ブランド・ジャパン活用事例

オートバックスセブンが挑む「総合モビリティアフター業」への転換 世の中の価値観と、自社ブランドの現在地を「ブランド・ジャパン」で検証

  • 金縄

    ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 金縄 洋右

全国に約600店舗あるカーライフストア「オートバックス」「スーパーオートバックス」のフランチャイズ本部である株式会社オートバックスセブン。カー用品のワンストップショッピングを展開し半世紀にわたりクルマ社会を支えてきた同社は、今「総合モビリティアフター業」への転換を進めている。同社がいかに「ブランド・ジャパン」を活用し、ブランドイメージの刷新と事業構造の変革に取り組んでいるのか、専務取締役 マーケティング管掌の藤原伸一氏に話を聞いた。取材=金縄洋右

総合モビリティアフター業への転換と、ブランドイメージの変革

同社が主戦場とする自動車アフターマーケット業界では、業態のボーダレス化が進む。そのためこれまでのイメージが、逆に成長の足かせになりかねないという危機感があった。

「カー用品だけでなく、車検、中古車、保険など全てが隣接領域になってきました。そんな中で“カー用品のオートバックス”というイメージが固定化してしまうと、そのイメージでとどまり、消費者心理としては店舗に行く理由が少しずつなくなっていくのではないかという危機感がありました。だからこそ、“脱カー用品店”を掲げ、事業構造、ブランドイメージの両面から変えていく必要があると考えています」。

変革のキーワードとして藤原氏は「総合モビリティアフター業への転換」を挙げる。

車検や整備、中古車の買取・販売といった事業領域を拡大し、カー用品販売から、モビリティ全体のアフターサービスを担う企業への転換。しかし、その転換にはブランドイメージの刷新が不可欠だと藤原氏は語る。

自社の現在地を読み解き、消費者の価値基準の変化への理解

自社の立ち位置を、データで理解するために注目するのが、「ブランド・ジャパン」であり、さらにブランド力評価項目として採用されている、4つの因子と16のブランドイメージ項目のスコアだ。

「当社がどう見られているかを具体的に把握できるのが、4因子・16のイメージ項目です。特にこれからは、4つの因子の中の『アウトスタンディング』と『イノベーティブ』のスコアを上げていかなければならない。オートバックスへの期待感や共感、話題性を生むためにはどうすればよいか、その要因を定量的に分析する材料として活用しています」。

「ブランド・ジャパン」は同社にとって、単なるランキング調査でも順位でもない。課題を具体的にあぶり出し、次の一手を考えるための「気づきの起点」だ。社会全体のブランドの潮流を踏まえつつ、自社の立ち位置と課題を確認するための“鏡”としての役割を果たす。

ブランド力の算出方法についてのロジックツリー

「ブランド・ジャパン」(一般生活者編)イメージ項目(右)とイメージ項目から算出する4因子スコア。4因子スコアをもとに「ブランド総合力」を算出し、毎年ランキングを発表している。

「自社ブランドの順位に一喜一憂することそのものよりも、世の中の価値観の変化を客観的に把握することにこそ意味があると感じています」。

藤原氏は、「ブランド・ジャパン」を毎年、継続的に活用する理由をこう語る。コロナ禍を経て生活者の購買行動とともに、価値観や企業に抱くイメージが変化する中、その変化を客観的なデータで可視化することが目的だという。

「小売業ではローソンさんやダイソーさんが上位にいます(「ブランド・ジャパン2025」(一般生活者編)で、1000ブランド中、ローソンが3位、ダイソーが6位)。消費者にとって身近で、利用頻度の高い企業が評価される傾向が強まっています。ブランド力のある企業といえば、昔はメーカーが中心でしたが、今は“日常的な接点を持つブランド”が支持されている。そこに消費者の価値基準の変化を感じます」。

加盟法人全体で推進するブランド変革

藤原 伸一 氏

株式会社オートバックスセブン
専務取締役 マーケティング管掌
藤原 伸一 氏

オートバックス・スーパーオートバックスは全国に約600店舗あり、多くがフランチャイズ加盟法人によって運営されている。「ブランド・ジャパン」のデータは、フランチャイズ加盟法人とチェーンの立ち位置に関して認識を共有するために活用している。

「フランチャイズ経営者会議でブランド・ジャパンの結果を共有します。ブランドイメージの課題を共有し、チェーン全体の方向性を議論するための材料にしています」。

とはいえ、データを提示するだけでは理解されにくい部分もある。

「16項目の指標をそのまま共有してもピンとこない方も多い。だから我々が今このように消費者から見られているのだから、チェーンをこのように変えていきたいというリブランディングの必要性を、これらのデータとともに伝えるようにしています」。

データという客観的な"鏡"に映し出された課題と、オートバックスセブンが目指している方向性を共有し、オートバックス全体の方向性を一つに束ねているのである。

「プロの手」とAIで、社会課題を解決

「展開している事業の中で、例えば整備事業ではお客さまに信頼されることがブランドイメージを形成する上で重要だと感じています。だからこそ、“見える化”を徹底しています」。

同社では現在、店内からピットが見えるよう、壁面の一部をガラス張りにするなど見える化を推進。さらにAIを搭載した「安心ピットカメラ」により、カメラが来店車両と会員情報を自動で紐づけすることで、整備作業の様子を利用者自身がスマートフォンでリアルタイムに確認できる仕組みの導入を順次進めている。

AI搭載「安心ピットカメラ」

オートバックスおよびスーパーオートバックスの全ピットレーンにAIを搭載した「安心ピットカメラ」を順次設置している。(写真提供:株式会社オートバックスセブン)

「透明性を高めることが安心と信頼の源になると考えており、こうした仕組みが、先ほどお話しした『アウトスタンディング』、『イノベーティブ』の向上、そして信頼性に関わるイメージ項目においても評価向上につながると確信しています」と意気込む。

オートバックスセブンの挑戦は、店舗の中だけにとどまらない。少子高齢化・過疎化がさらに進み社会課題となっている社会においては、新たなモビリティサービスの提供に向けた動きを加速させたい考えだという。

「法改正により、車の出張整備が徐々に認められるようになってきました。これからは高齢者や地方の方々のもとに私たちが出向き、整備や点検を行う時代になっていくと想定しています。これは社会的意義も大きく、全国に拠点を持つ当グループだからこそ対応できる領域ではないでしょうか」。

AIや自動化が進む時代にあっても、車の整備や点検といった場では、熟練した人手による技術やノウハウが欠かせない。

「AIに任せられる部分は任せるが、人の介在が価値になる領域についてはこれまで以上に磨く。身近で信頼されるブランドイメージを作るために必要であり、世の中から必要とされるブランドに育っていくために欠かせないポイントだと考えております」。

信頼と新たな体験を軸に、モビリティ社会の未来に新しい価値を創造するオートバックスセブン。その挑戦の根幹には、データに基づいた冷静な分析と、社会課題の解決という未来への情熱がある。

ブランディングサーベイ&ソリューションのご案内

ブランディング、ブランド調査に関するご相談やお問合せはこちらから

ブランド・ジャパン活用事例

金縄 洋右

ブランド本部 ブランドコミュニケーション部
金縄(かねなわ) 洋右(ようすけ)

ビジネスアーキテクト部を経て、ブランドコミュニケーション部に所属。
ブランド評価調査プロジェクト「ブランド・ジャパン」をはじめ、さまざまなブランドコミュニケーション領域の案件を担当。

※肩書きは記事公開時点のものです。