産業能率大学の調査(2011年)では、日本の職場で孤独を感じる人は、回答者全体の6割を超えています。同調査で「孤独」を感じる理由(複数回答可)として挙げられているのは、主に「自己中心的な人が多い」(35%)、「職場内の関係が希薄」(34%)、「世代間ギャップ」(34%)、「仕事が縦割り」(32%)、「助け合う雰囲気がない」(20%)、「IT化による対話の減少」(11%)といった要因です。
日本企業の社員の多くは、仕事への誇りや職場でのつながりを感じられず、会社の未来への希望も失ってしまっているのではないでしょうか。2018年2月、日経BP総研が開催した「社内コミュニケーション改革セミナー」の事前アンケート結果でも、この傾向が明らかになりました(図1)。
アンケート回答者は、従業員数1000人以上の企業に勤務する人が全体の約6割。役職では部長や課長クラスが全体の5割以上を占めています。彼らがもっとも問題意識を持っているのが「社員のやる気向上/意識改革」、「社員の一体感の醸成」です。このことからは上司と部下の間、さらに部署と部署の間でも円滑なコミュニケーションが取れていない現状が推察できます。
社員と企業のエンゲージメントの高さと企業業績の間には、相関関係があることが明らかになっています。エンゲージメントが高い企業は、社員が仕事に誇りを持ち、企業に貢献しようと行動(仕事)するので、それが業績へと直結します。しかし、日本企業における社員の仕事の意欲や、組織への貢献意欲は世界でも最低水準にあるのです。
社員と企業のエンゲージメントを高めるために必要な要素は次の3つです。「仕事・仕事への誇り、成長の機会」、「職場・同僚や上司との相互理解、相互尊重」、そして「組織・企業の未来への自信、希望」を持つことです。
部下の「本音」を聞いたことがありますか?
働き方改革のもと、プレイングマネジャーでもある上司なら「時間をとって部下とじっくり話す余裕はない」というのが本音かもしれません。しかし、愚直ながらも、上司と部下の信頼関係を取り戻すことが本当の出発点です。あなたの職場では、部下が上司に「本音」や「悩み」をそのまま言うことができる雰囲気があるでしょうか?
「社内コミュニケーション改革セミナー」では、来場者のスマートフォンを活用したリアルタイムアンケートを行いました。来場者がその場で質問に答えたり、スマホで書き込んだ意見をリアルタイムで集計、来場者全員で共有できる仕組みです。
そこで、「会議や打ち合わせでは、率直に意見交換できますか?」(四択)と質問したところ、最も多かったのは「空気を読んで発言するのがコツかな?」という回答で、全体の5割以上になりました。多くの来場者の職場が、孤立した社員が時間を切り売りする無味乾燥な「仕事場」になっているのでは…ということが見えてきます。
「仕事場」を「コミュニティ」へ変えていこう
本音が言い合える職場とは、「安心と信頼」がある組織だということです。これは、グーグルが社内の180のチームを対象に実施した、アリストテレスプロジェクトで実証されています。最高の人材を集めれば最高のチームができるかというと、必ずしもそうではなかったのです。
チームの業績を高めるポイントは、本音が率直に言い合える『心理的安全』があること、メンバー相互の信頼関係があること、組織構造と境界が明快であること、自らの仕事に意義を感じていること、そして仕事の重要性が高いことの5つだと言われています。グーグルの調査から、これらが最も重要な要因だと分かりました。
現実には、部門ごとの縦割りで情報共有がされていない、あるいは効率一辺倒で、ギスギスした雰囲気だという職場も多いのではないでしょうか。
組織の形を大規模な階層構造のピラミッド型「組織」から、自律的な少人数の「チーム」の集合体――「コミュニティ」へと変えていくことが、イノベーションを創出する理想の職場です。
日経BP総研では、一部門全員または支店全員など、大人数が一度に悩みや本音を共有して、共感・共鳴できる全員参加型モチベーション向上プログラムなども手掛けています。全社会議など大きな会議や研修のブレークスルーにも有効です。カスタマイズして実施することももちろん可能です。ぜひ、お声掛けください。
日経BP総研 コミュニケーションラボ
原田 かおり