卒業生の共感を呼ぶ、新感覚の校友会会報誌

学生時代の記憶と接続し、卒業後の人生を応援したい

明治学院大学

2023.04.25

大学広報 > 事例紹介/ホワイトペーパー

「Do for Others(他者への貢献)」を教育理念に掲げる明治学院大学。卒業生に大学への愛着を持ち続けてもらい、在学生との交流を活性化させるため、2006年4月に発足した校友会では、卒業生に向けて校友会会報誌『Do For Others』を年に2回発行している。どのような狙いで校友会会報誌を制作しているのか、明治学院大学校友センター センター長の佐藤純氏に話を聞いた。
文=尾越まり恵
写真=吉澤咲子
構成=酒井亜希子

明治学院大学校友会会報誌『Do For Others』は、大学のPRだけにとどまらないメディアとして、読み物重視のマガジンスタイルで発行されています。まずはその特徴について教えてください。

『Do For Others』は2006年に明治学院大学に校友会が設立されたのをきっかけに、翌07年に創刊した校友会会報誌です。雑誌のように気軽に読める44ページほどのマガジンスタイルで、明治学院大学の卒業生約4万人(2023年現在)に郵送で届けています。私は3年前にセンター長に就任し、このマガジン制作に携わっています。

創刊時には、明治学院大学の卒業生である、『広告批評』の主宰者でコラムニストの故・天野祐吉さんをアドバイザーとして招き、コンセプトについて議論したと聞いています。

創刊時から今も大事にしているのは、「有料でもほしい」「保存したい」と思ってもらえるクオリティであること。そして「明治学院大学の財産である教員や在学生、卒業生を示す」こと。歴史を伝えるだけではなく、「知的」で今につながる「面白い」ものであることです。これらのコンセプトをふまえ、創刊時から保存性の高いマガジンスタイルで発行しています。

佐藤 純氏

明治学院大学 校友センター センター長
佐藤 純氏

明学だから作れる、唯一無二の会報誌

読者は明治学院大学の卒業生という共通点はあるものの、年代も職業もバラバラです。幅広い層に届けるにあたり、企画の上で工夫しているのはどんなことでしょうか。

広い読者層に向けて、すべての読者のニーズに応えるのは非常に難しいことですが、少しでも広く、いろいろな人に興味を持ってもらえる内容の特集を考えています。過去に「お金」や「旅」をテーマにした特集があり、読者からは非常に高評価でした。ただし一般誌とは違い、特集の取材は明治学院大学の“財産”である、教員、卒業生や在学生に協力をしてもらっています。例えば「旅」といった広いテーマでありながら、明治学院大学の社会学部教授が「社会課題と向き合う旅」という独自の観点で旅と地域再生の可能性を探ったり、日本文学を研究する外国人教授に、日本の古典文学を起点にした旅の魅力を聞いたり。関心を持ってもらえそうな題材を大学のリソースと接続し、“明学”の目線で立体化させました。読み物として魅力が増し、読者の共感を得られたのではないかと考えています。

また、卒業生に届ける雑誌なので、「懐かしい」と思ってもらうことが大きな目的となります。大学で履修した科目も、過ごした場所もそれぞれ異なってはいても、お昼休みに集まる場所、通学の風景、大教室など、多くの人が「懐かしい」と感じるような写真を多く入れるように意識しています。

表紙をめくった直後のページには「あの場所、あの風景。」という連載があります。大教室や食堂、図書館、よく利用する通路などの風景写真を撮りおろし、それにまつわるエッセイを掲載しています。場所を選ぶ際は、すべての学生が1~2年生次に通う横浜キャンパスの写真を多めにするよう意識しています。横浜キャンパスでは、ヤギによる除草システムを導入しているのですが、その「ヤギ部」を掲載したときは、「私もヤギ部に入りたかった!」と、大学の今を知った卒業生から非常に多くの反響がありました。私たちにとっては当たり前の風景でも、懐かしいと思う人もいれば、母校の今を知れてうれしいと思う卒業生もいるということにあらためて気づかされました。

