クライアントの声 三菱自動車工業様
三菱自動車工業 「ダイバーシティレポート」 ダイバーシティを社員と一体になって進めるために
社内の周知を進めるためダイバーシティレポートを発行
2015年にダイバーシティレポートの第1号を発行されましたが、これは自動車業界において先駆的な試みでした。いち早く発行することになったきっかけを教えてください。
人事労政部 ダイバーシティ推進室
鈴木 久美 氏
鈴木 社内にダイバーシティ推進専任組織が設置されたのは前年の2014年7月のことです。初年度は社内でダイバーシティに関するセミナーを行ったのですが、そもそも「ダイバーシティとは何か」を知らない社員が多く、当然「ダイバーシティ推進部は何をしている部署かわからない」という声もあって、周知はなかなか進みませんでした。そこで、冊子の形にしたほうがじっくり見てもらうことができ、社内の事例を多く掲載することで、当社のダイバーシティ推進活動の周知も進むのではと考えたのがきっかけです。
統合報告書やCSRレポートと異なり、ダイバーシティレポート自体まだそれほど多くの企業で出しているものでもないので、試行錯誤があったと思います。実際の制作にあたって心がけていることはありますか。
鈴木 まずは第一の読者ターゲットである、社員のみなさんに興味を持って読んでもらえるものにしなければ意味がありません。そこで、構成は雑誌のように読みやすいものをと考え、内容的にストーリーがしっかりしていることはもちろんですが、視覚的にも惹きつけられるように意識して作っていきました。
また、言葉の使い方にも気をつけています。ダイバーシティレポートは社内の様々な立場の人が読むものですから、違和感を持たれない文章表現が求められると考えています。原稿は広報、CSR、知的財産など様々な部署で念入りにチェックしていますし、テーマによっては社外の専門家にも目を通していただいています。
レポートを多くの社員が読むことで、ダイバーシティ推進活動の理解が社内にひろまり、活動の後押しとなることを目的に、制作しています。
ロールモデルを掲載し多様な働き方があることを紹介
企画の面で大切にしているのはどういう点ですか。
鈴木 まず企画の段階で様々な年代、様々な職種の社員に興味をもってもらえるように、身近な出来事から海外の目新しい話題まで、バラエティに富んだ企画を心がけています。第1号は女性活躍推進がテーマでしたが、実際に活躍している女性社員のロールモデルを掲載し、身近なところでダイバーシティは進んでいることを幅広い部門のみなさんに知ってもらうことを大きな目的にしました。
第1号にて、様々な女性のロールモデルを紹介した「ダイアモンドな人」より。
第2号の「社員を支えるために 三菱自動車の 両立支援制度」より。
私がいる人事部門は女性が多く、日々、女性の多様な働き方を肌で感じています。私自身が長女を産んだころに育児休業制度が拡充され、二女を出産したときは時短勤務でもフレックスタイムを使えるという目新しい制度が導入されたり、在宅勤務が出来るようになるなど制度面での後押しもあり、社内でも子供を産んで子育てと仕事を両立する社員が増えてきました。私自身も働きやすくなったことを実感しています。ですから、まず第1号では様々な女性社員からお話を聞き、多様な働き方と活躍があることをぜひ社内に伝えたいと思いました。
第2号では、ジェンダーは関係なく介護をしている社員や障がいがある社員、外国籍社員、さらに海外の現場も含め、とにかくいろいろな社員の声を集め、事例を紹介することにしました。どの企画でも、どのような社員に登場してもらうかを様々な観点から検討するので、つねに人選にはかなりの時間をかけています。結果的に、みなさんそれぞれの考え方や活躍の事例を紹介できてよかったと思います。
ダイバーシティレポートは社員一人ひとりの想いの結晶
各拠点の社員のみなさんに取材して、ダイバーシティ推進の現状をどのように感じましたか。
第2号の特集「海外の仲間たち~三菱自動車タイランドで働くみなさんを紹介します~」より。
鈴木 ひとつの会社にも本当に様々な職種があり、多様な年代、立場の社員が、それぞれ特有の悩みや事情を抱え、両立支援制度を活用したり、周囲や家族のサポートを受けながら、様々な働き方をしていると実感しました。それと同時に、障がいがある社員や外国籍社員、シニア社員なども数多く働いていて、社内人材の多様化は想像以上に進んでいることも感じました。
実は当初、ダイバーシティレポートの取材を受けることに抵抗がある社員が多いのではと考えていました。しかし現場の声を紹介してダイバーシティを進めたい思いを伝えると、みなさんも、自分のことを知ってもらうことで、周囲の理解が進み、誰もが働きやすいと感じる職場にしていきたいという思いがあり、取材の際には自分のことばで自らの想いを積極的に語ってくれました。ダイバーシティレポートは、そういった一人ひとりの想いの結晶なのかなと思います。
社員からの評価はいかがでしたか。
鈴木 社内で取ったアンケートでは「内容がいい」という答えが93%だったので、好評だったと考えています。「写真がたくさんあって見やすい」「レイアウトがよくて読みやすい」など、ビジュアル部分を評価する声もやはり多くありました。
企画としては、第2号で展開したタイの現地工場特集「海外の仲間たち」の評価が高かったですね。タイは当社最大の海外生産拠点ですので日本からやり取りしている社員が多く、現地スタッフの身近な様子を知ることができ、グローバル企業の一員としてモチベーションが高まったという声を多く聞きました。
