誰もが腹落ちするストーリーづくり3つのポイント
自社ならではの「価値創造ストーリー」をつくろう!!
しかしながら、「価値創造ストーリー」のなかで扱う要素、そこで伝えたい「思い」は、企業によってまちまちのようです。いったい何が「正解」なのでしょうか。企業の「価値創造ストーリー」について考えてみましょう。
社内をよく知る人ほど難しく考えがち?
「ウチの会社は複雑で、価値創造ストーリーなんて簡単に作れないんだよなあ」
多くの企業経営者や経営企画部門、広報IR部門の人はこれをよく口にします。
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自社の事情に詳しく、思い入れが強い人ほど、勤め先の魅力を表現しづらいのかもしれません。その会社が多岐にわたるビジネス、多様な商品・サービスをグローバルに展開している場合はなおさらです。「ウチはこんな会社です」と、一枚絵で示すなんて至難のワザだと思っているのではないでしょうか。
最近では、ビジネスや商品・サービスに加え、「会社自体が長く存続すること(企業のサステナビリティ)」も、企業のアピールポイントと捉えられるようになりました。この要素も、「価値創造ストーリー」のなかで表現する必要があります。あれもこれも入れなければないと、生真面目な担当者はますます頭を悩ませていることでしょう。
考えるべきは「だれもが腹落ちする文脈」と「デザイン的な工夫」
では、誰もが理解できる「価値創造ストーリー」を示すには、どんな情報をどのくらい盛り込めばよいのでしょうか?
まず、「詳細な情報」を入れようとすればするほど、そのストーリーは共感されにくいものになってしまいます。
これは、腕利きの外科医が活躍するドラマを楽しむのに、必ずしも医学の知識が必要ないのと似ています。「だれもが腹落ちする文脈」と「デザイン的な工夫」さえあれば、ことば数が少なくても多くの人の共感を得ることができます。
ではその「だれもが腹落ちする文脈」とは、どのようなものでしょうか?
私は、以下の3つのポイントが明確であれば、誰もが腹落ちする文脈を作り上げることができるのではないかと思います。逆に言えば、このポイントが押さえられていないと、どんなに詳細な説明をしても「腹落ち」するストーリーは描けないでしょう。
共感を得やすい「文脈」をつくる3つのポイント
1. 現在の経営、主力の商品・サービスについて「他社との違い」を明確に示すこと
2. 「他社との違い」を尊重し、育んでいく「仕組み」と「シナリオ」をわかりやすく示すこと
3. 時間経過や技術革新による事業環境の激変に伴い、「他社との違い」が変化する可能性を示唆すること (将来の事業環境に対する予測や、根拠に関する説明を含む)
受け手ごとにストーリーを「デザイン」する
次に、「デザイン的な工夫」についてはどうでしょう?
ここで言う「デザイン」とは、単にグラフィックデザインや映像で何かを表現することではありません。「価値創造ストーリー」を実践しようとする企業や経営者の「意志」を「メッセージ」として伝えるための工夫を指します。特定の受け手にわかりやすく伝えるのであれば、基本的な「デザイン」を描いたうえで個別対応をしましょう。必要に応じて「文脈」を組み替え、任意のポイントを強調するなど、「伝えるための工夫」を凝らすのです。
プロの投資家が「企業価値」を正しく理解するためには、価値創造ストーリーに加えて、財務・非財務の詳細情報が必要です。投資家の判断を助ける、「かゆいところに手が届く」情報は、企業サイトなどにまとめて用意しておきましょう。価値創造ストーリーと、それを深く理解させるエビデンス(説得材料)は、常にセットで考えてください。
あの情報も、この情報もと詰め込んだりせず、まずは全体を俯瞰し、大きな絵を描いてみることが大切です。 そんな価値創造ストーリーづくり、そろそろ貴社でもチャレンジしてみませんか?
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サステナビリティ本部 提携シニアコンサルタント
山内 由紀夫(やまうち・ゆきお)
都内信用金庫のシステム部門、証券運用部門、経営企画部門を経て、IR支援会社において企業分析、アニュアルレポート・統合報告書・CSRレポートの企画・編集コンサルティングに携わる。
日経BPコンサルティングでは、統合報告書の企画・コンサルティング、企業価値の持続的向上に向けた価値創造ストーリーの構築を支援。