BtoC 編でApple が初の首位に、ブランド総合力上昇率の第1 位はFacebook。震災復興活動が評価され「ヤマト運輸」「ソフトバンク」「オリエンタルランド」などが上昇
―「ブランド・ジャパン2012」の結果を本日リリース―

2012年03月30日

株式会社日経BPコンサルティング(東京都港区)は、今年で12 年目を迎える日本最大のブランド評価調査プロジェクト「ブランド・ジャパン2012」の結果をまとめ、本日(2012 年3 月30 日)、調査結果報告書を発行・発売する。来る4 月20 日には、東京コンファレンスセンター・品川にて「ブランド・ジャパン 発行12周年記念ブランドセミナー」を開催する。

本プロジェクトでは、一般消費者とビジネス・パーソンへのアンケート調査から、企業や商品延べ1500 のブランド力を評価した。調査は2011 年11 月に実施し、回答者は約5 万2000 人だった。

BtoC 編のブランド総合力ランキングでは、90.5 ポイントを獲得したApple が初の首位に。
「革新性」と「卓越性」に磨きがかかるとともに、iPad、iPod、iPhone の商品ブランド力の強さも光った。
BtoB 編では、2 年ぶりにトヨタ自動車が首位を獲得。震災後の復興支援活動が評価され、ヤマト運輸やソフトバンク、オリエンタルランドなどのブランド総合力が上昇した。

BtoC編:Appleが初の首位、「イノベーティブ(革新性)」「アウトスタンディング(卓越性)」因子のポイントが突出

今回の結果の特徴は、「外資系ネット・デジタル関連ブランド力の上昇」と「企業の震災復興活動によるブランド力の強化」である。BtoC編のブランド総合力ランキングでは、Appleが本調査12年目で初の首位となった (表1)。2010の第40位、2011の第11位から、今回は一気に首位へと駆け上がった。続く第2位には、Appleと僅か1.5ポイントの差で、前回首位のGoogleが入った。AppleとGoogle、両ブランドを比較すると、「フレンドリー(親しみ)」と「コンビニエント(便利)」では、Googleのポイントが高く、より身近な存在であるのに対し、「アウトスタンディング」と「イノベーティブ」では、Appleに軍配が上がる。一方で、「イノベーティブ」ポイントの高さが際立っている点は両ブランドに共通する(図1)。「新時代を切りひらき、皆が注目する革新的なブランド」の第1位と第2位が、ブランド総合力でも高順位を獲得した形だ。特に、Appleは、2012年3月に3代目となる新型のiPadを発売した。「目に見えて革命的」というキャッチコピーの通り、たちまち話題となった。イノベーティブの手綱を緩めないAppleの攻勢は、まだ続きそうだ。そして、創始者であるスティーブ・ジョブズ氏が、2011年10月に死去されたことがメディアに大きく取り上げられたことは、イノベーティブ因子構成要素の一つである「注目度」向上に影響を与えたと思われる。

この2ブランドのもう一つの共通点は、企業ブランドだけでなく商品・サービスブランドも強い点だ。iPadが第90位から第15位に、iPodが第50位から第18位に、そしてiPhoneが第73位から第38位に大きくランクアップし、Appleの主力3商品がすべてトップ50位内に入った。Googleは、YouTubeが第4位となった。YouTubeは、「フレンドリー」のポイントが前回に比べて、10ポイント以上上昇。両ブランドの動きは、商品・サービスでの企業理念の体現が、企業ブランド力を向上させるという一つの成功パターンを示す好例だ。

そして今回のブランド総合力「上昇」ランキングでは、Facebookが第1位となった。認知率も、43.1%から92.2%まで急上昇している。

さて、「東日本大震災後の調査結果」という側面から、注目すべきブランドがいくつかある。ヤマト運輸は震災復興活動の一環として、「救援物資輸送協力隊」の設置や、「宅急便1個につき、10円の寄付」という支援活動を実施し、注目された。その結果、ヤマト運輸は第40位から第31位に、宅急便が第122位から第49位に大きく順位を上げた。オリエンタルランドは、第77位から第16位へと躍進。震災の影響で、長期休園を余儀なくされたが、2011年7月以降、小学生以下に対する入園料金割引や、東京ディズニーシーの開業10周年イベントなどが奏功し、入園者数は急回復した。また、震災直後のスタッフ対応の的確さが話題となり、好感を得た。

BtoB編:トヨタ自動車が、首位に返り咲き、ソフトバンクが初のトップ10入り

BtoB編では、2011のパナソニックに代わり、トヨタ自動車が2年ぶりの首位となった(図2)。ただし、例年の「100ポイント超え」での首位ではなく、ポイントは94.5に留まり、突出感は無い。トヨタ自動車は、「信用力」で86.2ポイントを獲得し第1位になった他、「この企業を高く評価している」「日本経済を支えている」「環境に配慮している」などの項目で首位となった。第2位は、BtoC編 首位のAppleが、第3位には前回の首位だったパナソニックがランクインした。

今回初めてトップ10入りしたのはソフトバンク。前回の第19位から、今回は第9位と躍進した。特に「先見力」のポイント上昇が著しい。「先見力」因子を構成する「ビジョンがある」で第3位、「この企業から学びたい」で第9位、「経営者に魅力がある」では第1位となった。これまで総合ポイント上昇の妨げになっていた「信用力」についても、前回に比べ5ポイント上昇している。震災後の孫正義代表取締役社長による義援金の申し出や、自然エネルギー財団設立などのニュースが影響を与えたものと思われる。

(吉田健一=日経BPコンサルティング ブランド・プロジェクト マネージャー)