また、現場のみなさんが抱える想いを語ってもらう「現場から始めるダイバーシティ」という第2号の企画では、具体的にどのような未来を描きながら、日々どのような想いで仕事をしているのかがわかり、強いインパクトがあったとの声を聞きました。
学生の採用向けツールとしてもダイバーシティレポートを活用
社員への周知以外に、学生の採用向けツールとしても活用されていると聞きました。
鈴木 はい。発行の2つ目の目的はリクルーティングです。会社説明会などで会社案内や他の採用ツールと一緒に配っていますが、それらとはまた違うダイバーシティという切り口で、職場の様子や社員の生の声を伝えることができています。
特にタイの特集は、学生にも好評です。当社を志望する学生の多くがグローバルで働くことを希望しているので、海外の現場の様子が実感として伝わり、自分が将来グローバルの舞台で働く姿がイメージできるのだと思います。ダイバーシティレポートは単なる会社紹介にとどまらず、人物、事例、そして個々の感じ方についても取り上げているので、学生の方も現場をイメージしやすいのでしょう。
ダイバーシティレポートをきっかけに社員同士のコミュニケーションが深まる
この2号を通じて、ダイバーシティ推進に向けた手応えは感じましたか。
鈴木 そうですね。社内アンケートではダイバーシティ推進の理解が深まったという評価が87%ありました。社内には多様な社員が在籍し、すでにダイバーシティが起きていることを多くの社員に知ってもらえたと思います。
ダイバーシティ推進において非常に重要なのは、知ることと、そこから始まる社員同士のコミュニケーションだと思います。各職場でコミュニケーションが深まれば、ダイバーシティがより推進される環境が生まれてきます。ダイバーシティレポートをきっかけに、職場でコミュニケーションがより深まることを期待しています。
そこを基点に、様々な事情を持つ社員が「制度を利用し工夫をすれば自分に合った働き方ができる、自分もやってみよう」と考えられるようになるでしょうし、職場でもそういう活躍したいと思っている社員のサポートをしようという動きが生まれてくるかもしれません。各職場で自然発生的なダイバーシティのムーブメントが起きてくることが最終的なゴールだと思っています。
ダイバーシティレポートの制作会社として日経BPコンサルティングを選定いただいた際、重視したのはどのような点ですか。
鈴木 制作期間が長いですから、円滑なコミュニケーションを取りつつ、取材も含め一緒にワークしていける会社であることはもちろん大前提です。そのうえで、やはりこれまで読みやすいレポートを制作してきた実績と、ダイバーシティに関する専門知識の有無を気にしました。ひとえにダイバーシティといっても様々な要素があります。そして、それぞれの要素ごとに配慮しなければいけない点があり、非常に奥深いのがダイバーシティの特徴だと思います。ですから、生半可な知識で取り上げると多くの人に影響を与えてしまいます。その点、日経BPコンサルティングはこの面でも実績がおありですし、多彩な雑誌や出版物を発行されていてメディアとしての制作能力が高いということから、託させていただきました。
次のフェーズは一人ひとりの違いを活かして働ける環境の整備
今後、ダイバーシティ推進のために力を入れていきたいことがあれば教えてください。
鈴木 繰り返しになりますが、実際に私が取材に出かけて感じたのは、各職場での人材の多様化が刻一刻と進んでいるということです。これは社内のダイバーシティ推進の効果ともいえますが、一方で介護や育児など様々な事情を抱えた人材が待ったなしに増加しているという事情もあると思います。ですから今後は、一人ひとりの違いを活かして働ける環境の整備に、早急に取り組む必要があると考えています。
もちろんその前提として、私たちとしても今まで以上に周知に努めなければならないと改めて気を引き締めています。第1号、第2号は高評価を得ることができましたが、次の第3号が真価を問われるのだと思っています。
ダイバーシティを経営戦略のひとつとして打ち出す企業が増えています。これからダイバーシティレポートを作ろうと考える企業に向けてアドバイスがあればお願いします。
鈴木 ダイバーシティレポートを作る目的や盛り込む内容は企業によってそれぞれだと思います。スタイルについても、当社の職場環境では紙の冊子のほうが多くの社員に読まれると判断したわけですが、ITに馴染みがある企業であればITを活用したほうがよりまんべんなく発信できるかもしれません。
また、社内だけでなく、最近は学生のみなさんも多様な働き方に深い興味を持っています。ダイバーシティレポートを発行することで、ダイバーシティに積極的に取り組んでいて働きがいのある企業であることを伝えられますし、イメージアップにもつながると考えています。
まさに、ダイバーシティレポートの発行は企業ブランドの向上や、さらには優秀な人材の採用にもつながっていくのでしょうね。ありがとうございました。
事例概要
「ダイバーシティレポート」
- 発行主:三菱自動車工業株式会社
発行形態:A4判、20ページ、オールカラー、中綴じ
発行頻度:年1回
主な読者:社員、取引先、株主・投資家
発行部数:約20,000部
発行方法:郵送、配布
発行開始:2015年9月