ブランド・ジャパン活用事例

コーポレート・ブランディングの本格的な開始を機にブランド・ジャパンを活用し始める

  • 石原 和仁

    ブランド・ジャパン プロジェクトマネージャー石原 和仁

「カルビー」は、「かっぱえびせん」や「ポテトチップス」「じゃがりこ」といったスナック菓子やシリアルで売上1位を誇る「フルグラ」などのブランドを抱える食品メーカーだ。ブランド・ジャパン調査でも上位グループの常連組。伊藤秀二社長がコーポレート・ブランディングに力を入れて以来ずっとブランド・ジャパンを利用している。その背景や活用法などについてマーケティング本部長の松本知之氏に聞いた。
カルビー株式会社
マーケティング本部長 松本 知之氏

聞き手・文=石原 和仁

過去10年ほど毎年、ブランド・ジャパン(以下BJ)を購入していただいております。当初はどのようなブランディングの課題を持ち、現在までどのように活用されているのかお教えいただけますか。

松本 当社がコーポレート・ブランディングを本格的に始めたのは、現社長である伊藤秀二がマーケティング本部長を担当していたときのことです。現在も企業ロゴと共に使っている「掘りだそう、自然の力。」というコーポレートメッセージを当時採用したことがきっかけでした。もちろん、プロダクトごとのブランディングはそれ以前から取り組んでいましたが、BJの購入はコーポレート・ブランディングをはじめとした企業活動の効果測定として活用することが直接の理由です。

毎年、総合順位が出ると、社内で分析、レポート化して幹部や社員に配信しています。

掘りだそう、自然の力。 calbee

コーポレートメッセージを打ち出すに当たり、BJの4つの因子のうち、どれを一番意識されましたか。

松本 当社が最も強いのが「フレンドリー」であり、絶えずフレンドリーを向上させることが至上命題になっています。また、このコーポレートメッセージは、様々な自然素材から新たな価値を創り、お客様の生活に貢献するという意味を込めており、「イノベーティブ」にも関連しています。さらに、チャック付きパッケージを開発するなど利便性も常に考慮しており、それが「コンビニエント」にいい影響を与えると考えています。

2011年からコーポレート・ブランディングに取り組まれ、「BJのフレンドリー評価でトップを取る」と全社的に号令をかけ、実際に12年から3年間フレンドリーが1位になりました。どのような取り組みをされたのでしょうか。

松本 当時、私はマーケティング企画部におりましたが、フレンドリーを最重要指標として取り組み、いろいろなことをやりました。フレンドリーを担うブランドの中心はベーシックであるポテトチップスと決め、お客様に対するコミュニケーションを変えました。

当社には年1回「大収穫祭」という大きなイベントがあります。商品はじゃがいも2キロと毎年変わるグッズなのですが、驚くほどの応募があります。そのキャンペーンを強化したり、じゃがいもの契約生産者のことをより丁寧にお客様に伝えたりするようにしました。その結果、フレンドリーが上がって、総合順位も2013年には8位と過去最高になったと考えています。

フレンドリーというエモーショナルな因子の評価を維持することは並大抵のことではありません。コンビニエントの指標も落ちていないので、品質や役に立つ商品設計も評価されているのでしょう。どのようなコミュニケーション・ツールを活用してフレンドリーを維持・向上させているのですか。

松本 もともとスナック菓子は、気軽に買えるという意味でフレンドリーさがあるうえ、当社は広告宣伝でも食べる楽しさや笑顔などを訴求してきたベースもあります。テレビCMでは北海道のじゃがいもという自然素材を活用していることを前面に出し、ポテトチップスと言えばじゃがいも、じゃがいもと言えばカルビーということをお客様に伝えてきました。

しかし、事業規模が大きくなり、現在では数パーセントの米国産のじゃがいもも使っています。もちろん、国内産のじゃがいも使用量では当社が圧倒的に多いのですが、じゃがいもを使用した商品が沢山あり、「国産じゃがいも使用」とストレートに言いにくく、コミュニケーションが難しくなってきました。そこで、当社は直接生産者から調達していることなど、もう一度、じゃがいもビジネスについて丁寧に伝えていかないといけないと考えています。

