ESGはリアルタイムで評価される時代に⁉

AIが実現する最先端のESG評価「S-Ray®」の真価(後編)

2019.10.24

ESG/SDGs

  • 松﨑 祥悟

    SDGsデザインセンター コンサルタント 松﨑 祥悟

AIが実現する最先端のESG評価「S-Ray®」の真価(後編)

AI(人工知能)を用いて、企業の財務面だけでなく、非財務面も含めたESG評価を行うのが、ドイツのESGリサーチ会社Arabesque S-Ray社(以下アラベスク)の評価ツール「S-Ray®」だ。機械学習やビッグデータを活用した独自のスコアリング・メソドロジーで、企業のESG評価を日々算出している。
AIを導入することでS-Ray®は、これまでアナリストによる1年に1度の更新が基本であったESG評価に、日次評価を可能にするなど革新をもたらしている。企業の公開情報と世界170カ国にわたる3万以上の情報源から、200項目を超えるESGデータを収集・分析し、世界約80カ国、7,200社以上の上場企業に対する評価を行う。
この最先端のESG評価であるS-Ray®の特長や、企業がデータ活用した各種サービスの活用法などについて、アラベスク・アセット・マネジメントのネイサン・アベラ氏と、先日アラベスクと提携、企業へS-Ray®の分析を基にしたESG戦略についてのアドバイスを行うQUICK ESG研究所の中塚一徳氏のお二人に話を聞いた。

>前編はこちら


投資家にわかりやすいページを用意すること

ESG課題にしっかり向き合うことが前提なのはもちろんですが、日本企業が現状でS-Ray®の評価を向上させる方法はありますか。

アベラ 企業の情報開示の状況を調査したWBCSDは7つの大きなサステナビリティフレームワークから4,300のメトリックスをまとめました。このような膨大なデータを基に各企業の分析が行われています。ですから、企業にそれら一つひとつに対応することはもちろんお勧めしません。これまでのお話の繰り返しになりますが、大事なことは企業にとってのマテリアリティを把握することです。どのような課題があるかを認識し、対象となるステークホルダーを整理することが、情報開示においても肝要になってきます。

評価を向上させる可能性につながるテクニカルな面からのヒントもご紹介しましょう。それは情報をどのように開示しているかにかかわってきます。私たちだけでなく、その他の評価指標においても起こることなのですが、掲載しているデータを拾い切れずに分析してしまうことがありえるのです。

せっかく企業が情報を開示しているにもかかわらず、その情報が適切に処理されずに、評価につながっていないということですね。なぜ、そのようなことが起きてしまうのでしょうか。

(左)中塚一徳氏、(右)ネイサン・アベラ 氏

アベラ それは、私たちにとって必要なデータがどこかに隠されていたり、アクセスしづらいところに保存されていたりするからです。たとえば、多くの企業はESGデータをワードやエクセルのデータで管理していますが、統合報告書やサステナビリティ報告書などへレポート化するにあたり、そのデータを図版化したり、PDFにしたりしています。そうなると内容に応じて私たちは画像認識しなければいけなくなります。

また一方でタイムリーな情報開示を心掛けることも大切です。多くの企業はこれまで、年1回報告書を掲載することで、開示責任を果たしていると考えてきています。それでは、対応する市場も1年に1回しかその企業に反応しなくなってしまいます。ESG統合を進めるために、情報開示はより頻繁に行うべきだと考えます。その時には、きちんと裏付けのあるデータとともに開示しなければいけません。

企業が投資家にデータを取得してもらいやすくする方法はありますか。

アベラ まず、企業にできるのは、もっとデータについて定量化することです。さらに簡単なこととしては、あらゆるデータを1枚にまとめてウェブサイトに掲載しておくことです。各ページに分散している細かいESGデータを、一つひとつ探して拾ってもらうのではなく、必要な情報をまとめた1ページを用意しておくのです。もちろん各ステークホルダーにあわせて、背景となる情報も含んだ「ストーリー」を提供することも大切ですが、一方で投資家が活用しやすいページも用意すると、苦労せず情報にたどり着くことができ、評価を上げる可能性を高めます。

