経営に効く、インターナル広報・エクスターナル広報とは⑥

社員エンゲージメント向上に力を発揮する社内サーベイの活用

  • 伊藤 憲

    ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 部長 伊藤 憲

いま、社員エンゲージメントの重要性が注目されている。エンゲージメントを高めていく上でインターナルコミュニケーションは重要なテーマであり、効果的な施策の実施とそれに対する検証が必要となる。そこで注目したいのが社内サーベイの活用だ。日経BPコンサルティング ブランド本部 ブランドコミュニケーション部次長の伊藤憲が、社内サーベイの有効性と実施に向けてのヒントを具体的に解説した。

2023年9月6日開催
実践・企業価値向上セミナー
「社員エンゲージメント向上に向けた社内サーベイの活用」

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文=斉藤俊明
構成=伊藤憲、太田未来

社員エンゲージメントが注目度を増してきた社会的背景とは

社員エンゲージメントが注目される主な理由として、伊藤は「多様化した“働く”の価値観」「人材の流動化」「対人コミュニケーションの変化」の3つを挙げた。

幼少期からIT・インターネットを扱ってきたデジタルネーティブ世代は、従来の日本的価値観にとらわれない傾向がある。昨今、多様な価値を認め合うことが重視される風潮となり、会社の文化や人間関係が自分の価値と合わない場合、ためらいなく転職を選択する若手が増え、人材の流動性が高まった。

そこにコロナ禍の影響でリモートワークが浸透し、対面の減少とそれに伴う同僚・上司との関係の希薄化があらわになり、社会は対人コミュニケーションの大きな転換を余儀なくされている。

「このような社会的背景から、企業では人材の確保・定着が難しくなる一方で、多様なワークスタイルにも対応しながら収益を上げることが求められています」と伊藤は語る。人事戦略として他社にない自社の魅力を理解してもらい、優秀な人材を確保しようという取り組みが活発になり、いわゆる人的資本経営によって企業の継続的な成長を目指す時代になっている。

そこで注目度を増してきたのが社員エンゲージメントだ。社員エンゲージメントとは社員・従業員個人と企業の双方向の信頼関係によって成り立つ愛社精神、帰属意識といったものであり、それをもとに会社に貢献したいとの自発的な思いが強い状態が、エンゲージメントが確立された状態だといえる。

社員エンゲージメント向上の鍵は、パーパスへの共感

社員エンゲージメント向上の取り組みとして、伊藤は大きく3つ示す。

1つ目はコミュニケーションの活性化や心理的安全性の確保といった会社の「風土」の定着、2つ目は公正な評価制度や労働環境の整備、スキルアップ支援といった「制度」の確立、そして3つ目が企業理念・ビジョンあるいはパーパスといった「精神」の共有だ。

社員エンゲージメント向上の鍵として、伊藤は次のように語った。

「より良い会社風土や現代的な制度は従業員満足度を向上させます。しかしこれらは他の企業でも同様の取り組みを行っている場合が多いでしょう。最も重要なのは、やはり精神の共有です。特に企業のパーパス=存在意義の浸透はエンゲージメントに大きく寄与することが、当社の研究調査でも明らかになっています。つまりパーパスに共感してもらうことが、社員エンゲージメント向上の鍵といえるのです」

社内への理念浸透施策は評価とともに設計を

制度や環境の整備あるいは新しい理念策定といった施策を行ったにもかかわらず、思うような効果が上がっていないと悩む企業も多いとして、エンゲージメント向上の取り組みを実行するだけでなく、その取り組みをきちんと評価することが重要だと語る。

「様々なインターナル広報施策で理念浸透や風土醸成、新たな制度導入をいくら告知しても、そうした活動の評価を行わなければ、やりっぱなしの施策となる可能性があります。そこで必要になるのが社内サーベイによる浸透度の把握といった施策の評価。エンゲージメント向上施策の企画とともに、目標設定や評価方法も合わせて設計することをおすすめします」

株式会社MIXIの事例から見る社内サーベイのポイント

社内サーベイを計画・設計することで、まずはエンゲージメントの達成度の数値化や業績との連動性検証、理念浸透状況の把握などが可能になる。インターナル広報の効果検証により、社員に伝わりやすい伝達経路や手段を明らかにし、資源の集中にも役立てられる。また、サーベイは各施策の実行前に行うことで目標値の設定にも活用できる。

「このようにデータドリブンで意思決定し、やりっぱなしの施策にしないことが、社員エンゲージメントを向上させるためにも必要になってきます」と伊藤は改めて強調する。

続いて、日経BPコンサルティングが支援した社内サーベイの実績として株式会社MIXIの事例を紹介した。同社はリブランディングを行って理念体系を再構築すると同時に、浸透度を定期的に測定する計画を立案。各理念や自社ブランドイメージ、ブランドに対する認識、広報ブランディング活動に対する認知や評価を測定するためのアンケートを実施している。

このサーベイのポイントは調査の設計にあるとし、伊藤は次のように解説した。

「各理念に対して認知・理解・共感・行動のそれぞれの段階でさらに細分化し、評価指標としています。この設計によって浸透状況のより細かな把握が可能になりました」

さらにはサーベイ結果を経営層や一部関係部署だけで共有するのではなく、インターナル広報の一環として全社員に向け公開している。伊藤は「結果を全社で共有するとともに、社員に会社作りに参画している意識を持ってもらうことができた」と評価。社内サーベイは結果を公表することでサーベイ自体が社員とのコミュニケーションになり、社員の帰属意識を高める効果もあるため、結果を積極的に社内共有することを勧める。加えて、負荷の高いサーベイは逆効果となる可能性があるため、ストレスの少ない簡単な調査を高頻度に行うパルスサーベイの実施を推奨した。

他社との比較によって社員エンゲージメント施策の効果を測るパーパス共感度調査のソリューション

最後に伊藤は、日経BPコンサルティングでは、パーパス共感度調査のソリューションを提供していると説明。

「社員エンゲージメント向上の取り組みでなかなか成果が出ない、あるいは効果が出ているのか分からないとお悩みの企業にお勧めのソリューションです」と話す。

この調査はパッケージのサーベイとなっており、独自の調査項目と多言語対応、事前調査によるベンチマークとの比較を行う点がポイントになっていると強調した。

こうした社内サーベイ以外にも、理念体系の見直しやパーパス策定からCI/VI制作支援、社内コミュニケーション施策の企画・設計・実施まで、理念浸透や社員エンゲージメント向上に向けたトータルソリューションをワンストップで提供しており、「社員とのエンゲージメントや理念浸透、インナーブランディングなどに課題をお持ちでしたら、お気軽にご相談いただきたい。」と締めくくった。

2023年9月6日開催 実践・企業価値向上セミナー
講演② 社員エンゲージメント向上に向けた社内サーベイの活用
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連載:「経営に効く、インターナル広報・エクスターナル広報とは」

伊藤 憲

ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 部長
伊藤(いとう) (けん)

大学卒業後、広告代理店勤務を経て2005年より調査業務に従事し、企業のマーケティングリサーチ、国・自治体の各種調査を担当。
2019年日経BPコンサルティングに入社し、企業や大学などのブランドコミュニケーション活動支援を行う。
「大学ブランド・イメージ調査」のプロジェクトマネージャーを務める。