EcoVadisに聞く①

サプライチェーンのサステナビリティリスク管理の最前線とは

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    サステナビリティ本部コンサルティング部 戸井田 むつみ

180カ国以上で利用され、現在までに13万社以上もの企業を評価してきたサプライチェーン評価の世界的大手、EcoVadis。前編では、欧州連合(EU)をはじめ世界中でサステナビリティに関する法規制が次々と生まれる中で、企業は今後どのような対応を求められるのかについて、日本・アジア太平洋地域シニア・バイスプレジデントのリチャード・ボーン(Richard Bourne)氏にお話を伺いました。

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聞き手・文=戸井田 むつみ、西尾 理紗

最近のESGの大きなトピックとして、欧州連合(EU)で企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が発効したことがあります。またEUでは企業サステナビリティデューデリジェンスに関する指令(CSDDD)に関する議論も進んでいます。このような変化の中で、EcoVadisとしては企業にとってどのような対応が必要だと考えていますか。

ボーン 世界では、CSRDやCSDDD以前より、持続可能な調達の観点からサプライチェーン管理が必須とされてきました。このため、政府が一定のデューデリジェンスの実施を企業へ求めるCSRDやCSDDDは非常に重要です。

EcoVadisは、この規制に対する理解と知見を基にして、日本を含む多くの企業がデューデリジェンスの要点に対応できるようなソリューションを提供しています。その1つとしてアジアや日本も含むグローバル規模で展開しているのが、企業のサプライチェーンにおけるサステナビリティ情報の透明性を高める支援です。

昨今は、膨大な数の規制が続々と設定されています。このため、多くの企業は例えばCSRDやCSDDDが何なのかを十分に理解していません。このような場合、EcoVadisの支援により、企業は調達パートナーや投資家の間で共有可能なプラットフォーム上でデータを収集し、開示することができます。透明性を高める上で、会話を行う場を増やすことは非常に重要です。

また、サプライチェーン評価も重要です。サプライチェーンのどこにリスクがあるのか分析を行うのです。第三者機関を通じて、企業評価を行い、サプライチェーンにおける改善点のモニタリングに参加し、特定の項目について報告することが重要です。

EcoVadisでは、EcoVadisアカデミーなどの能力開発支援も行っています。企業の混乱を招いている大きな原因は、認識不足や教育方法です。サステナビリティとは何か、ESGとは何か、企業はそれぞれ異なる成熟段階にあり、それぞれ異なる道を歩んでいるため、多くの疑問を抱えています。

CSDDDでは、環境だけでなく人権デューデリジェンスの実施も義務化されます。CSDDDの採択によって、サプライチェーン管理にどのような影響があると思いますか。

写真:リチャード・ボーン(Richard Bourne)氏

EcoVadis 日本・アジア太平洋地域
シニア・バイスプレジデント
リチャード・ボーン(Richard Bourne)氏

ボーン サプライチェーンにおいて人権は重要な問題になりやすいことが分かっています。過去には、紛争鉱物や労働条件まで、ラナ・プラザ崩落事故のような事例において低コストで生産をしている特定の産業については人命にも影響を及ぼす事例もありました。世界の地域においても、英国には現代奴隷法が制定されていますし、オーストラリア、昨今ではカナダまで、新たにサプライチェーン関連の法規制が制定されました。

このように、サプライチェーンにおける環境と人権の影響は、歴史的な要素です。CSDDDは、よりグローバルに影響を与える全体的なアプローチとなります。EU域内の企業はEU域内で事業を展開する際に、デューデリジェンスを求められることとなり、それがやがて日本企業にも波及します。影響を受ける日本企業は、これが何を意味するのかを理解した上で、デューデリジェンスを始めることが期待されます。

デューデリジェンスを開始するには、専門家と協力し、環境や人権の問題が自社にどのような影響を与えるのかを理解することから始めることを推奨します。サステナビリティの専門家と協力し、チェックボックスにチェックを入れていくだけでなく、企業に何が関連しているのかを理解することが重要です。

社内のサステナビリティ推進に当たり、サステナビリティ人材の確保が難しいという悩みを多く聞くことがあります。このような状況において、どのような対応策が考えられるでしょうか。

ボーン EcoVadisでの私の15年間の経験から言うと、サステナビリティがなぜ重要なのかを企業が理解するためには、組織内で強いリーダーシップを発揮することと、方向性をしっかりと示していくことが必要だということです。

そしてこの15年の間に、サステナビリティやESGを推進する重要な役割を果たす担当者が企業内で台頭してくるのを目の当たりにしてきました。このテーマがいかに重要であるかを経営陣や投資家に納得させることができる専門家が企業にいることは非常に重要です。なぜなら、サステナビリティは企業にとってビジネスチャンスや利益の拡大につながる可能性があるほか、新たな法規制が制定されることなどに対するリスク管理にもつながるからです。

サステナビリティに関しては毎年のように新たな法規制が制定されたり、新たなトピックが注目されたりします。これらの中から、何が自社のビジネスに関連しているのかを見極めるにはサプライチェーンの評価を行うことや、eラーニングなどのプログラムを受講して課題を理解することが役立ちます。そのためには、企業は様々なサービス・プロバイダーを利用する必要が出てきます。EcoVadisのような総合的な格付け会社は、サステナビリティやESG課題を幅広く理解することに役立ちます。

後編では、将来的にサプライチェーン管理はどうなっていくのかについて、お話を伺います。

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連載:EcoVadisに聞く

戸井田 むつみ

サステナビリティ本部コンサルティング部
戸井田 むつみ

アナリストとしてCDPの回答支援、FTSEなどESG評価対応支援を始めとする非財務アドバイザリーを担当。製造メーカー、不動産、金融機関などのアドバイザリーに携わる。

※肩書きは記事公開時点のものです。

西尾 理紗

サステナビリティ本部コンサルティング部
西尾 理紗

アナリストとしてCDP、FTSEなどESG評価のスコアアップ支援を始めとする非財務情報開示アドバイザリーを担当。ESGデータブックやサステナビリティレポート等の発行物制作にも携わる。

※肩書きは記事公開時点のものです。

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