【北見工業大学】態度変容、行動変容を促すブランドサイトを立ち上げ
“らしさ”の言語化で魅力を紡ぎ 100年後も選ばれる大学に
北見工業大学
大学の価値を明文化できない
もどかしさを抱き相談に
吉田 最初に貴学をご紹介ください。
内島 北見工業大学は、1960年に設置された工科系の単科大学です。弊学がある北見市は自然豊かな大地とオホーツク海に面し、冬は零下30度にまで冷え込み夏は35度を超える日もある、年間寒暖差が60度に及ぶ地域です。弊学では、2017年から「地球環境工学科」「地域未来デザイン工学科」の2学科体制で、環境やエネルギー、寒冷地研究など、この希少な環境を生かした研究を行っています。
吉田 2021年に、弊社にご相談をなさった経緯をお教えください。
内島 はい。弊学は自然豊かな環境を生かした工学研究という独自の価値を持つ大学です。これを多くの人に伝え、ファンを増やすことを目指し、思いを同じくする教職員で広報戦略室を立ち上げました。多くの教職員が潜在的に「自然と調和するテクノロジーの発展を目指して」とのブランドメッセージを自覚していたものの、確信を持って発信するためには客観的な視点を取り入れ、弊学“らしさ”を大学全体で明確に言語化する必要がありました。そこで貴社に連絡しました。
北見工業大学らしさと意義とは
1年かけて “目指す姿” を共有
吉田 創立100年を見据えたブランディングを目的に、我々は土台固めとして傾聴から始めましたね。経営、教員、職員の皆さんに、大学の価値や貴学の「志」、貴学のありたい姿をうかがいました。すると一様に、「寒冷地であることを生かした研究と北海道の開拓者精神で、地域と社会の問題を解決したい」というテーマと、「日本を支える研究者・技術者を社会に輩出する」と語られた。
内島 はい。時間をかけて聞き取った言葉であるだけに、進む方向に確信を持てました。
北見工業大学のブランドウェブサイト(一部)。
大学“らしさ”を表すオホーツクブルーを基調にしている
大学ブランドサイトはこちら
結束を生むブランディング
認識の統一から自信ある発信へ
吉田 次に教職員の方々にご参加いただき、ブランディングの意味と進め方を、ワークショップの形で何度も議論しました。全員で強力に情報発信をしていく文化をつくりたかったからです。ワークショップの最後に、弊社で戦略的な大学ブランディング事業のためのガイドラインを作成しました。その中で「ブランディングとは、学内外の方々に北見工業大学を知ってもらい、理解してもらって、愛され、選ばれるための活動」だと定義しました。
内島 プロジェクトが目指すゴールを全員が理解し、団結意識が醸成されました。ワークショップで議論を重ね、弊学について多角的に見直すことで、納得感を持って、「自然と調和するテクノロジーの発展を目指して」とのブランドメッセージをステークホルダーに発信できるようになりました。北見工業大学としてのアイデンティティーを確信できた、価値ある1年間でした。
北見工業大学ならではの研究内容を公開(一部)
ブランドサイトでは、寒冷な気候を利用した極域の研究・開発のほか4つの研究内容を公開している。写真は、海氷厚を衛星データから推定するアルゴリズム開発のための現地観測の様子
魅力や存在意義を自覚し、
一人ひとりがスポークスマンに
吉田 昨年からいよいよブランドサイトの開設に取り組み、2023年3月に立ち上がりました。サイトは、貴学“らしさ”を表すオホーツクブルーを基調に、貴学のアイデンティティーと研究内容を紹介しています。
内島 現在、トップページでは4つの研究内容を公開しています。オホーツク海に面するサロマ湖やオホーツク海、北極・南極の極域をフィールドに衛星リモートセンシングを用いた海氷厚推定技術の開発や、低温下での始動性に優れたディーゼルエンジンの実現など寒冷な気候ならではの研究・開発。また大規模精密農業の実現に向けた農業機械の自動運転技術の開発などです。そして北見市が「カーリングの街」であるからこその、冬季スポーツに関する研究も紹介しています。今後は、地域の特色を色濃く反映した研究に加え、日本の技術力向上に資する一般的な工学領域の研究も紹介していきます。
吉田 研究の社会的意義と“らしさ”も伝えています。
内島 はい。私たちも構築したブランドサイトを見てワクワクし、弊学の一員であることの誇りを新たにしました。ブランディングは、一人ひとりがスポークスマンとなり、全員で進めることが大事ですね。これからも大学全体で一丸となり、北見工業大学“らしさ”を発信し、100年たっても選ばれる大学を目指します。
吉田 引き続き伴走いたします。
内島 よろしくお願いいたします。
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日経BPコンサルティングの「大学ブランド・デザインセンター(BDCU)」は、大学のブランディングと広報を総合的に支援する専門機関です。
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北見工業大学は、どのようなプロセスで「大学独自の価値」を言語化したのか。ブランド・アイデンティティーを確立するまでの道のりに迫ります。
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ブランド本部 本部長 兼 ブランドコミュニケーション部長
兼 大学ブランド・デザインセンター長
兼 周年事業・デザインセンター長
吉田 健一
IT企業を経て、日経BP社に入社。日経BPコンサルティングに出向後、2001年より始まった日本最大のブランド価値評価調査「ブランド・ジャパン」ではプロジェクト初期から携わり、2004年からプロジェクト・マネージャー。2020年から現職。企業や大学のブランディングに関わるコンサルティング業務に従事する傍ら、各種メディアへの記事執筆、セミナー講師などを務める。著書に「リアル企業ブランド論」「リアル大学ブランドデザイン論」(共に弊社刊)がある。