「~非上場企業も対応を強化~ いま注力すべきESG情報開示を考える」③

サステナブル時代における企業サイトのESG情報開示・発信のポイント

  • 伊達和幸

    マーケティング本部 本部長 伊達 和幸

ESG情報の開示と発信が求められるこの時代、企業サイトにおける開示と発信はどのような考え方で、また具体的にどういう形で取り組んでいけばいいのか。企業のブランド力とコミュニケーション向上をコンテンツ及びデジタルソリューションで支援する日経BPコンサルティングのデジタル本部長、伊達和幸がポイントを解説する。

2023年5月10日開催
企業価値向上セミナー
~非上場企業も対応を強化~ いま注力すべきESG情報開示を考える」より
文=斉藤俊明
構成=伊達和幸、金縄洋右

企業サイトの部門・目的別の取り組みから見る必要な情報発信とは

世界でさまざまなESG情報開示の基準が整備される中、日本でも 2022年の東京証券取引所で市場再編が行われた際、特にプライム市場の上場企業は、さまざまなサステナビリティに関する情報開示が求められるようになった。企業価値を持続的に高めるためには、ESG情報をさまざまなステークホルダーに対して公開、そして適切に届けるため、ESGに関する情報を発信する必要性が増している。

では、ESG情報の「公開」、「開示」、「発信」それぞれの定義とはいったいどのように解釈すればよいのだろうか。

ESG情報の「公開」は、広くすべての人に開放するもので、これはホームページ等における会社や事業、採用情報の公開に該当し、ポイントは「確かさ」にあると伊達は解説する。
その次のレイヤーが、情報の「開示」であり、こちらは規定に基づく項目を特定の相手に提供していくこと。財務・非財務情報の開示はこのレイヤーに該当するという。ここでポイントとなるのは「正しさ」だ。

そしてESG情報の「発信」は、企業の取り組みや考えを広く知らせる活動であり、ポイントは「有益さ」。日経BPコンサルティングでは情報発信=コーポレートコミュニケーションと定義しているとし、「有益な情報を取引先やステークホルダーを含めいろいろな人々に伝えていくことが重要です」と伊達は解説する。

ESG情報の「開示」は、これまでにも統合報告書やサステナビリティサイトなどで行われてきた。人的資本の情報開示については、新たに求められる有価証券報告書への記載や、人的資本レポート等これからまさに取り組むべき課題が多数あり、ハードルを感じている企業もあるかもしれない。

対してESG情報の「発信」は、広報やPR、あるいはブランディングやマーケティングなど粒度の異なる取り組みが混在し、発信手段についてもさまざまなものがあるため「何をどの程度なすべきかの正解がない領域です」と伊達は指摘する。

同社に寄せられる「情報の発信を強化したい」との相談には共通する部分が少ないというが、伊達はあえて「予算」と「計画性」という2つの軸に企業サイトの部門・目的別の取り組みをプロットし、そこから見える傾向を解説する。

まず、広報/IR/サステナビリティ部門が担当するサステナビリティサイトやIRサイトについては、計画性に重点を置きつつ、予算に関しては確定情報の掲載にとどまり、統合報告書の目次はあるもののPDFファイルにつなげる導線のみになっているケースもあると言う。

次に、マーケティングサイト、オウンドメディア、キャンペーンサイト、顧客のサポートサイトなどだ。これらは主には営業部門が担当するが、広報が一部を兼任するなど組織体制により担当は異なるとし「これらのサイトは予算がある程度確保できている一方、計画性が問われる立ち位置にあります」と解説する。

そして、コーポレートサイト、製品サイト、ブランドサイト、採用サイトは、業種や会社の規模により担当部門がかなり異なり、「これらは能動的に情報発信するよりも、業務部門から声が上がり更新することも多く計画的に運用できていないケースが多い」と説明する。

時代ごとに移り変わるコーポレートサイトに求められる要素
2020年代のサステナブル時代は、コンテンツ回帰へ

このようにさまざまなサイトが存在するが、そもそも「企業サイトに求められる」情報発信とはどういったものなのだろうか。伊達は時代によるサイトの変遷をたどりながら、いま求められる要素を掘り下げた。

1990年代はWebサイト自体の黎明期で、正確な情報公開と更新、そして情報発信力の強化に注力され、企業情報や事業概要を公開し、上場企業では財務・IR情報の開示も行われていた。そこから2000年代にかけて、マーケティングやブランディングについてサイトを使って展開する動きが出てくる。目標となるKPIの設定とその達成が追求され、キャンペーンも多数開催。さらにはコミュニケーション強化を目指したエンターテインメント性の高いコンテンツや、ペイドメディア、SEM/SEOによるプロモーションが進展した時代で、2000年代半ばまでは「コンテンツの時代」と振り返る。

2010年代に入ると、マーケティングやブランディングという目的は同じながら、オウンドメディア、SNSやマーケティングオートメーションが使われるようになり、その中でインタラクティブなコンテンツがWebサービスやアプリケーションで見られるようになった。また、SEM/SEOが進化してDSP/DMP/CDPといったプラットフォームの活用もスタートするなど、デジタルマーケティング全盛の時代を迎えた。ここでデジタルマーケティングが浸透したのは、機会損失を抑制していこうというわかりやすい目標があったからだとする。併せて、さまざまな施策の受け皿としてホームページの機能性が重視されるようになったこの時代を、「手法/ツールの時代」と位置づける。

2020年代には、コロナ禍で数々の変化が生まれた。まずは2010年代から情報開示の上で非財務情報の重要性がクローズアップされ始め、その次に「パーパス/シェアードバリュー」という、非財務情報を開示する中で企業の存在価値や共有すべき価値を発信していこうとの機運が高まってきたと指摘する。

その中で、従来のテキスト形式のコンテンツが動画コンテンツに置き換わる動きが進み、さらにChatGPTに代表される対話型生成系AIも注目され始めた。この時代を伊達は“5G時代”として括った上で、次のように話す。

「非財務情報やパーパス/シェアードバリューを伝えていくのが“サステナブル時代”であり、この時代はふたたびコンテンツに回帰していくというのが当社からの提案です。1990年代に情報公開が始まり、そののち情報開示と情報発信のバージョン1.0が同時にスタート。そして手法/ツールの時代を経て、情報開示と情報発信をいま一度アップデートし、バージョン2.0として考えていくのが良いと考えます」

サステナブル時代に必要な情報配信のポイントの解説は、動画、資料で解説しますので、ぜひご覧ください。

2023年5月10日開催 企業価値向上セミナー
講演④ 「サステナブル時代の企業サイト “情報の開示と発信”」
アーカイブ動画、登壇資料公開中

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連載:「~非上場企業も対応を強化~ いま注力すべきESG情報開示を考える」

マーケティング本部 本部長
伊達 和幸(だて・かずゆき)

広告代理店、デジタルエージェンシーで、CS放送局、アパレル企業等のマーケティング戦略立案、ドラッグストアのデジタルサイネージ事業の立ち上げを担当した後、コンサルティング会社設立に参画。電力、通信、航空業界のWEBサービス、EC事業立ち上げを担当。
2016年10月、日経BPコンサルティング入社。

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