カズチャンネルインタビュー前編 「リモートワークで仕事のスピードがアップした」

リモートワークになった途端、部下が今、何をやっているのかを自分の目で確かめることができず、ストレスを抱えている管理職は多いのではないでしょうか。バブル入社組の西村部長もその一人です。もやもやした気持ちを晴らすため、DIYでも始めようとYouTubeでやり方を見ていた西村は、ある日、DIYのやり方をせっせと公開していた「カズチャンネル」(※1)に出合います。
※1 カズチャンネル:動画クリエイターのKazuさんが配信しているYouTubeのチャンネル名(2020年8月現在登録者数182万人)

西村部長アイコン

数時間後。そこには、カズチャンネルで、DIYではない動画を食い入るように見続けている西村の姿がありました。リモートワーク中の部下たちと楽しそうに動画づくりをしているKazuさんを見て、部下とどのようにコミュニケーションを取っているのかに興味が湧いたのです。イケイケの西村は、図々しくもKazuさんに話を聞く機会を設けてもらうことにしました。

西村 (リモートで画面越しに)は、はじめまして、Kazuさん。

珍しく緊張気味の西村に対し、Kazuさんは動画と同じ、いつもの口調と笑顔です。

Kazu はい、どうもー。カズチャンネルの、Kazuでございますー。

西村 Kazuさんは今、絶賛リモートワーク中だそうですね。

Kazu はい。これは、私にとって身近な人、志村けんさんが亡くなったことが大きかったです。ニュースを知った途端にやろうと決めました。

西村 事務所を新しくきれいにした途端、誰も出社しない事態になるなんて。うっ、私には耐えられん……。あ、聞こうと思っていた肝心なことが。それで、社員とはリモートでどんなふうにやり取りを?

Kazu 毎日の連絡用に、新しくSlack(※2)を導入しました。ほんで(福井の方言。Kazuさんが好んで使う接続詞)、基本的にはスレッド禁止にしてるんですが、唯一OKのスレッドが、Slackbot(※3)の朝の「今日のやること」ってつぶやき。それに対してみんな1行で「私、今日、これやります」って返信するだけ。報連相はほとんどないです。

Slack

西村 実は私、今、例のDIYチャンネルにハマっていまして。動画の編集は、連絡なしでリモートで、どうやって共有しているんですか。

Kazu 見てくれてありがとうゴザイマス。データ共有にはDropbox(※4)を使ってます。その中にメインチーム、ゲームチーム、メシチーム……とチームでフォルダ分けしています。

西村 (ふふふ。あのDIYの「勝村工務店」チャンネルも、ここにあるんだね……)

Kazu ほんで、撮影したデータを全部クラウド上に置いといて、自分たちのPCと同期して、Slackbotの「今日何する?」ってつぶやきに誰かが「私、この動画編集します」って返したら、そのデータは他の誰も触らない。どこにいても、みんなで最新のデータを共有できるようになってます。

※2 Slack:ビジネスチャットツール
※3 Slackbot:Slack上で動く対話式のチャットボットプログラム
※4 Dropbox:オンラインストレージサービス。複数のデバイス間でデータ共有・同期が可能

ツールは簡単、ルールも簡単

西村 そういうツールはどんなことを重視して導入を決めているんですか。

Kazu まずは使いやすさ。ほんで、初めての人でも簡単に使えて、専門知識もいらないことです。例えばタスク管理にはTrello(※5)を使ってて、作業状況がひと目で分かって視覚的・直感的に使えるところがいいなと思ってます。

カズチャンネルのTrello

西村 みんなでツールを使うときは、ルールがあったほうがいいですよね?