もう1つの課題はデジタルツールの活用です。プロダクトごとにSNSアカウントを持ち、オンラインイベントなども行っており、全体で153万人のフォロワーもいます。しかし、カルビーとしてのデジタルコミュニケーションはまだまだ弱いので、改めて「じゃがいも・カンパニー」としてフレンドリーさを打ち出していきたいと思っています。

ブランドはやはり社員の熱量の積み重ねだと考えており、デジタルというメディアを使っても熱量が問われます。

御社の場合、「カルビーが好きだ」という社員が多いように思いますが、社員のエンゲージメントもフレンドリーに反映されていますか。

松本 あまり意識していませんでしたが、お菓子会社は社員が商品を我が子のように扱うので、エンゲージメントが高いのかもしれません。それをお客様に伝える努力はしてきたつもりです。例えば、昨年9月にリリースした「カルビールビープログラム」は、食べ終わった空のパッケージを小さく折りたたんで捨てていただき、ゴミの嵩を減らすことで、ルビーというポイントをゲットし、貯めると工場見学やじゃがいも収穫体験ができるというアプリですが、これも社内プロジェクトから生まれました。すでに4万件がダウンロードされました。ゆくゆくはこうしたアプリやファンサイトを統合して、ファンが集まる「ファンベース」を作っていきたいと考えています。

ゴミの嵩を減らすという活動はサステナブルを意識されているのですか。

松本 そもそも創業者精神の中に「未利用資源の活用」があり、瀬戸内海で活用されていなかったエビで栄養価の高い「かっぱえびせん」を開発したので、サステナブルは企業理念に含まれています。過去から、例えばポテトチップスとしては使用できないじゃがいもの活用を考えることであったり、包装も保存性が高いアルミ蒸着フィルムにいち早く変えたり、一部の商品包装は20年12月からバイオマスフィルムおよびバイオマスインキに切り替えたりしています。

各プロダクトのブランディング戦略について概要をお教えください。

松本 ブランド管理に当たり、プロダクトを5つのブランドイメージに分類しています。これはBJの因子とも結びついており、例えば「フレンドリー」や「ヘルシー」などがあります。ヘルシーでは「miino」という豆素材のスナックがあり、今後の柱にしようと考えています。

当社では「2030ビジョン」という中期経営計画を策定し、「食の未来をつくりだす」ことを目指しています。その中で「スナック事業の革新」を掲げ、「カラダ想いの軽食としてのfinesnack」開発を提唱しています。その1つがmiinoですね。また、糖質オフタイプの「フルグラ」が順調に伸びています。

最後にBJを活用されているメリットについてお教えください。

松本 やはり因子や評価軸が明確であり、偏差値として数値化されていることが重要です。さらに、調査対象が多岐の業界に渡っているので、普通ならカルビーとグーグルが対決する場はないのに、BJでは少し上にグーグルがいるという時代もあり、私たちの誇りでもありました。

長年使っていると、当社の評価の立ち位置の変化や、お客様、あるいはビジネス・パーソンの中での立ち位置も見えるので、通信簿として優れた指標だと考えています。ただ、社長の伊藤も順位を毎年気にしておりますので、常に気が抜けませんけど(笑)。

ブランド・ジャパン活用事例

カルビー株式会社 マーケティング本部長
松本知之氏

入社からカルビー一筋25年。営業・営業企画などを経て、堅あげポテト、カルビーポテトチップスのブランド等のポテトチップスを中心とした商品企画、マーケティング部門に従事。2019年4月より現職。

※肩書きは記事公開時点のものです。

ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント
石原 和仁

大学ではバイオテクノロジーを専攻。卒業後は、飲料メーカー、リサーチ会社、マーケティング会社を経て、日経BPコンサルティングに入社。2015年より日本最大のブランド価値評価調査「ブランド・ジャパン」のプロジェクトマネージャーを担当。様々な企業のブランディング業務(調査、体系づくり、PDCA設計、ブランドメッセージ制作など)に従事。

 

※このプロフィールは、掲載時点のものです。最新のものとは異なる場合があります。

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