企業ブランド向上をもたらすWebサイトでのブランディング手法

Webサイトでブランドアップするコツ

2019.03.06

コンテンツマーケティング

  • 古賀 雅隆

    マーケティング本部 シニアコンサルタント 古賀 雅隆

Webサイトでブランドアップするコツ
Webサイトでブランドアップするって何をすればいい?
デジタル施策でブランドを向上させるためには、サイト構築とコンテンツ作成のコツがあります。
すてきな動画を作る。それは効果がありそうです。特に5G登場後は引っ張りだこになるかもしれません。
ブランドを通して持たれているキャラクターやイメージにあふれたコンテンツを作る。それもありますよね。BtoC商材では欠かせないでしょう。
しかしもっとも大切なのは、よい体験とともによいイメージを届け、ターゲットのスイートスポットに命中できるコンテキスト(文脈)で、ターゲットが欲しいタイミングで、欲するコンテンツをお届けすることです。ポイントをまとめます。

Webサイトでブランドアップを狙うときは、図のように、ターゲットビジターの直接的体験と間接的体験に対する配慮が大切です。今風に言えば、CX(=Customer eXperience、顧客体験)を向上させると言うのかもしれません。ターゲットとのデジタル接点を通して、よい体験とともに、必要とされる情報や機能を提供するのです。
簡潔に、Webサイトに絞って話を進めます。

因数分解されたWebサイトのブランド力

よい体験とともに、必要な情報を届けることがブランドアップにつながる

直接的体験は、Webサイトを利用する際の体験です。たとえば検索サイトを使って目的のページへ容易にたどり着くことができ、目的のページをストレスなく閲覧できて、欲しい情報も取得でき、利便性の高い機能を利用できることが基本です。さらに、個人情報の漏えいなどを心配せずに問い合わせができて、その後の購入や商談にスムースに進むことができれば、非常によい体験ができます。

もちろん、Webサイトで登録などした場合は、Webサイト以外の企業との接点、店舗や営業窓口などでも同じ満足体験を味わえなければなりません。マルチチャネルでの体験コントロールについての説明は、別の機会に譲るとして、Webサイトに話を絞った場合、Webサイトの使い勝手(ユーザビリティやアクセシビリティ)、SEO(検索エンジン最適化)などが重要なのは、この直接的体験を司る基本要素だからです。

Webサイトのブランド力の一翼を担う直接的体験のイメージ

検索サイトからたどり着けることから始まる直接的体験

腹落ちするコンテンツをスイートスポットにぶつける

一方、ブランドアップを狙ったコンテンツを作成するためには、体験のコントロール以外に、次のふたつのコツを押さえておくといいでしょう。文脈の形成と、時間軸での情報整理です。

第一のコツは文脈の形成です。ターゲットがブランドの「意味」を理解しやすくなるように、イメージを作ってもらうための文脈を用意することです。 第二が、過去、現在、未来を意識したコンテンツです。ひとことで言うと、腹落ちするコンテンツを、ターゲットのスイートスポットに刺さるストーリーで届けることになります。

ひとつずつ説明します。
文脈を考えるとき、押さえておくべきポイントは3つあります。「ブランド・アイデンティティ」、「ブランド・イメージ」、「ブランド・コミュニケーション」です。これは日経BPコンサルティングのブランド・ジャパン企画委員会委員長で、一橋大学大学院教授の阿久津聡先生の考え方に基づいています。

「ブランド・アイデンティティ」は、企業などがブランドのイメージとして持って欲しいと望む「連想」の集まりです。強いブランドの根底には、

  • ブランドのミッション
  • 価値観
  • ビジョン

があります。
これらは、コミュニケーションのカギとなる「ブランドの属性」、「ベネフィット」、「パーソナリティ」と呼んでもいいでしょう。

「ブランド・イメージ」は、顧客が持っている、ブランドを起点とした「連想」の集まりです。連想のつながりが「文脈」を形成します。連想がつながると「意味」を持ってきます。ですから、ブランド・イメージの意味を定めるのは文脈と言い切っても過言ではありません。

「ブランド・コミュニケーション」は、「ブランド・アイデンティティ」と「ブランド・イメージ」を「文脈」でつなぐ行為ととらえてください。顧客やターゲットが、既に持っている知識や、世の中に存在する様々な情報を、文脈としてどう紡ぎあげるかも大切です。

文脈をコンテンツのつながりとして可視化し、サイトのメニュー、リンク構成などによって、ストーリーを作りあげる。この工程により、ブランドの意味やブランディングの方向性が、Webサイトを通じてターゲットに共有されます。

文脈の軸は伝統・継続的な取り組みやSDGs

次に第二のコツです。
「過去」、「現在」、「将来」の時間軸での整理が重要です。
このシリーズコラムの第一回でも、弊社コンサルタントの松﨑が述べているように、優れた取り組みを提示しても、始めたばかりの付け焼刃な内容では、すぐに浅い底を見抜かれます。従来の取り組み、歴史・沿革、ポリシー、実績などを通して、企業文化として根付いている事実を示せないと、信頼を得ることができません。

現在の取り組みは、比較的容易に提示できます。
たとえばSDGsであれば、製造過程、製造ポリシー、材料選定ポリシー、保証内容などをこう変えて、持続可能な開発目標に合わせました、と訴求できるでしょう。しかし、それが、従来から、企業文化として根付いている、ということが明らかであれば、これに優る信頼感はないでしょう。

さらに購入者のメリット、業界・社会に及ぼす影響など、将来に関するビジョンを語ることができれば、期待感はいや増し、すばらしい企業であることが容易に理解されると思います。将来のビジョンを語るのは、経営者の特権ではありません。事業担当者であっても、たとえばSDGsの文脈に沿って、事業紹介のストーリーを築き上げれば、ターゲットに将来への期待感を届けることができるでしょう。

確かな裏付けと、将来を見越していることを語れば、期待感とブランドを高める

背景、現在、影響がブランドを高めることのイメージ

商品・サービス誕生の背景、社会環境、お客様の困りごとにどう答えた結果誕生したのか、など、真摯な姿を情報として届け、お客様の成功にいかに寄り添っていけるのかを示すことでも将来の姿を提示することは可能です。

ブランドアップのためのコンテンツは、単発では成り立ちにくいと思います。文脈の軸を意識し、軸に沿ったストーリーを作ることが大切です。社内、組織内でまとめにくい時はご相談ください。ファシリテーターとして、進捗を早める触媒(カタリスト)として、ご支援いたします。

(古賀雅隆=デジタル本部シニアコンサルタント)

日経BPコンサルティング デジタル本部 シニアコンサルタント
古賀 雅隆

連載:マーケあるある解決法