ブランド・ジャパン活用事例

客観的なブランド価値を測る指標がほしかった

  • 石原 和仁

    ブランド・ジャパン プロジェクトマネージャー石原 和仁

客観的なブランド価値を計る指標がほしかった
いまや7000万人以上の会員が利用する共通ポイント「Tポイント」を運営するTポイント・ジャパンは、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループの一員である。2015年からブランド・ジャパン(BJ)の一般生活者編をベースにしたカスタム調査を活用、年に2回(3月と11月)調査し、Tカード・Tポイントのブランド調査や、宣伝・販促・CSR活動などがブランドに与える影響を調べている。果たしてどのようなことが見えてきたのか、ブランド担当の瀧田希さんに聞いた。
(左)日経BPコンサルティング ブランド本部ブランドコミュニケーション部 池田 梨子
(右)株式会社Tポイント・ジャパン 総合企画室 プロデューサー 瀧田 希氏

聞き手・文=石原 和仁/写真=橋本 敏彦

2015年から年に2回、ブランド・ジャパン(BJ)のカスタム調査を利用され、10回目を迎えました。数あるブランド指標の中で、BJをご選択いただいたのは、なぜでしょうか。

瀧田 2014年からCCCでBJを購入するようになり、TカードやTポイント、TSUTAYAあるいはCCCのブランド価値をどのように調べるか検討し始めました。もちろん、それ以前の2010年頃からブランドスローガンを掲げて、それに沿ったブランド活動はやっていましたが、客観的なブランドの指標はありませんでした。
ブランディングとは生活者から愛されることだと考えていますが、それを指標化できる調査はT会員向けの独自調査だけでした。独自調査については定点観測をしており、Tカードの利用件数との相関関係などの分析も行っていましたが、会員だけの調査では本当のブランド価値を測ることができません。生活者全体について調査をしないと、客観的な指標にならないのです。

会員だけだとコミュニケーションを取れる範囲内だけの調査になりますから、Tカードを利用していない人も含めて調べないといけないということですね。Tカードのファンづくりはもちろん重要ですが、もう少し視野を広げないと、ブランディングというよりマーケティングになりますからね。

瀧田 そうですね。Tカード・Tポイントのファン度は調べていましたが、ブランドに対しての好感度しか分かりません。ブランドイメージ、つまり、どんな因子で好きなのか、嫌いなのか、具体的な分析ができなかったことが課題でした。
そのため、いくつか社外調査を検討したのですが、その中で、因子まで分かるブランド調査をしているのがBJだったのです。

標準的なカスタム調査に加えて、いくつか質問を追加されたのはなぜでしょうか。

瀧田 当時の担当の方にはかなり苦労していただいたのですが、どのような施策を実施するとブランド価値に良い影響を与えるのかを調べるために追加しました。私たちが過去に行ってきた施策についてはもちろん検証をしていますが、何か新しい施策を実行する際にどのような内容がいいのか判断する基準がなかったのです。それを作りたいと考えました。おかげさまで施策と、ブランド価値、ブランドイメージ、ロイヤルティそれぞれの相関関係を調べることができました。施策とは宣伝・販促活動やブランディングを目的として実施している社会価値創造プロジェクトなどです。

御社は、積極的に社会貢献活動をされていますが、どのような内容ですか。

瀧田 「Tカードみんなのソーシャルプロジェクト」という、Tカード・Tポイントの資産を活用して社会価値を創造し、地域共生につながるような取り組みを行っています。例えば、東日本大震災で失われた子供たちの遊び場を作るプロジェクトや、アート・音楽・食を楽しむことのできる祭典「Reborn-Art Festival」とのコラボレーションにより東北の子供たちがアート制作を通じて未来につながる何かを得る場を提供するプロジェクトも実施しています。これらの活動を推進するにあたっては「社会貢献型Tカード」を発行しており、発行手数料のうちTカードから100円、利用者が貯めたTポイントのうち半分が寄付され、企画に役立てられます。また、Tカードのデータを活用して、地域や一次生産者、流通企業、会員と共に商品を開発するプロジェクトを三陸の牡蠣や五島列島の漁業の課題である未利用魚をテーマに行っています。

当初に比べて現在ではそのベンチマークとするブランドが増えています。近年では電子決済の普及によって状況が変化してきていることが背景にあると思いますが、ブランド強化のためのポイントはどこでしょうか。

当初に比べて現在ではそのベンチマークとするブランドが増えています。

瀧田 Tカードの会員数も5000万人から7000万人に増え、アライアンス企業のネットワークやデータも拡大しました。TカードやTポイントの持つ資産が大きくなりました。ブランディングはやはりファクトありきです。どのようなファクトによってブランド価値が変化するのかの把握も必要です。その意味ではTカード・Tポイントのファクトは強化されており、これをどう活用していくかが重要です。
4年間で生活者が企業やブランドに求めるものも変わってきましたが、カスタム調査のおかげで、私たちが評価すべきポイントも把握できます。それを基に経営陣にも提言することができ、ブランドを強化する活動ができるようになってきました。

社内では調査データをどのように活用されていますか。

瀧田 経営陣への報告のほか、報告書は社内で誰でも閲覧できるようにしています。ブランド活動はすべての社員に関係があります。例えば、営業担当が取引先と会うこともブランド活動の一環です。そのような意識を高めるためにも調査データを活用しています。

御社はソーシャルプロジェクトなどを通じて、社会的な責任をきちんと果たしていらっしゃいますね。すばらしいと思います。

瀧田 カスタム調査の結果はプロジェクトの検証をする上でとても効果的でした。イノベーティブと共感性の因子が高く、経営陣に報告したところ「この数字は本当か。どうしてこんなに高いのか」と冗談まじりに言われたほどです(笑)。ブランド価値を高めるためのキーはイノベーションであり、私たちがやってきたことは間違っていないと勇気づけられました。

BJの特別顧問であるデービッド・アーカー博士が指標を作ったときに「イノベーティブはブランドのエンジン」と言いました。しかし、社会貢献と企業ブランドの相関関係はなかなか数値化しにくく、ようやく最近は「ネットプロモータースコア」で相関を数値化する動きが出てきました。

瀧田 Tカード・Tポイントでこだわっているのは、CSRではなく、CSV(Creating Shared Value=社会的課題を自社の強みで解決すること)にすることです。東日本大震災で失われた子供たちの遊び場を作るプロジェクトでもTカードの利用件数が増えました。Tカードの利用が寄付につながることに共感していただいているからかもしれません。このような活動がブランドに及ぼす影響はカスタム調査でしか測れません。だから、価値があるのだと思っています。

ブランド・ジャパン活用事例

株式会社Tポイント・ジャパン 総合企画室 プロデューサー
瀧田 希氏

2002年 株式会社カルチュア・コンビニエンス・クラブ入社。2011年よりTポイントの宣伝販促部の責任者として、宣伝販促活動に加えて東日本大震災被災地の子供支援プロジェクトを立ち上げ、現在まで継続して従事。
2016年からはブランド戦略業務に従事。同時にブランディングを目的とした複数のプロジェクトを立ち上げ実行。

※肩書きは記事公開時点のものです。

ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント
石原 和仁

大学ではバイオテクノロジーを専攻。卒業後は、飲料メーカー、リサーチ会社、マーケティング会社を経て、日経BPコンサルティングに入社。2015年より日本最大のブランド価値評価調査「ブランド・ジャパン」のプロジェクトマネージャーを担当。様々な企業のブランディング業務(調査、体系づくり、PDCA設計、ブランドメッセージ制作など)に従事。

 

※このプロフィールは、掲載時点のものです。最新のものとは異なる場合があります。

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