合併10周年記念誌を起点に、全社をつなぐコミュニケーション資産へ

株式会社URリンケージ

ブランドコミュニケーション

2015年、株式会社URリンケージを存続会社として株式会社URサポート、株式会社中部都市整備センター、株式会社九州都市整備センター、株式会社URコムシステムの4社を統合し、新生「株式会社URリンケージ」が誕生した。合併から10年という節目を迎えた同社だが、各事業部門、各支社ごとの会社案内や営業資料は整備されていたものの、URリンケージ全体の事業や強みを横断的かつ詳細に紹介するツールは存在していなかった。そこで同社は、社員エンゲージメントの向上と営業・採用活動への活用を見据え、「合併10周年記念誌」の制作に取り組んだ。

合併10周年を機に、会社の「今」を伝える記念誌を企画

URリンケージでは、合併10周年を迎えた際、当初から記念事業が計画されていたわけではなかった。転機となったのは、経営トップから記念誌制作の話が持ち上がったことだ。

背景には、合併から10年が経過する中で浮かび上がっていた課題があった。各事業部門や各支社では、それぞれ会社案内や営業資料を整備していたものの、URリンケージ全体の事業や強みを横断的に詳しく紹介するツールは存在していなかった。そのため、社員であっても他部門の事業内容を十分に把握できているとは言えず、顧客に対しても会社全体の事業領域や強みを一冊で伝えることが難しかった。

「営業ツールとしても使えるものにしたい、社員のエンゲージメント向上にもつなげたいという大きな方向性が示されていました。そうした目的がはっきりしていたことで、どういった企画や内容にしていくべきか考えやすかったですね」(荻野氏)

そこで同社は、10周年という節目を単なる振り返りの機会ではなく、自社の価値や強みを改めて整理し、社内外へ発信する機会と位置付けた。目指したのは、従来型の社史や記録集ではない。社員が手に取りやすく、雑誌のような感覚で読み進められ、営業や採用の場面でも活用できる一冊だった。

その結果、記念誌には「社員エンゲージメントの向上」「営業活動支援」「採用活動での活用」という複数の役割が期待されることになった。

荻野正樹氏の写真

株式会社URリンケージ 総務企画本部 総務部 次長

荻野おぎの 正樹まさき

明確なコンセプトが制作プロジェクトを支えた

周年誌制作では、目的やターゲットが曖昧なまま進行し、途中で方向性が揺らぐケースも少なくない。

しかしURリンケージでは、「誰に、何を伝えるか」という目的が早い段階で共有されていた。社員エンゲージメントを高めることに加え、営業や採用でも活用できるツールにするという経営トップの方針が明確だったため、制作チームはその目的に沿って企画や誌面構成を検討することができた。

また、制作の進捗状況は定期的に経営層へ報告。コンセプトに対する認識を共有しながら進めたことで、大きな方向転換が生じることなくプロジェクトを推進することができた。

約60人が参画する全社横断プロジェクトに

記念誌制作にあたっては、各事業部門や拠点から編纂委員を選出し、約60人規模の体制でプロジェクトを進めた。

全ての委員と直接やり取りするのではなく、各部門にコアメンバーを配置。事務局はそのコアメンバーを通じて意見を集約しながら、全社横断での合意形成を図った。

もっとも、全社を巻き込むプロジェクトだけに調整は容易ではない。全体会議で積極的に意見を出す部門もあれば、会議では発言しないものの個別の調整の際に意見を寄せる部門もあった。それぞれの事業に対する思いを汲み取りながら、一冊としての完成度を高めていく必要がある。

事務局は広く意見を集める一方で、最終的には全社最適の視点から判断を行った。全ての意見を尊重しながらも、組織全体の魅力を伝えるという目的を軸に編集を進めたという。

各部門の編纂委員が意見を交わした編集会議の様子

「現場力」をどう表現するかが最大のテーマ

誌面づくりにおいて最も苦労したのは、URリンケージの最大の強みである「現場力」という要素を、どのように可視化するかだった。

「『現場力』は当社の一番の強みですが、それを言葉だけではなく『見える形』にしたかったのです」(角五氏)

「現場力」という言葉は社内で共有されている一方、その解釈は部門や職種によって少しずつ異なっているという。抽象的な概念を誌面上で表現することは容易ではなかった。

そこで採用したのが、プロジェクトストーリー(事例)や社員紹介を充実させる編集方針である。プロジェクトストーリー(事例)では「現場力」が発揮された事業や取り組みを、社員紹介では「現場力」を支える人材の姿を紹介することで、同社の強みを具体的に伝えた。

