全社員で創り上げたビジョン「人と情報を大切に」―

ブランディングプロジェクトを進め、風通しの良い職場に

2025.12.15

ブランディング

  • ブランド本部 ブランドクリエイティブ部長 鷹野 美紀

社員と会社がともに持続的な成長ができる職場にしたい――。そんな思いで2024年、日経BP読者サービスセンターは、全社横断の“ブランディングプロジェクト”を開始した。全社員に何度もアンケートを実施し、つくり上げたビジョン「人と情報を大切に」がその第一歩だ。だが、せっかくのビジョンをどうすれば浸透させられるのか。プロジェクトメンバーは、コンセプトブックとコーポレートサイトの改修、社内広報委員会の立ち上げ、イントラネット上でのメンバー紹介まで、多岐に渡って理念浸透のための施策を推進した。経営主導ではなく社員主体で進めたプロジェクトの背景と成果を、中心メンバーとして活動した吉田博一氏と加藤明江氏に話を聞いた。聞き手=鷹野 美紀 文=脇山 誠司 写真=小林 淳

社員の声から始まった“自分たちのビジョンづくり”

2024年7月、同社では「ブランディングプロジェクト」と呼ばれる社内横断チームが発足した。

背景にあったのは、「社員と会社が同じ方向を向き、共に成長できる組織をつくりたい」という思いだった。

リーダーの吉田氏はこう語る。

「社内アンケートを行った際、会社への誇りや愛着をもっと高めたいという声が多くありました。そこで、社員みんなが納得できるビジョンが必要だと考えました」

プロジェクトは社内公募制でメンバーを募集。役職や雇用形態に関係なく、幅広い世代・部署から10名が集まった。

「会社をもっと良くしたい」「他の職場を知りたい」という動機から応募したメンバーたちで、定年を控えるベテラン社員や再雇用者も参加。まさに「多様な視点」が交わる場となった。

株式会社日経BP読者サービスセンター コーポレート室長 吉田 博一 氏

株式会社日経BP読者サービスセンター コーポレート室長
吉田 博一 氏

全社員を巻き込む対話の連鎖

ビジョンは通常、経営層が決定し、全社員に通達されるケースが多い。しかし同社は違った。社員が主導してつくることに経営層も同意した。

チームはまず、「今後の会社が目指す姿」をテーマに全社員アンケートを実施。

各メンバーが自部署に持ち帰り、意見を募り、集まったキーワードを何度も精査しながらビジョン案をブラッシュアップした。

「同じような意見でも、微妙にニュアンスが違う。何度も議論を重ねて、共感できる言葉を探しました」(加藤氏)

そうしてビジョン案を複数しぼり、さらに全社員にアンケートを行って絞り込んでいった。そうしたプロセスを経て誕生したのが、「人と情報を大切に」というビジョンと、それを支える5つの視点である。

吉田氏は「経営はあくまでサポート役。社員の意見を最大限尊重してもらえた」と振り返る。

ビジョンを構成する5つの視点-『コンセプトブック2025』より

名刺・冊子・コーポレートサイトで“見える化”

ビジョン策定後の課題は、「どう浸透させるか」だった。さまざまな案が出る中で、最終的に次の4つの施策を選択した。

  • 名刺デザインのリニューアル
  • コンセプトブック(冊子)の制作
  • コーポレートサイトの改修
  • 社内イントラネット上に部署、メンバー紹介の場を設定

名刺は社内で、冊子制作とサイトリニューアルは日経BPコンサルティングと協働で制作を進めた。社員インタビューや撮影も行い、冊子には実際の従業員が登場。「家族に自分の仕事を説明しやすくなった」「会社の雰囲気が伝わる」と好評だったという。また、コーポレートサイトには「数字で見る会社データ」や社員インタビューを掲載。採用面接でも「どういう会社なのか、どんな人たちが働いているのかが分かりやすかった」という応募者が増え、リクルート面での効果も表れ始めている。

社員発信が育む風通しの良い組織へ

コンセプトブックの制作とサイトの公開がひと段落したところで、よりインナーブランディングを高める施策を始めている。ブランディングプロジェクトの思いを受け継ぐかたちで「社内広報委員会」が発足。加藤氏は「イントラネット上での部署紹介を第一歩として、これからは子育て中の社員同士の座談会やテーマ別のワークショップなど、社員同士がつながる場をつくりたい」と語る。委員会では、部署紹介やメンバー紹介用のテンプレート整備や撮影研修も実施した。社員同士で撮影した写真を掲載できる仕組みを整え、社内コミュニケーションの活性化が進んでいる。

こうした取り組みの効果は早くも現れている。ビジョン策定から1年、吉田氏は「制度や福利厚生への意見も匿名で伝えられるようになり、経営側から丁寧な回答が返ってくるようになった」と語る。

冊子やサイトという“かたち”を通じて、ビジョンは単なるスローガンではなく、社員の手元に残る「文化」として息づき始めている。

株式会社日経BP読者サービスセンター データベース第2事業部 BtoBグループ リーダー 加藤 明江 氏

株式会社日経BP読者サービスセンター
データベース第2事業部 BtoBグループ リーダー
加藤 明江 氏

社員が主体の“共創型ブランディング”が未来を拓く

「ブランディング=経営発信」ではなく、「ブランディング=社員共創」。

今回の取り組みは、その象徴的な成功例といえる。

「このプロジェクトで得た一番大きな成果は、“みんなで考える”文化が根づいたことです。会社と社員が対話しながら成長できる仕組みを、今後も続けていきたいです」(加藤氏)

冊子は社員のデスクや家庭に置かれ、ふとした時に手に取られる。その一冊が、会社の未来と人をつなぐ「新しい絆」になっている。

コンセプトブックの写真

A5サイズで手に取りやすく、読み終えたあともすっきり収納できるコンパクト仕様。

株式会社日経BP読者サービスセンター

日経BPおよび日本経済新聞社グループの雑誌・新聞・デジタルメディアを対象に、購読管理やカスタマーサポートを担う専門組織。1991年の設立以来、フルフィルメント業務を中心にサブスクリプションビジネスを支え、顧客対応・データ管理・イベント関連業務などへ領域を拡大。30年以上の実績と柔軟な対応力を強みに、多様化する読者ニーズに応えるサービスを提供している。

創立: 1991年(平成3年)7月1日

本社: 東京都江戸川区臨海町5丁目2番2号

事業内容: 雑誌・書籍購読管理、会員サポート、デジタル購読サービス運営、顧客データ管理ほか

従業員数: 163名(2025年9月1日現在)

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