにストーリーを展開している。そもそもエビデンスなしでコミュニケーションは不可能。数字があるからこそ、次の展開へ進む際、“なんとなく”の判断を排除し、遠回りや非効率を防げる」と吉田は強調した。

では、ブランドづくりの具体的な手順はいかなるものか。ブランディングとは「ありたい姿」と「どう見られているか」のギャップを埋める作業であり、ブランディング・コミュニケーションには親身なターゲット視点が必要だという。「ブランド価値の調査・診断」「ゴール・目標値(KPI)の設定」「施策の現状分析」「施策の立案・実行」「効果測定・振り返り」の5つのプロセスを回していけば、ベースとなるブランドの考え方が根付くと吉田は指摘。その起点となる「ブランド価値の調査・診断」において、従業員向け調査・顧客満足度調査などによる、現状のブランド価値の分析と客観的な強み・弱みの把握が重要であると述べた。

【ターゲットが抱くブランドイメージを、自社の理想像に導く】

長期戦となるブランドづくりにおいて重要なのは、「目的化」「一貫性」「継続性」の3つを計画的に進めることであり、全従業員を腹落ちさせるような企業のビジョン(目指す姿・ありたい姿)を策定する必要があると語った。また、中長期目標を設定する際は、目標がエビデンスベースになっており、効果が測れるKPIになっていることを確認してほしいと話して締めた。

刺さるコンテンツは新しい「KKO」からしか生まれない

「脱KKO!『勘・経験・思い込み』に頼らないコンテンツ戦略」と題されたSession2では、コンテンツ本部長の中野恵子の司会のもと、コンテンツ本部副本部長の雨宮健人、デジタル本部コンサルティング部長の伊達和幸が鼎談を行った。企業からよく質問される、「広報誌作成」「紙の制作物とWebの使い分け」「Webサイトの見直し」「SEO対策」に関するヒントを披露した。

まず、「広報誌作成」について、雨宮が「誰に?」「何を?」「どうやって?」を設計し、それらを個別に実行することがブランディング強化の観点で大切だと述べた。「紙の制作物とWebの使い分け」に関しては「ブッシュ型ツールの紙とプル型ツールのデジタルでは媒体特性が異なり、それぞれの得意不得意を見極めた上で目的に応じ使い分けることが必要。紙媒体をWebサイトに切り替えただけでは誰も見に来ない。Webサイトの存在をメルマガで知らせて初めてビューが獲得できる」と指摘した。

Webサイトの見直しについては、伊達がコンビニの導線を例にとり、数値管理に基づいて価値向上につながるコンテンツに誘導する導線配置の重要性を強調した。SEO対策にも言及し、「キーワードに合わせたコンテンツを量産すれば順位が上がるというのは“KKO”であり、NG。SEOに必勝法は存在せず、エビデンスなき改善・計画は持続しない」と述べた。その上で、以下のようなポイントを挙げた。

【SEO対策のポイント】

  1. アクセスログ解析は、流入元キーワード別のランディングページと滞留時間(読了率)、1来訪当たりの回遊ページ数をKPI とする。
  2. KPI に貢献しているキーワードを特定し、重点キーワードとする。
  3. 重点キーワードを含んだコンテンツを制作し、Webサイトに掲載する(質を重視、読了率と回遊促進貢献
  4. KPIに貢献したコンテンツは、運用型広告、プレスリリース、SNS( SEOに間接的に貢献)で積極的に発信し、ユーザー接点を強化。

最後に中野が、「勘・経験・思い込み」の旧来の“KKO”に頼らず、「根拠・共感・想い」という新しい“KKO”を意識し、客観的なエビデンスとそれに基づく共感、想いをベースとしたコンテンツづくりを提案した。

今、企業が抱えるESG×SDGsの課題

Trend Sessionとして、SDGsデザインセンター長の古塚浩一が「社内啓発から始めるSDGs経営」のタイトルで話した。
古塚は、100社を超える企業へのコンサルティング経験から「今、世界の共通言語であるSDGsそのものが企業ブランディングのよりどころとなっている。企業がSDGsと自社の本業をひも付けて、環境、社会、経済にもたらす価値を発信することでブランド力が高まる」と強調した。

吉田健一

そもそも、SDGsに取り組むメリット、取り組まないリスクは何か。古塚はメリットとして、「企業イメージの向上」「社員の成長」「生存戦略」「新たな事業機会の創出」の4点を挙げた。
リスクとしては、「資金調達が困難になる」「企業間のコミュニケーションや連携に支障を来す」「顧客から選ばれない可能性がある」「SDGsネイティブ世代から就職先として選ばれなくなる」の4点が考えられると述べた。

【SDGsに取り組むメリット】

1.企業イメージの向上
多くの人に「この会社は信用できる」「この会社で働いてみたい」という印象を与える。
2.社員の成長
社員一人ひとりが、自分ごととして会社の未来を考えるきっかけになる (SDGs をきっかけに“初心”に立ち返る)。
3.「生存戦略」になる
今後は、SDGs に対応していることが取引の前提条件になる可能性があるため、事業を維持・拡大する必須条件となり得る。
4.新たな事業機会の創出
SDGsへの取り組みが、企業間や地域との連携、今までになかったイノベーションやパートナーシップを生むきっかけをつくる。

企業にとってSDGs推進における課題は「社内啓発」「取引先からの要請」「人材確保」「経営トップの理解」「具体的な進め方」「海外への情報発信」だという。「これらを一度に解決するのは難しいが、進め方のよりどころとして国連グローバル・コンパクトが推奨する『SDGコンパス』が示す<1.SDGsを理解する><2.優先課題を決定する><3.目標を設定する><4.経営へ統合する><5.報告とコミュニケーションを行う>の5つのステップを参考にすると進めやすい」と述べた。

各Session終了後、会場に用意された個別相談会に加えて、ブランド・ジャパンやWebブランド調査データ閲覧、SDGs eラーニング受講などの体験ブースも多くの参加者で盛り上がった。エビデンスを起点としたブランド価値向上への取り組みに、多くの企業が高い関心を抱いていることが伺えたセミナーとなった。

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