2026年9月2日(水)から4日(金)まで、アジア最大級の最先端科学・分析システム&ソリューション展「JASIS 2026」が幕張メッセで開催された。主催者発表によると、実来場者数は21,699人と昨年の19,750人から1割近く増加した(複数日来場した来場者の重複を除いた人数。出展社の人数は含まず)。また、出展社数は446社(昨年444社)、出展小間数は1,328小間(昨年1,287小間)とこちらも昨年を上回った。
今回は「JASIS 2026」の代表的な出展ブースを例に取り、BtoB展示会における“強み”と“らしさ”の伝え方について考えてみた。
大規模ブースをホール奥に並べる配置は昨年を踏襲
今回も昨年と同様、展示会で使われたのは幕張メッセの5~8ホール。ホール奥に日本電子(5ホール)、リガク(6ホール)、日本分光、日立ハイテク(ともに7ホール)、堀場製作所、島津製作所(ともに8ホール)といった大規模ブースをずらりと並べる配置も昨年を踏襲していた。
今回は大規模ブースの中から、企業ブランディングの観点で筆者が注目した日本電子、堀場製作所、島津製作所の3社のブースについてレポートしてみたい。
唯一“大分類”ができていた展示構成………日本電子(JEOL)
5ホールの日本電子(JEOL)は来場口から見て右奥の角に位置していた。この配置だと奥側と右側の2辺が通行の無いデッドスペースになるが、正方形の小間の左手前の角を正面入り口とし、対角線上に左右にスペースを分ける斜め使いのレイアウトにより、生きている2辺(左側、手前側)を最大限に使うことができていた。左右に分けたスペースは左側が「LIFE SCIENCE」、右側が「SEMICONDUCTOR/MATERIAL」。このように自社の事業を“大分類”できている展示構成は日本電子だけで、他のブースは装置、ソリューション単位の“小分類”に留まっていた印象がある。
「AI」の訴求と優れたブランディング………堀場製作所
8ホールの堀場製作所は、ブースの中央に「AI for Science&Smart Factory」と題した「AI」ソリューションに特化した円形コーナーを設ける大胆なレイアウト。来場前は「JASIS 2026」全体が「AI」一色の様相になることも予想されたが、実際には「AI」を掲げるブースはほとんど無く、その中で特設コーナーを設けた堀場製作所の存在は際立っていた。
また、社是である「おもしろおかしく Joy and Fun」のパネルを置き、自社の「ビジョン・ミッション・バリュー」を示し、“ほんまもん”という京言葉で創業者の想いを伝え、グローバルでの実績をインフォグラフィックスで見せるといったしっかりとしたコーポレート・ブランディングが出来ていたブースは他にはなく、その点でも堀場製作所のブースは極めて優れていたと思う。
業界最大手ならではのブランディング………島津製作所
8ホールの島津製作所は、例年通り黒塀で囲った武家屋敷を思わせるブース。島津藩の家紋でもある丸十紋の企業ロゴも随所に掲げられ、また商談スペースの入り口は長のれんで奥の様子を隠すなど、昨年創業150周年を迎えた京都の老舗企業であることを強調したハイブランド的なブランディングが目を引く。
昨年まではブース内に入るのには島津製作所独自の受付で入場証のQRコードを読み取らせる必要があったが、今年はそれが必須ではなくなった。それでも大半の来場者はノベルティと引き換えにQRコードを読ませていた。展示コーナーの前で来場客のほうから社員に説明を求めるシーンも目立ち、さすが業界最大手のブースといった印象。また、AX(Analytical Transformation)というコンセプトワードが、ブース入り口の壁面などで説明されていた。
展示会で伝えるべきは“強み”と“らしさ”
唯一展示構成を“大分類”できていた日本電子、業界最大手の老舗企業らしいブランディングが出来ていた島津製作所は、それぞれの企業の“らしさ”を今年も打ち出せていた。特筆すべきなのは堀場製作所で、プロダクトでは「AI」ソリューションを前面に据え、コーポレートでは“堀場らしさ”を伝えるブランディングが出来ていた。
装置、ソリューションを並べただけでは、その企業の今の“推し”が何なのかは伝わってこない。出展担当者は各事業の取りまとめに終始し、扱いが一律になりがちだが、数多くあるブースの中で衆目を集めるのには堀場製作所の「AI」特設コーナーのように“推し”を明確に打ち出すことが必要だろう。
また、展示会ブースは自社ホームページ同様、本来は“企業を映す鏡”であるべきだ。現状のBtoB展示会はプロダクトに関するパネルと装置が並ぶばかりで企業としての顔が見えてこない。そこに欠けているのはコーポレート・ブランディングの視点だ。その点、社是や「ビジョン・ミッション・バリュー」、創業者の想いなどを伝えていた堀場製作所のブースからは企業としての顔をはっきりと見て取ることができた。
堀場製作所は小間数では島津製作所、日本電子を下回るが、ある程度の小間の規模があれば、自社の“強み”や“らしさ”を伝えることができるというお手本のようなブース作りで、他社の展示会担当者も大いに参考になったのではないだろうか。
新井 徹(日経BPコンサルティング)
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