表1 「ブランド・ジャパン 2012」の上位50ブランド
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図1 [BtoC編]「Apple」「Google」のイノベーティブ因子に関するポイント
(ブランド・ジャパン2012の1000ブランド平均との比較)
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図2 [BtoB編]「トヨタ自動車」5因子スコア(偏差値)
ブランド総合力:94.5ポイント
図2

ブランド・ジャパン
国内で使用されているブランドを消費者とビジネス・パーソンが評価する、日本最大のブランド評価調査
プロジェクト。2001年に第1回調査を実施し、今回が12回目。調査は、消費者としての立場から回答を求める「コンシューマー市場(BtoC)編」(調査対象ブランド1000件)と、ビジネス・パーソンとしての立場から回答を求める「ビジネス市場(BtoB)編」(同500件)とから成る。調査概要は、「*調査の構成と概要」と「*特別顧問およびブランド・ジャパン企画委員会」を参照

調査の構成と概要

  • 調査の方針と構成
    「ブランド・ジャパン2012」では、経年比較を可能にして、継続的データ価値を保つために、毎年同じフレームを採用している。すなわち、本調査は、「コンシューマー市場(BtoC)編」と、「ビジネス市場(BtoB)編」の2つの調査で構成する。またランキングを計算する質問項目も、個々のブランドについて尋ねる主要な設問は例年と同じものを用い、さらに総合力を算出する際の基本的な計算方法も、例年と同様の手順で行っている。なお、有意抽出であるインターネット調査の結果を補正するために、傾向スコア重み付け法を施した。
  • コンシューマー市場(BtoC)編
    消費者に対して、消費行動上のブランドのポジショニングを明らかにする設問への回答を求めた。調査対象ブランドは、企業ブランド(企業名・グループ名)と製品・サービスブランド、合計1000ブランド。
  • ビジネス市場(BtoB)編
    有職者に対して、ビジネスパーソンとしての立場からブランドのポジショニングを明らかにする設問への回答を求めた。調査対象ブランドは企業ブランドのみ500ブランド。

調査概要

  • 調査名称
    ブランド・ジャパン 2012
  • 調査目的
    日本の市場で使用されている主要なブランドについて、ブランド力とそれぞれの特徴を明らかにする。このデータを企業のブランディング活動で活用できる形で提供する一方、市場内外のどのような事柄がブランド力に影響を与えているかなどの基礎研究に資する。
  • 調査機関
    日経BPコンサルティング
  • 調査方法
    図1クリックで拡大

特別顧問およびブランド・ジャパン企画委員会

正確な集計・分析を行うために、ブランド理論、マーケティング、統計学の第一線で活躍している諸氏によるブランド・ジャパン企画委員会を設置。公正で高度な調査結果を目指し、調査手法や分析について随時委員会を招集し協議を重ねてきた。

なお、今回から企画委員長に阿久津聡氏が就任された。前企画委員長の片平秀貴氏は、弊社のブランド調査事業の一つである「ブランド・アジア」のアドバイザーとしてこれからもご協力いただく。

ブランド・ジャパン特別顧問

プロフェット社副会長
デービッド・A・アーカー氏

ブランド論の第一人者として知られ、「ブランド・エクイティ戦略」「ブランド・ポートフォリオ戦略」(日本語版はダイヤモンド社刊)などの著書や論文を多数送り出している。ブランド・ジャパンには、第1回から特別顧問として参加。

ブランド・ジャパン企画委員会

  • 企画委員長 一橋大学大学院 国際企業戦略研究科教授 阿久津聡氏
    カリフォルニア大学バークレー校にて博士号(Ph.D.)を取得。専門はマーケティング、消費者心理学、ブランド論、意思決定論、行動経済学、交渉論。著書、監訳に「ブランド戦略シナリオーコンテクスト・ブランディング」(ダイヤモンド社:共著)、「ドラゴンフライエフェクト ソーシャルメディアで世界を変える」(翔泳社:監修)などがある。
  • 企画委員 早稲田大学 文学部教授 豊田秀樹氏
    心理統計学、教育測定学、マーケティング・サイエンス、統計学のエキスパートとして「ブランド・ジャパン 2002」から結果分析を担当。著書に「SASによる共分散構造分析」(東京大学出版会)、「購買心理を読み解く統計学」(東京図書)などがある。
  • 企画委員 慶應義塾大学 総合政策学部教授 桑原武夫氏
    コロンビア大学ビジネススクール客員研究員を務める。ポストモダンマーケティングの旗手モリス・B・ホルブルック教授と共同研究を行う。 著書に「ポストモダン手法による消費者心理の解読」(日本経済新聞社:共著)などがある。
  • 企画委員 法政大学 経営学部教授 西川英彦氏
    神戸大学大学院博士号(商学)。マーケティングを専門とし、ユーザー・イノベーションや、インターネット・マーケティングをテーマに研究を行っている。 最近の著書に「1からの商品企画」(碩学舎:編著)、「ビジネス三國志:マーケティングに活かす複合競争分析」(プレジデント社:共著)などがある。

日経BPコンサルティングについて
日経BP社全額出資の「調査・コンサルティング」「企画・編集」「制作」など、コンサルティング、コンテンツ関連のマーケティング・ソリューション提供企業。(平成14年3月1日設立。資本金9000万円)

このリリースに関するお問い合わせ

株式会社 日経BPコンサルティング コンサルティング本部 ビジネスコンサルティング部

ブランド・プロジェクト マネージャー 吉田 健一

〒108-8646 東京都港区白金1-17-3 NBFプラチナタワー

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