カズチャンネルインタビュー後編 「ズタボロマイクにご用心」

リモートワークが快適と思えない理由の一つとして、自宅の作業環境が整っていないからだと考える人も少なくないでしょう。最近腰が痛いと感じる西村も、どんなものがあれば快適に仕事ができるのかと悩みます。ある日、あらゆる商品の使い勝手をYouTubeで分かりやすく解説している「カズチャンネル」(※1)のKazuさんなら、環境を快適にできるモノを知っているのではと思いつき、前回に続き相談に乗ってもらうことにしました。 ※1 カズチャンネル:動画クリエイターのKazuさんが配信しているYouTubeのチャンネル名(2020年8月現在登録者数182万人)

「今、何て言いました?」の原因がここに

西村 こんにちは、Kazuさん。

画面の中にいるKazuさんにリモートで話しかける西村。ところが、「ゴーーーー!」。 西村の座るすぐ後ろにエアコンがあって、なんだか声が聞き取りづらくなっています。

Kazu こんにちは、西村さん。えっと、申し訳ございません、今、何て?

西村 (さっきより大きな声で)こ・ん・に・ち・はー! 私のほうはそんなに気にならないんですが、Kazuさんは聞きづらいですか?

Kazu はい。こういう場合、何がいけないのかというと、エアコンや扇風機の音など、話す側の部屋の環境です。PCの内蔵マイクって、めちゃめちゃ広い範囲やいろんな音を拾ってしまったりするんです。子どもや犬がパパッと走るだけでも、すごい騒音になって相手に伝わってしまいます。

西村 はい、今、エアコンの風量を落とします……。

Kazu 1対1ならまだ耳を澄ませばいいんですが、3人4人になってくると、ノイズだらけでもっと聞きにくくなります。会話って「これをやりたいです」なら、何をやりたいか、言葉を理解する必要があるのに、「え?  何て言いました?」って具合に、どんどん会話にならなくなっていく。実際に会ってしゃべったらこうはならないんですよ、ちゃんと聞こえてるから。

西村 “あるある”です!  そうだ、今日は私、快適に仕事をするためにどんなものを取り入れたらいいか、Kazuさんに教えてもらいたかったんです。こういう、Web会議で会話が聞きやすくなる方法ってありますか?

Kazu 聞きやすさのためには、マイクが最重要かなと思います。Web会議システムなどはある程度ノイズをカットしてくれる機能は入ってたりするんですが、エアコンとか子どもとか、部屋の環境が良くないときはマイクで工夫するのがいいと思います。広範囲のノイズを拾わないヘッドセットなどをチョイスするのがいいんじゃないでしょうか。

ヘッドセット、どう選ぶ?

西村 ヘッドセット!  買おう。それで、選び方の注意点とかありますか。

Kazu おんなじ価格帯でも、性能に天と地ほど差があったりするから、粗悪なものに手を出さないことですかね。ほんで(福井の方言。Kazuさんが好んで使う接続詞)、マイクの集音性を確認するのってすごい難しくて、使ってみてどういうふうに聞こえるかテストが必要になってくるから、私が公開してるような動画を見るなりしないと解決できない。評価の高いヤツを買うのが妥当かなと。

西村 メーカーのウェブサイトを見ても、実際の音は聞けないですしね。

Kazu ほんで、注意したほうがいいのは、ノートPCかデスクトップかによって本体に装備してる端子が違ったりするので、何と組み合わせて使うかを最初にチェックすること。例えば、3.5mmのピンが1つしかついてないタイプは、ヘッドホンのスピーカーとマイク部分が1つにまとまってますが、中にはピンが2つに分かれてるのもあるんで、自分のPCにつなげられるかどうか確認したほうがいいですね。

西村 最低限、このレベルならOKっていうヘッドセットはありますか。

Kazu 今、私もつけてるEarPods(※2)。前にiPhoneとか買うと、ようついてきたヤツです。買わなくていい可能性がある人もいるだろうし。イヤホンの聞こえ自体もいいけど、マイクがここに搭載されてるから、ある程度音の取り方がいいし。

西村 持ってないな……。Kazuさんが買ってよかったと思うヘッドセットは、どんなところがよかったんですか。

Kazu YouTubeではヘッドセットの比較もしてますが、一番よかったヤツはマイクの指向性(※3)っていうか音を拾う範囲が優秀で、値段の手頃さの割に音質も許容範囲。聞きやすさでいうと、いかに対面に近い音質になってるか。対面とかけ離れてると不自然でいやだろうし。モノによっては、聞こえ方がすごい硬くて自然じゃないなっていうのもありました。

※2 EarPods:Apple EarPods with 3.5 mm Headphone Plug
※3 マイクの指向性:マイクがどの角度からの音をはっきり捉えるか、どの向きに感度が良いのかという方向性

音や映像が勝負を決める!?

西村 音質って思ってたより大事なんですね。

Kazu 私はボランティアで県の手伝いをしてるんですが、今年の春、広告代理店十数社の中から1社を選ぶコンペを手伝ったことがあったんです。その時期だから当然リモートです。ほんで、1社あたり10~15分でプレゼンしていくんですけど、不慣れなところはマイクがズタボロで、何しゃべってるか、よう分からんかったりとか。

西村 プレゼンなのに何言ってるか分からない!?

Kazu 本来であれば、制限時間で100%伝えたいじゃないですか。それが、最初の設定で「すみません、つなげません」ってあわてたり、映像がガサガサに乱れたりすると、やっぱり印象がよくないし、この会社と仕事してもあんまり対応力高くないかな、みたいな考えがどこか残ってしまう。

西村 対面でのプレゼンだったら通れたかもしれないのに、提案以前の段階で明暗が分かれてしまうってことですね。

Kazu これからの時代、こういうふうにリモートで選ばれるって確実に増えると思うので、ITリテラシーまで含めてちゃんと提案を伝えられますよ、といったことは絶対的に重要だし、ある意味マナーになってくるかなと。審査員してあらためて感じました。

西村 ふぅー、耳が痛い話だと思うと同時に、だんだん腰も痛くなってきました……。

Kazu 快適に仕事するには、デスク回りもすごく大事です。高さを調整できる机とか。私の会社は作業効率が最優先なんで、社員が欲しいと言えば机も椅子もあげるようにしています。それで1本でも2本でも多く動画をつくれるんだったら、会社としてはもうけものです。無駄に人を増やすより少数精鋭がいい。会社の方針もあるとは思いますが、机なんて人の賃金に比べたら安いし、効率が上がるならがんがん投資したほうがいいと思ってます。

数日後。
人間工学に基づいた疲れない設計の椅子に座り、ヘッドセットをつけて快適そうに画面を見つめる西村。ビジネス用途としても人気の高いゲーミングチェアを手に入れ、プロゲーマー気分で仕事以上に真剣にゲームに興じているのでした。

写真:YouTubeチャンネル「カズチャンネル」より

最後にKazuさんは、緊急事態宣言中に感じていたことをこんなふうに話してくれました

取材は2020年7月9日に行われました

  • 前編は、リモートワーク中のKazuさんが、社員とのコミュニケーションにどんなふうにツールを生かしているのかを公開しています。

Kazu

福井なまりの超行動派動画クリエイター。ガジェットのレビューをはじめDIYや古民家改築、旅や料理など生活のすべてを動画にしている。メインのカズチャンネルのほか4本のチャンネルを持ち、癒やしな話し方と分かりやすいレビューには定評がある。自身の動画を制作する会社の社長も務める。