明治学院大学校友会会報誌『Do For Others』

母校を肯定的に捉えるきっかけになってほしい、という思いもあるのですよね。

『Do For Others』では、さまざまなフィールドで活躍する卒業生がたくさん出てきます。インタビューされた人は「自分も忘れられていなかったんだ」と思える。自分を応援してくれる母校があることは、きっとすごくうれしいと思うんですよね。読み手も「同じ大学の卒業生でこんなに頑張っている人がいるんだ」と誇りに思えます。

会報誌の企画では、自分にとっての“明学”を言語化することを支援するというチャレンジもしました。ここでは「経験代謝」という考え方を参考にしています。学生生活の経験を語り、それらを捉え直すことが、自分にとっての母校の存在を捉え直すことにつながるのではないか、という試みです。その方の人生の捉え直しにもつながれば良いなと願っています。

校友会設立15周年の2021年には特別企画として「あなたにとっての『明学らしさ』って?」という特集を組みました。「個性を大事にする」「自由な校風と他者への思いやり」「つながりを大切にする」など、卒業生たちからさまざまな声が寄せられました。多くの卒業生にとって、明治学院大学の良さを再確認できた企画になったのではないかと思っています。

明学ネットワークを生かして、よりよい人生に

『Do For Others』制作において、課題に感じていることはなんでしょう。

現在の紙のマガジンからデジタル化するかどうか。これは難しい問題です。卒業生に直接郵送で届けられるから読んでもらえているし、大切にしてもらえています。読者の同居するご家族も楽しみにしていると聞いています。eBOOKやSNSなどを活用したデジタルメディアにすると、おそらく読者は減るでしょう。スマートフォンのアプリにする手もありますが、どれだけの人がダウンロードしてくれるでしょうか。とはいえ、物価高騰の折、紙のマガジンを制作し続けるにはコストがかかります。

『Do For Others』を読んでもらう目的は、先に申した通り、母校に愛着を感じてもらい懐かしんでもらうことです。閲覧数やフォロワー数を増やすことが目的ではなく、実生活が忙しい卒業生の皆さんに、時折、明治学院大学のことを思い出してもらって母校との接続を図ってほしい。これをデジタルで実現するにはどうすればいいか、これから考えていくべき課題だと思っています。

佐藤 純氏

この先の『Do For Others』の方向性について、お考えをお聞かせください。

卒業生に懐かしいと思ってもらえるもの、卒業生を応援する、そして母校を肯定するといった校友会誌の目的をより研ぎ澄ましていきたいと思っています。

「つながる明学生」という企画があり、今は明学生同士のビジネス上のネットワークを紹介していますが、これについても、今後少し方向性を変えていきたいと考えているところです。というのも、1人の卒業生から、「明学卒ということが、仕事上で役に立ったことは一度もない」と言われたんです。ただ、その方はこう続けました。「でも、プライベートや遊び、趣味では、非常に豊かな人材ネットワークが得られた」と。

明学生の特徴として、人生を楽しむことが上手な人が多い。ビジネスのみでくくらないほうがきっといろいろなネットワークが出てくるのではないかと思うのです。 例えば、「毎年キャンプに行っています」「サバゲー会をやっています」「村上春樹さんが新作を出すたびに語り合っています」といったつながりがきっとあるはず。そんなプライベートのつながりを紹介できれば、読むほうも面白いでしょうし「自分も参加してみたいな」と思う人が出てくるかもしれません。

明学には豊かな人脈があります。これからも「明学らしさとは何だろう?」ということに、真剣に向き合っていきたい。他大学の校友会誌をトレースすることなく、より明学らしい会報誌を作っていきます。

事例概要

明治学院大学校友会会員誌『Do For Others』明治学院大学校友会会員誌『Do For Others』

発行主:明治学院大学 校友センター
発行形態:A4変形、44ページ、オールカラー、無線綴じ
発行時期:年2回(3月、9月)
主な読者:明治学院大学卒業生
発行部数:約4万部
発行方法:会員へ郵送
創刊:2007年

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