連載:統合報告書作成
第2回:初めての統合報告書、どう作る?
では、初めての統合報告書はどう作っていけばいいのでしょうか。今回は作成を進めていくうえでのヒントをお伝えします。
文=斉藤俊明
構成=竹下誠
統合報告書に求める役割は?
「初めての統合報告書を作成したい」「これまでアニュアルレポートとして発行していたものを統合報告書にステップアップさせたい」といったお問い合わせをよくいただくようになりました。ここで重要なのは、統合報告書を何のために、誰に向けて発行するのかということです。
まずは“何のために”。これは冒頭に記したように、自社の価値創造ストーリーを投資家に知らせていくことが目指すところです。統合報告書には中長期で見た自社の価値創造ストーリー、すなわち自社がどのようなビジョンやミッションを持って、どのような手段、ビジネスモデルで持続的に成長していくのかを、トップメッセージをはじめとする多彩なコンテンツで盛り込みます。そこでは財務情報に加えて、非財務情報も紹介していきます。
そして“誰に向けて”については、“何のために”でも触れられているように、主なターゲットは中長期の投資家です。これに加えて、最近では自社の社員や取引先、そして今後自社に入社するかもしれない将来世代といった、様々なステークホルダーをターゲットに含める企業が増えています。そのため、“何のために”の観点では投資家に自社の情報を伝えるものとしてだけでなく、社員や取引先との有効なコミュニケーションツールとしての統合報告書にも注目が集まっています。
日経BPコンサルティング サステナビリティレポート2023 トップメッセージ
近年、統合報告書に加えて、サステナビリティサイトを通じて非財務情報を網羅的に開示する企業が増えています。統合報告書はどうしてもページ数に限りがあるため、価値創造ストーリーに関連するすべての情報を掲載することはできません。そこで情報を取捨選択して統合報告書に掲載し、載せられなかったデータについては情報を常に更新できる特性を生かしてサイトで補完する、といった役割分担をしているケースも多く見られます。
どこから手を付ける?
統合報告書の作成は、1年近くにわたる長いプロジェクトです。このプロジェクトを走り切るには、前述の統合報告書を発行する目的について、まずは経営層にしっかりと理解してもらうことが欠かせません。単に同業他社が発行しているからというだけではなく、今後の中長期的な成長のため、投資家に向けて自社の価値創造ストーリーを伝えることが重要だという本来の目的を、まず経営トップが理解すること、そしてその意義を全社で共有していることが、統合報告書の作成に踏み出す第一歩です。
統合報告書はその名の通り、一年に一度、企業の取り組みを報告する媒体です。財務情報に加えて、スコープ1、2、3の温室効果ガス排出量や人材関連のデータなど非財務情報も開示していきます。非財務情報の中で、例えば人材関連の研修実施時間といったデータは一元的に集約するのが難しく、社内の様々な関連部署、ときには取引先とも連携しながらデータを収集する必要があります。
非財務情報の収集には社内の関連部署の協力が欠かせない
日経BPコンサルティング サステナビリティレポート2023より
日経BPコンサルティングでは、2023年9月にサステナビリティレポートを発行しました。このときも社内に点在している多様な非財務情報の収集において、担当者が大変な思いをしました。情報をスムーズに集めるため、なぜ統合報告書を発行するのかという目的・意義を明確にした上で、どのようなデータを開示する必要があるのか、データの収集は誰に依頼すればいいのか、といった開示情報の棚卸しを進めておくことをお勧めします。
統合報告書発行の裾野の広がりにともない、上場企業にとどまらず、非上場企業や大学・研究機関でも統合報告書を発行、あるいは発行を検討するケースが増えています。日経BPコンサルティングでは、初めて統合報告書を発行する皆様に対して、経営層への勉強会など様々なメニューをご用意して伴走させていただきます。まずはお気軽にお問い合わせください。
日経BPコンサルティングのサステナビリティ情報開示支援
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連載:統合報告書作成
- 第1回:統合報告書作成のポイント
- 第2回:初めての統合報告書、どう作る?
サステナビリティ本部 コミュニケーション企画部
竹下 誠(たけした・まこと)
ライフスタイル誌の編集等を経て、2019年6月に日経BPコンサルティング入社。企業広報誌や周年誌、記事広告等の編集に従事した後、サステナビリティ本部に異動。現在は統合報告書作成を中心に顧客企業のサステナビリティ情報開示を支援する。