中塚 私も必要なデータが1カ所に集まれば、いろいろなステークホルダーに受け入れられるページになると思います。

お二人に話を聞くSDGsデザインセンターの成田(左)と松崎(左から2人目)お二人に話を聞くSDGsデザインセンターの成田(左)と松崎(左から2人目)

アベラ 同じような考えから、一つのレポートが200ページ前後にわたってしまっているのは不要なのではと考えています。読者は、自分がどのようなステークホルダーかによって、読む場所を変えているはずです。企業がきちんとステークホルダーについて把握できていれば、どのようなメッセージが必要かもおのずと見えてきます。想定する相手にあわせてコンテンツは減らすべきで、ステークホルダーごとに情報開示することが大切です。一方で上述のように、一つの場所にあらゆる情報を格納しておくことも有効になってくるのです。

ESGデータ、財務情報や事業戦略はすべて統合していなければいけません。多くのレポートはまだ、ただ一緒にしただけのものです。ESGデータの記載はあるのですが、それが戦略とつながっていなかったりします。本来は統合されていることがカギとなります。すべてのステークホルダーはそれを望んでいるのです。

中塚 そこはその通りだと思いますし、ESGの評価軸というのは投資家のためだけではなく、いろいろなステークホルダーの課題や問題意識が集まったものです。しっかりそれを会社の経営として、戦略として捉えてどのようにマネジメントしていくかが大事になります。

企業のESGを事業戦略に統合するために

最後に、今後の日本企業に向けたメッセージをお願いいたします。

アベラ ヨーロッパをはじめとする欧米の投資家は日本に投資することをとても敏感に考えています。そのような投資家からすると、日本企業も欧米と同じ基準で判断します。そのため、日本企業の皆さまも投資過程、情報開示過程にESGを組み込まければいけなくなっています。日本の市場も欧米にあわせる必要があるのです。ただ、そうすることで日本企業も競争力が高まり、世界と勝負できるようになるはずです。まずはESGを事業の戦略に組み込む段階まで進めることに期待します。

中塚 ESGの関心が日本でも高まっていることは冒頭でお話しした通りです。その中で、ESGの取り組みを強化して情報を開示しようという企業のすそ野が広がりを見せています。しかし、アベラさんの指摘通り、まだまだESG統合が進んでいない点が大きな課題です。また数量的なデータも日本は不足していると感じます。それらを解決すべく、私たちは、日経BPコンサルティングとも協働し、企業のESG情報開示をサポートしています。その中に上述しているアラベスク・アセット・マネジメントの特長を持ったメニューが加わりますので、より企業ごとのいろいろな視点にあわせたサポートができると考えています。

アラベスク日本支店代表の雨宮寛氏(左)も加わり記念撮影

アラベスク日本支店代表の雨宮寛氏(左)も加わり記念撮影

ArabesqueS-Ray ESGリサーチ部アソシエイト
ネイサン・アベラ 氏

現在、S-Rayの新しいスコアとなるSDGsスコアのツールを開発中。S-RayのAI調査・開発チームの役割も担う。アラベスク入社以前はインパクト投資の分野に従事し、またオックスフォード大学およびプリンストン大学で気候科学の研究を行う。インペリアル大学(物理学)卒。

※肩書きは記事公開時点のものです。

QUICK ESG研究所リサーチヘッド
中塚 一徳 氏

1992年QUICK入社。機関投資家向けサービスの企画、開発、研究を担当。ESG研究所では、ESGデータを活用した定量分析やアドバイザリーサービスに従事。年金基金、運用会社等での講演や、みずほ年金レポートなどへの執筆実績。GPIF より受託した「年金積立金管理運用独立行政法人におけるスチュワードシップ責任及びESG 投資のあり方についての調査研究業務」におけるプロジェクトマネージャーを務める。東京理科大学大学院理工学研究科経営工学修士課程修了。

※肩書きは記事公開時点のものです。

SDGsデザインセンター コンサルタント
松﨑 祥悟(まつさき・しょうご)

これまでCSRレポートや統合報告書だけでなく、採用ツール、会社案内などの企業が発信すべき情報をステークホルダーに対応した形でお届けするカスタムメディアの制作に従事。紙、映像、Web、リアルイベントなど媒体ごとの特性も生かし、コミュニケーションを通じた企業の価値向上を支援。SDGsデザインセンター、周年事業センターのコンサルタント。

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