Webブランド調査活用事例

Webブランド調査で6回連続1位 サントリーのサイトが高評価の理由とは

  • 福田 孝太近影。

    ブランド本部ブランドコミュニケーション部 チーフプロデューサー 福田 孝太

サントリーグループのWebサイトは日経BPコンサルティング「Webブランド調査」で6回連続1位の評価を受け、企業のサイトやマーケティング担当者からも高い関心を寄せられている。一体どのような方針を持ってサイト運営を行っているのか、グループ全体のマーケティングコミュニケーション業務を行うサントリーコミュニケーションズ(株)のデジタルマーケティング本部に所属する澤田華氏と上田宥氏に聞いた。 聞き手=福田 孝太/文=吉村 克己

サイトは顧客の求める情報を載せるメディア

Webブランド調査における一般企業編で6回連続1位(2020年12月16日現在)に輝くのがサントリーグループのWebサイト(以下、サイト)である。2019年12月に同グループではサイトの大幅なリニューアルを実施し、利用者の利便性を高めた。

サントリーでは10年ほど前からWebブランド調査を導入し、サイト運営やサイトリニューアルなどにも生かしている。一体どのようにWebブランド調査を活用し、どのような方針でサイト運営を行っているのだろうか。

サントリーグループのマーケティングコミュニケーション業務を担当するサントリーコミュニケーションズ(株)のデジタルマーケティング本部に所属する澤田華氏は現在、サイトのトップページやメールマガジン、SNSなどの管理・運営を行っている。澤田氏は運営方針についてこう語る。

「当社ではお客様の心の安心やつながりを大切にしており、そうした全社的な思いをサイトで伝えたいと考えています。そのため、サイトのトップページには従来、会社紹介の動画を載せていたのですが、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、この動画の代わりに、サントリーはお客様とのつながりを大事にしているというメッセージを発信するようにしました」

そのメッセージとは、次のような内容である。

キービジュアルのメッセージ
※2020年12月16日時点

「サントリーは、お酒や飲料を通じて人に寄り添い、いつも『つながり』のそばにいました。大切な人と語りあう時間。みんなと笑いあえる場所。でもそんな日常が当たり前でないことに、私たちは気づかされました。(中略)これまでも、これからも。私たちは、つながっている」

Webブランド調査をリニューアルの課題発見に活用

サントリーが10年前からWebブランド調査を導入しているのも顧客の必要とする情報を確認するためだ。

「私たちの運営するサイトが、果たしてお客様の期待に応えられているだろうかということを確認するすべが、以前はありませんでした。Webブランド調査はその課題を知る重要な情報源となっています」と、澤田氏は語る。

同じ部署で2019年度のリニューアルに携わった上田宥氏も「2019年、サイトを大幅リニューアルする際にもWebブランド調査を1つのデータソースとして活用させてもらいました。もちろん、Webブランド調査では分からない点もあるので、お客様センターへのご意見や感想、独自のアンケート調査なども使ってリニューアルの検討材料にしました」と語る。

2019年度のリニューアルに際しては18年末から準備を始め、ほぼ1年かけて完了させた。

改善点は主に「基本性能の向上」と「新商品や新情報の強化」に力点を置いた。前者では共通ヘッダー・フッターのシンプル化、トップページの掲載情報のスリム化、商品ページへの導線の整理など。後者では「おすすめ商品」「最新ニュース」「キャンペーン情報」「放映中のCM」などの最新情報をトップページに載せるようにした。

商品情報エリア
※2020年12月16日時点

キャンペーン情報エリア
※2020年12月16日時点

リニューアル後、アクセス数も滞在時間も増えていることから、「お客様の期待に応えられているのではないか」(澤田氏)と分析している。

自由回答のコメントから改善点を検討

Webブランド調査の利点として澤田氏は、幅広く他社サイトと比較でき、自社および他社の自由回答のコメントが参照できることを挙げる。

「リニューアルの際、Webブランド調査の自由回答のコメントを参考にさせてもらいました。コメントから浮かび上がった課題として、ページが重い、情報量が多すぎる、トップページが長すぎる、商品ページに飛びづらいなど、サイトの基本性能に関するキーワードが出てきました。それを基にアンケート調査やアクセス解析なども使い、具体的な改善を進めたのです。リニューアルのきっかけとしてWebブランド調査は役に立ちました」と澤田氏は言う。

上田氏もこう語る。

「『ページが重くてなかなか開かない』とか『トップページが長い』というコメントはお客様センターへの声などにはほとんど反映されません。おそらく普段から当社のサイトになじんでいるお客様からは出てきづらいコメントだと思います。それはWebブランド調査の利点です」

自由回答からサイトの課題を発見できることが利点とする一方で、上田氏は「コメントからサイトを見た人の客観的な感想や課題は分かるが、それならばどのように改善してほしいかという声まで聞けるともっと参考になりました」と語る。

また、Webブランド調査の各指標の活用法については「指標の変動の要因が読み解きづらい面もあるので、指標の推移よりもコメントそのものを重視している」(上田氏)という。

「これまで3年ごとに大幅リニューアルをしてきましたが、別に定期的に行う必要はなく、課題があってこそリニューアルするべきと考えているので、今後もその課題を見つけるためにWebブランド調査を利用させてもらいたいと思っています」と澤田氏は語る。

サントリーでは、各ブランドのページなどサイト作りに関わる人はグループ全体で100人を超えるという。その中で、サントリーコミュニケーションズ(株)が担うのは、トップページの運営だ。「トップページは企業の顔だという意識を持っていますので、お客様の信頼を裏切らないようにしたい」と上田氏。

トップページに求められる情報を同社ではさまざまな顧客接点から絶えずリサーチしており、商品とキャンペーン情報に対する問い合わせが多いことが分かった。

「問い合わせ内容を精査した結果、ほぼ30通りのパターンに分類できました。問い合わせされるお客様の気持ちになって、私たちがサイトを見たり、求める情報にたどり着けるかなど検証しながら改善を進めています」と上田氏は語る。

最後にサイト担当者へのメッセージを聞くと、澤田氏は「お客様のニーズに応えられているか意識して、日々、情報をチェックしながら課題を見つけていくことが大事だと思います」と答えた。サイトの改善は今後も続いていく。

ブランド本部ブランドコミュニケーション部 チーフプロデューサー
福田 孝太(ふくだ こうた)

Webプロデューサー、ディレクターを17年経験する、UX領域のスペシャリスト。大手IT企業の全社横断プロジェクトにて、UI/UX設計を中心にビジネス設計、コミュニケーション設計、デザイン設計を担当するほか、新規サービスの立ち上げや、数万ページの大規模サイトリニューアルなどを推進。2018年10月より日経BPコンサルティングに転籍し現職に至る。