「コミュニケーション・ディスタンス」克服の道 【1】

コロナショックと企業コミュニケーション 1500人緊急調査

  • コンテンツ本部 編集1部 廣田 亮平

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う企業活動の変化は、ビジネスパーソンに働き方の変革を否応なしに迫っています。テレワークの導入をはじめ、企業のコミュニケーションはどのように変化しつつあるのでしょうか。
企業のブランドやコミュニケーションに関するコンサルティング等を手掛ける日経BPコンサルティング(東京都港区)は、新型コロナウイルスの影響による企業コミュニケーションがどのように変化しているかを把握するため、業務への影響と課題、それに対する解決策や対応を尋ねる緊急調査を実施しました。

実施日:2020年4月21日~27日
対象:国内の企業・組織に所属するビジネスパーソン
母数:有効回答数1556件

調査結果を見ると、勤務先でテレワークの推奨・指示があったビジネスパーソンは7割を超えました。その影響について、「通勤時間がなくなり、業務が効率的に進められる」との回答が過半数、「残業時間が削減した」が3分の1超と、テレワークにより時間的なメリットを享受したとする回答が目立ちました。

その半面、「テレワークに対応できない職種への対応」が悩みだとする回答も3分の1を超え、同じ社内であっても同じ働き方ができず、いわゆるコロナ対応下での事業継続に苦慮するビジネスパーソンの姿が浮き彫りになっています。

今回の調査では、コミュニケーションに関する興味深い傾向も出ました。テレワーク導入で「家族とのコミュニケーションの時間が増えた」回答が3割を超えた一方、現状の悩みに「社内コミュニケーション不足」を挙げるビジネスパーソンも3割近く存在。コミュニケーションにおけるワークライフバランスの変化がうかがえます。

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ビジネスシーンではテレワークの実施や取引先への訪問自粛によって、対面によるコミュニケーションの機会が減っています。ソーシャルディスタンスならぬ「コミュニケーション・ディスタンス」が広がる状況で、対面に劣らぬ意思疎通を可能とする、新しいコミュニケーションの方法について知恵を出すことが求められそうです。

テレワークの推奨・指示は7割強、企業規模で導入時期に違いあり

(1)新型コロナ感染防止の職場対応

新型コロナウイルスの感染拡大への対策として最も回答の割合が高かったのは、勤務先からの「テレワークの推奨・指示」で71.9%、「消毒用アルコールの設置」が70.9%でした。さらに「時差出勤の推奨」「社内会議の自粛・禁止」「イベントの中止・延期」「マスクの着用指示」がそれぞれ50%を上回りました。

テレワークの推奨や指示が7割を超えたのに対して、「出社の自粛・禁止」は46.3%、「営業等の他社への訪問の自粛・禁止」は48.7%と、ともに5割を切っています。テレワークを推奨しつつも、ハンコ文化に象徴される請求書類の作成のための出社や、顧客先での会議など、事業継続の対応を模索する企業の様子が想像できます。

図1「コロナ対策実施事項」

次に、在宅勤務を中心としたテレワーク制度の導入時期について見てみましょう。2019年12月以前が42.7%。一方、緊急事態宣言のあった2020年4月からとの回答が23.9%でした。導入時期は企業規模による違いが顕著で、従業員数1000人以上の企業・組織のビジネスパーソンの大半(「1,000人以上10,000人未満」52.0%、「10,000人以上」が66.0%)が2019年12月以前と回答したのに対して、同1000人未満では2020年4月以降との回答が多数(「100人未満」が43.2%、「100人以上1,000人未満」が29.1%)を占めました。

テレワーク制度導入のきっかけを業種別にみると、製造業、通信・情報処理業のビジネスパーソンが「働き方改革がきっかけ」と答えた割合が高く、建設・不動産業、流通小売業、教育・医療機関では、「新型コロナウイルス対策の一環」との回答割合が高い傾向にありました。

