ブランド・ジャパン活用事例

「コンクール」、オーラルケア用のプロフェッショナルブランドとして高いシェア

  • 金縄

    マーケティング本部 ビジネスアーキテクト部 金縄 洋右

歯周病や虫歯と疾患の関連性が指摘されるようになり、オーラルケアの重要性が増している。ウエルテックは予防歯科製品「コンクール」シリーズを展開し、歯科医院を通じた販売ルートに力を入れ、歯科医院が認めるブランドとして地歩を築いてきた。特に洗口液「コンクールF」は全国の歯科医院の半数以上が取扱い、洗口液の中で7~8割のシェアを占めている。コロナ禍によってオーラルケアへの関心が高まり、「ブランド・ジャパン」では、コロナ禍の調査となった2022年版で初ノミネートとなった。エビデンスや歯科医院や歯科衛生士の口コミによるPRを重視し、プロフェッショナルブランドを確立したその経緯についてマーケティング担当者に聞いた。
文=吉村 克己
構成=金縄 洋右

洗口液の中でコンクールFのシェアは7~8割

日本臨床歯周病学会によれば、歯周病によって生み出される毒性物質が全身に回ると、糖尿病や動脈硬化につながり、動脈硬化が進行すれば狭心症や心筋梗塞、脳梗塞を引き起こすおそれもある。こうした指摘を受けて、歯周病や虫歯の治療はもちろんのこと、予防するためのオーラルケアの重要性が認識されるようになった。

ウエルテックは1990年に洗口液「コンクールF」を開発販売し、全国歯科医院6万8000軒の半数以上が扱うまでに拡大した。『歯科機器・用品年鑑』2023年版(アールアンドディ)によれば、医薬部外品洗口液のメーカー中、ウエルテックが19年度に約82%、22年度は約72%という高いシェアを占めている。

同社ではこの他、歯磨きジェルや口腔保湿剤なども「コンクール」シリーズとして販売しているが、いずれも歯科医院を通したルートが中心で、プロフェッショナルが認めるオーラルケアブランドとして確かな地歩を築いてきた。

写真:「コンクール」

コロナ禍でオーラルケアへの関心が集まり2022年の「ブランド・ジャパン」調査で初ノミネートブランドとなった「コンクール」(写真提供:ウエルテック)

「当社は『歯科と共に』という思想が根底にあり、歯科医院を通じて一般の人にも認知されるように地道にブランド・マーケティング戦略を進めてきました。医療従事者に満足してもらうために活動を続け、時間はかかりましたが、ここ10年ほどでようやく幅広い世代の消費者にも認知度が上がってきました」と、同社のマーケティング担当は語る。

コンクールFはこれまで歯科治療の中で殺菌剤として使われてきた。歯科医院がその効果を認めて患者にも推奨し、販売につながるという好循環ができあがった。そのため、10年ほど前までは歯周病患者である60~70代の中高年層が主なターゲット層だったが、予防のためのオーラルケア製品という認識が広がり、最近では20~30代の若い層にも広がってきた。

「以前、洗口液はリフレッシュ効果が中心でしたが、近年、歯周病・虫歯対策だけでなく、予防、さらに口臭対策にも有効であることが知られ、若い人たちが購入するようになりました。特にボリュームが増えたのが40代女性です。更年期を迎えると女性ホルモンのバランスが崩れ、歯周病の危険性が高まることもあり、予防意識が強まって購入が増えています」と、マーケティング担当。

つまり、消費者にとって洗口液に対する認識のカテゴリーが変化し、歯科医院の推奨するプロフェッショナルブランドであるコンクールFの価値が高まったといえよう。

コロナ禍で認知度と売上が急上昇

コンクールFにはグルコン酸クロルヘキシジンという殺菌成分が配合されている。海外ではスタンダードな殺菌剤で外科手術などにも使われている。その特長は貯留性と徐放性で、口内に長く留まり、細菌の繁殖を最大12時間抑制できる。また、長時間にわたって少しずつ成分を放出するので睡眠中でも高い殺菌効果を保つ。

「成分の有効性に加えて、嫌みのない冷涼感があり、差別化につながっています。過去、コピー商品なども割安で発売されましたが、歯科が認めるブランドとして圧倒的なシェアを維持しています」(マーケティング担当)と言う。

ブランド・ジャパンの調査では、2022年版で「コンクール」ブランドが初めてノミネートされた。前述したような過去の積み重ねもあるが、コロナ禍による影響も少なくない。感染症対策の一環からオーラルケアへの関心が広く高まり、より高機能なオーラルケア製品が求められるようになり、一気にオーラルケアのプロフェッショナルシリーズ(歯科専門ブランドの製品群)の注目度が上がったからだ。

「20~22年度でかなり売上は伸びましたが、正直困惑していました。ドラッグストアなどに販売ルートを拡大するつもりはなく、歯科医院への供給が滞らないように注意しました。ただし、洗口液が身近になり、一般消費者に対するコンクールFの認知度が上がったことはありがたいと思っています」と、マーケティング担当は語る。

歯科医院などで予防歯科製品として推奨されている(写真提供:ウエルテック)

歯科医院などで予防歯科製品として推奨されている(写真提供:ウエルテック)

歯科医院に勤める若い歯科衛生士たちが自らコンクールFを使って、その効果をSNSや販売サイトの口コミ欄などで広げたことも若い世代への認知度アップにつながった。プロが奨めることで、コンクールFのブランドイメージがグッと上がった。

「コロナ禍が収まりを見せる中で、今の状態の認知度を維持することは難しいとは思いますが、健康意識が高まり続ける昨今、オーラルケアと全身疾患の関係が解明されつつある背景を考えると、これからより一層オーラルケアの重要性は高まり、一般消費者はさらにプロフェッショナルブランドを求めるようになるはずです」(マーケティング担当者)

ウエルテックでは、現在、大阪大学との共同研究で、コンクールFが糖尿病にどのような効果をもたらすか臨床実験を通じてエビデンスを探っている。

また、歯科衛生士の資格を持つウエルテック社員が日常的に歯科医院とコミュニケーションをとりながら治療・診療に役立つニーズを聞き出し、新商品開発につなげている。

大阪大学との共同研究を行っている写真

大阪大学との共同研究を行っている(写真提供:ウエルテック)

ブランド・ジャパンの指標については認知度などの量よりも質を重視し、歯科医院と消費者からプロフェッショナルブランドとして認知されているかをウォッチしているとマーケティング担当は語る。

「今後も歯科という世界を通じて、患者さんをどのように救えるのか、歯科の根深いニーズに応えられるようなブランドになっていきたい」

あくまでも歯科医院を通じて患者を支援するというウエルテックの姿勢がプロフェッショナルブランドとしての土台のようだ。

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金縄 洋右

マーケティング本部 ビジネスアーキテクト部
金縄 洋右

企業コミュニケーション領域(ブランドコミュニケーション、デジタルコミュニケーション、コンテンツコミュニケーション、サスティナビリティ)の営業、デジタルマーケティング、販促施策などを担当。福岡県福岡市出身。

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