Kazu 最小限の機能しか使わないって決めてるんで、みんなへの指揮もしやすいです。朝のSlackbotの返信も、2~3行にとどめてくれと私が指令を出してます。ほんで、個人間のDM(ダイレクトメッセージ)も禁止にしてて、全員の共有の中だけで会話してるんで、誰が何をやってるか、みんなが分かる状態になってます。

西村 (私が知らないチャットの中で、アイツとアイツが文句の会話をしてる予感が……) あ、でも2~3行の報告だと、みんなちゃんと仕事しているのかって心配になりませんか。

Kazu リモートワークになる前はやることを口頭で伝え合ってましたけど、今は、誰がどんな作業をしてたかがツールの履歴から見えて、社長としても安心できるようになりました。「こんなにこなせたんだ」って分かるから、みんなのこと信頼しきってるし。サボるっていうより、仕事ができない人が焦るような状態に自然となっていきました。

西村 何をやっていたかって報告は、日報と同じですよね。詳しく書いてもらったほうが安心できると思ってました……。

Kazu あらゆることを全部拾い上げるのもいいとは思うんですが、(それを読むために)同時に自分の時間が失われていくのは間違いない。この損失は大きいです。私たちは動画の撮影と編集だけをやりたいんです。

西村 徹底してますね。その、時間を最大限に活用するために、ほかにどのような工夫をしているのですか。

Kazu 今、みんなの編集時間が1本あたりどのくらいなのかを測定することに取り組んでます。ほんで、ほかの人が同じ作業をしたときにだいぶ開きがあるのであれば、早い人が遅い人に「こういうとこ、手ぇ抜くんだよ」って教えてあげたりするようにしています。

西村 私のところも、仕事が早い人と遅い人はいますが、そんなに違うものでしょうか。

Kazu 一番上と一番下はすごい差が出てきます。ほんで、下を責めるんでなく引き上げるために、やらなくていい部分はサボってもらって、全体を底上げしています。コロナ前より今のほうが、全体の作業スピードが断然速くなりました。

※5 Trello:プロジェクトと個人タスクを管理するためのオンラインツール

まず、上司が頑張る姿を見せる

西村 リモートワークになって、気づいたことってありますか。

Kazu あらためて、みんなが1カ所に集まる必要のなさを強く思ってしまって。正直、仕事道具はノートPCだけ。わざわざそれを持ってきて、ここで作業する必要はないなと。事務所を新しくしていろいろ準備もしたけど、もう、半永久的にリモートになると思います。

ワークスペース

西村 近くにみんながいないと、話したいときにすぐに話せなくて、不便じゃないですか?

Kazu 集まってたときから、みんな、余計なときに話しかけることは避けていました。急用で話さなくてはならないときはありましたが、今、そういうのが全くなくなって、すごいラクです。ほんで、好きな時間に休憩したりお茶したり、全部自分のタイミングでできるから、効率よくて、私自身の仕事もはかどるようになりました。

西村 全員で集まることはもうないんですか。

Kazu 6月末から月2回、またみんなで1時間くらい集まることにしました。基本的には動画の編集の勉強会をやってます。リモートでもできるんですが、会うと会話のレイテンシー(遅延)がなく、表情もよく分かってめちゃめちゃスムーズ!  これは実際に会ったときの強みです。

西村 なるほど。Kazuさんならではのリモートワークと、集まったときのメリットを聞くことができて、DIYの動画を見ていたときより気分がすっきりしました。ところで、社長として心がけていることってありますか。

Kazu まずはー。社長が頑張らないといけない。それと、自分だけいい思いをしないで、業績のいいときはしっかりと賃金を支払う。今はそれができてるかなって思ってます。ほんで、西村さんももっとみんなを信頼してあげたら、部下の人たちも今以上に頑張ってくれるかもしれんね。

気持ちが軽くなった西村。翌日からWeb会議でのみんなからの報告は、細かい説明は不要にして、短時間で終わらせるよう心がけています。

西村 会議が早く終わるのもいいもんだな。予定より時間余ったし、今からカズチャンネル見ることにしよう。

退出ボタンを押し忘れ、仕事中にYouTubeを見始めた西村を、部下たちはそっと見守るほかありませんでした。

写真:YouTubeチャンネル「カズチャンネル」より

今回のお話をKazuさんにまとめていただきました

取材は2020年7月9日に行われました

  • 次回は、自宅の作業環境をどのように整えたら快適なリモートワークを行えるのか、Kazuさんに教えてもらいます。

Kazu

福井なまりの超行動派動画クリエイター。ガジェットのレビューをはじめDIYや古民家改築、旅や料理など生活のすべてを動画にしている。メインのカズチャンネルのほか4本のチャンネルを持ち、癒やしな話し方と分かりやすいレビューには定評がある。自身の動画を制作する会社の社長も務める。

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