図2「テレワーク制度の導入時期」

図3「テレワーク制度導入のきっかけ」

5割がノートPC貸与、VPNやWeb会議実施も3割以上

(2)テレワーク対応の執務環境

テレワーク制度で実施されたものとしては、「社員へのノートPCの貸与」が51.3%と過半数でした。続いて回答の割合が高かったのは、「VPN(仮想私設網)」「遠隔会議」がそれぞれ3割を占めました。テレワークの環境整備が進んでいるとみられる一方で、「会計システムツールの導入・変更」(2.2%)や「社員への通信料補助」(3.2%)などは回答が低い割合となっています。

図4「テレワーク制度導入に伴い実施されたもの」

時間の効率利用を実感するも「社内コミュニケーションが取りづらい」

(3)テレワークのメリット・デメリット

テレワーク制度を導入した効果を尋ねたところ、「通勤時間がなくなり、業務が効率的に進められる」との回答が54.5%に上りました。「残業時間が削減した」も34.4%となり、時間の効率活用が進むとする回答がある一方で、「仕事(企画や成果品)の質が向上した」との回答は6.6%にとどまりました。

そのような中、テレワーク制度の課題として「社内コミュニケーションが取りづらい」とするビジネスパースンは61.6%に上り、「テレワークに対応できない業務・人がいる」との回答も54.8%となりました。「必要な書類のプリントアウトやスキャンができない」も、49.2%と半数近くに上っています。

これら新型コロナウイルスの感染拡大を契機に生じた課題への対応策を聞いたところ、先のノートPCの貸与などとともに割合が高かったのが「eラーニングの導入」でした。eラーニングは、従業員数が多い企業ほど実施率が高い傾向にあります。

図5「テレワーク制度導入による効果」

図6「テレワーク実施による課題」

図7「コロナで生じた課題への対応策」

図8「コロナ対策で実施済み<eラーニングの導入>」(従業員規模別)

従業員数が増えるほど、導入割合が高い

トップ3は「出張」「テレワークNG職種」「売り上げ・客数減」

(4)企業活動上の悩み

コロナによる企業活動上の悩みは、「出張の延期・中止」(39.8%)、「テレワークできない職種への対応」(37.5%)、「売上や客数、案件数の減少」(33.4%)が上位3項目となりました。「社内コミュニケーション不足」(29.9%)、「社内行事の延期・中止」(25.9%)と、社内のコミュニケーションにかかわる悩みも一定の割合を占めました。

業種別にみると、「出張の延期・中止」が製造業で52.6%、「社内行事の延期・中止」が教育・医療機関で35.8%、「売上や客数、案件数の減少」が流通・小売業で55.0%となりました。

図9「コロナによる企業活動上の悩み」(業種別)

図10「コロナによる企業活動上の悩み」(業種別)

調査からは、コロナショックによって変化する企業コミュニケーションの実態が浮き彫りになりました。全国の企業・組織でテレワークが導入され、通勤や移動にともなう時間を効率的に使えるようになった一方で、社会インフラを支える企業・組織に代表されるように、テレワークできない人々がいるのは事実です。職種間の差や、多様な働き方を考慮して円滑なコミュニケーションを行うことは、組織作りはもちろん、事業継続の観点からも重要だといえるでしょう。

「社内コミュニケーションが取りづらい」という回答からも、物理的な空間の共有ができないテレワークでは、対面でのコミュニケーションとは異なるノウハウも求められるはずです。同様に社外とのコミュニケーションにも新たな手法やスキルが必要になると考えられます。

コミュニケーション・ディスタンスともいえるこの状態だからこそ、コミュニケーションの価値は今後より一層高まることが予想されます。アフターコロナを見据えて企業が生き残るために、“コミュニケーション・アフター・コロナ”のあり方を今から考える必要があるのではないでしょうか。

連載:「コミュニケーション・ディスタンス」克服の道

コンテンツ本部 編集1部 兼
マーケティング本部 大学ブランド・デザインセンター コンサルタント
廣田 亮平

大学のブランド戦略・広報活動をワンストップで支援する大学ブランド・デザインセンターのコンサルタント。広報誌やWebサイトの企画立案、コンテンツ制作を通じて組織におけるコミュニケーション課題の解決に取り組む。

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