全社員で創り上げたビジョン「人と情報を大切に」―
ブランディングプロジェクトを進め、風通しの良い職場に
社員の声から始まった“自分たちのビジョンづくり”
2024年7月、同社では「ブランディングプロジェクト」と呼ばれる社内横断チームが発足した。
背景にあったのは、「社員と会社が同じ方向を向き、共に成長できる組織をつくりたい」という思いだった。
リーダーの吉田氏はこう語る。
「社内アンケートを行った際、会社への誇りや愛着をもっと高めたいという声が多くありました。そこで、社員みんなが納得できるビジョンが必要だと考えました」
プロジェクトは社内公募制でメンバーを募集。役職や雇用形態に関係なく、幅広い世代・部署から10名が集まった。
「会社をもっと良くしたい」「他の職場を知りたい」という動機から応募したメンバーたちで、定年を控えるベテラン社員や再雇用者も参加。まさに「多様な視点」が交わる場となった。
株式会社日経BP読者サービスセンター コーポレート室長
吉田 博一 氏
全社員を巻き込む対話の連鎖
ビジョンは通常、経営層が決定し、全社員に通達されるケースが多い。しかし同社は違った。社員が主導してつくることに経営層も同意した。
チームはまず、「今後の会社が目指す姿」をテーマに全社員アンケートを実施。
各メンバーが自部署に持ち帰り、意見を募り、集まったキーワードを何度も精査しながらビジョン案をブラッシュアップした。
「同じような意見でも、微妙にニュアンスが違う。何度も議論を重ねて、共感できる言葉を探しました」(加藤氏)
そうしてビジョン案を複数しぼり、さらに全社員にアンケートを行って絞り込んでいった。そうしたプロセスを経て誕生したのが、「人と情報を大切に」というビジョンと、それを支える5つの視点である。
吉田氏は「経営はあくまでサポート役。社員の意見を最大限尊重してもらえた」と振り返る。
ビジョンを構成する5つの視点-『コンセプトブック2025』より
名刺・冊子・コーポレートサイトで“見える化”
ビジョン策定後の課題は、「どう浸透させるか」だった。さまざまな案が出る中で、最終的に次の4つの施策を選択した。
- 名刺デザインのリニューアル
- コンセプトブック(冊子)の制作
- コーポレートサイトの改修
- 社内イントラネット上に部署、メンバー紹介の場を設定
名刺は社内で、冊子制作とサイトリニューアルは日経BPコンサルティングと協働で制作を進めた。社員インタビューや撮影も行い、冊子には実際の従業員が登場。「家族に自分の仕事を説明しやすくなった」「会社の雰囲気が伝わる」と好評だったという。また、コーポレートサイトには「数字で見る会社データ」や社員インタビューを掲載。採用面接でも「どういう会社なのか、どんな人たちが働いているのかが分かりやすかった」という応募者が増え、リクルート面での効果も表れ始めている。
社員発信が育む風通しの良い組織へ
コンセプトブックの制作とサイトの公開がひと段落したところで、よりインナーブランディングを高める施策を始めている。ブランディングプロジェクトの思いを受け継ぐかたちで「社内広報委員会」が発足。加藤氏は「イントラネット上での部署紹介を第一歩として、これからは子育て中の社員同士の座談会やテーマ別のワークショップなど、社員同士がつながる場をつくりたい」と語る。委員会では、部署紹介やメンバー紹介用のテンプレート整備や撮影研修も実施した。社員同士で撮影した写真を掲載できる仕組みを整え、社内コミュニケーションの活性化が進んでいる。
こうした取り組みの効果は早くも現れている。ビジョン策定から1年、吉田氏は「制度や福利厚生への意見も匿名で伝えられるようになり、経営側から丁寧な回答が返ってくるようになった」と語る。
冊子やサイトという“かたち”を通じて、ビジョンは単なるスローガンではなく、社員の手元に残る「文化」として息づき始めている。
株式会社日経BP読者サービスセンター
データベース第2事業部 BtoBグループ リーダー
加藤 明江 氏
社員が主体の“共創型ブランディング”が未来を拓く
「ブランディング=経営発信」ではなく、「ブランディング=社員共創」。
今回の取り組みは、その象徴的な成功例といえる。
「このプロジェクトで得た一番大きな成果は、“みんなで考える”文化が根づいたことです。会社と社員が対話しながら成長できる仕組みを、今後も続けていきたいです」(加藤氏)
冊子は社員のデスクや家庭に置かれ、ふとした時に手に取られる。その一冊が、会社の未来と人をつなぐ「新しい絆」になっている。
A5サイズで手に取りやすく、読み終えたあともすっきり収納できるコンパクト仕様。
株式会社日経BP読者サービスセンター
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