また、写真の収集や掲載許諾の取得など、制作実務にも多くの時間を要した。関係各所との調整を重ねながら、納得できる内容へと仕上げていった。

角五秀治氏の写真

株式会社URリンケージ 総務企画本部 総務部長 兼 情報システム部長

角五かくご 秀治ひではる

企画「あのプロフェッショナルにFOCUS ON」ページのキャプチャ
企画「あのプロフェッショナルにFOCUS ON」
企画「プロジェクトストーリー」のキャプチャ
企画「プロジェクトストーリー」

社内外に広がる記念誌の成果

完成した記念誌は、全社員への配布に加え、取引先や関係者にも届けられた。

社内では、「他部門がどのような事業を手掛けているのかよく理解できた」「10年間の歩みを改めて知った」といった声が寄せられた。特に年表や社員紹介、プロジェクトストーリーの企画は、自社理解を深めるきっかけになったという。

また、記念誌の効果は発行後だけではなかった。約60人が参加した編纂プロジェクトは、各部門や拠点の社員が会社全体を見つめ直す機会となると同時に、組織横断のコミュニケーションを活性化させた。普段は業務上の接点が限られるメンバー同士が意見交換を重ねることで、互いの事業理解が深まり、新たなつながりも生まれた。プロジェクト終了後もその関係は継続しており、記念誌制作のプロセス自体がエンゲージメント向上に寄与したといえる。

「実は中途入社して間もない中でこのプロジェクトに携わりましたが、各支社や事業部門の取り組みを知ることができ、改めて会社全体への理解が深まりました。記念誌制作を通じて生まれた横のつながりは、プロジェクト終了後の情報交換にもつながっており、大きな成果だったと感じています」(中山氏)

営業現場からも、「URリンケージ全体の事業や実績を一冊で説明できる」と好評だ。これまで各拠点で個別に作成していた資料を補完するツールとして活用されているほか、記念誌を受け取った顧客から問い合わせが寄せられるケースもあり、営業活動への効果も表れ始めている。

こうして合併10周年記念誌は、会社の歩みを振り返るだけでなく、社員同士の相互理解を促し、自社の強みを社内外へ発信するコミュニケーション資産として機能している。

中山雅雄氏の写真

株式会社URリンケージ 総務企画本部 総務部 総務課 課長代理

中山なかやま 雅雄まさお

周年誌づくりで重要なのは「目的を共有すること」

今回のプロジェクトを振り返ると、成功要因の一つとして挙げられるのが、制作開始前の目的共有だ。

「誰に何を伝えるのか」「なぜつくるのか」が定まっていたからこそ、多くの関係者を巻き込みながらも方向性がぶれることがなく、着実に進めることができた。

また、全社規模のプロジェクトでは、意見を広く集めることと同時に、どこかの段階で事務局が判断を下し、全体最適の視点で意思決定することも欠かせない。

「営業ツールとしても使えるものにしたい、社員のエンゲージメント向上にもつなげたいという方向性が最初から明確でした。そのため、企画を考える際にも大きくぶれることなく進めることができました」(荻野氏)

URリンケージの合併10周年記念誌は、10年間の歩みを記録するだけでなく、組織横断のコミュニケーション活性化と企業価値の再発見を実現した。各事業や拠点に分散していた情報を全社視点で整理し、共有することで、新たなコミュニケーション資産としての価値を生み出したのである。

鈴木 俊行(日経BPコンサルティング)
脇山 誠司(日経BPコンサルティング)

株式会社URリンケージ

https://www.urlk.co.jp/

独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)の関係会社で、まちづくり・すまいづくりを総合的に支援する建設コンサルタント。2015年に株式会社URサポート、株式会社中部都市整備センター、株式会社九州都市整備センター、株式会社URコムシステムを統合。区画整理事業、市街地再開発事業、密集市街地整備事業等の都市開発・都市再生事業支援、団地再生、マンション再生、公共団体等の発注者支援、災害復興支援、官民連携事業支援、不動産活用、住宅の入居促進、海外プロジェクト支援など幅広い事業を展開。長年にわたり培ってきた現場力と専門性を活かし、UR都市機構をはじめ行政機関や民間事業者、地域住民と連携しながら、持続可能なまちづくりと社会課題の解決に取り組んでいる。


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