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ブロックチェーンに強い関心を示す職種、業界はどこか?

2018.03.01

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    日経BP総研 クリーンテック研究所 大久保 聡

ブロックチェーンに強い関心を示す職種、業界はどこか?

「最近、新聞やWebのニュースでよく目にする言葉、ビジネスの場でよく耳にする言葉は何か?」と問われたとき、皆さんはどんな言葉を思い浮かべますか?少し前であればビッグデータ、今であれば人工知能(AI)というところでしょうか。IoTを挙げる方々もいらっしゃるかもしれません。仮想通貨やブロックチェーンといった言葉を挙げる場合もあるでしょう。

そういった言葉をとらえるとき、悩ましいのは、単なるはやり言葉(ここでは「バズワード」としましょう)であるのか、今後のビジネス環境を大きく変えるような「キーワード」であるのかを、どのように見極めるかではないでしょうか。

あまたある「バズワード」の中から、いち早く「キーワード」を見つけ出し、事業の舵を切り、投資のアクセルを踏めば、ライバル企業に先行できます。ただし、見つけるだけでは足りません。AIやIoTといった昨今のキーワードは多様な業種が関わることが多く、従来のバリューチェーンの範疇に収まらない企業間の協業がそこかしこで起こっています。バズワードの中から早期にキーワードを見極め、キーワードの価値を最も高く評価する業界や企業を見つけ出すことができれば、企業戦略としては「向かうところ敵なし」になるはずです。

こうした見極めは、新たなビジネスチャンスを狙うビジネスパーソンや企業にとって腕が試されるところです。そして、常に頭が痛いところでもあります。日経BP総研は、こうした見極めに活用していただける術を持っています。本稿では、その術を少しだけ紹介させてください。

記事閲覧状況から「気になる言葉」のフェーズを推定

日経BP総研が用いる術のキーポイントは、日経BP社が抱える専門記者が執筆する記事と、日経BP社が展開するニュースサイトなどに会員登録いただいている読者の皆さんの閲覧履歴です。専門記者がキャッチした最新情報や本質に迫った詳細情報の記事が、どのような属性(職種や業種、役職など)の読者層に閲覧されているのかを見ると、記事で取り上げられた「言葉」を取り巻くビジネス状況が見えてきます。

例えば、調査対象の言葉(AI、ブロックチェーンなど)に関わる記事を閲覧した読者の分布を属性別に見たとき、実用化が近づくほど、ある傾向が顕著になります。それは、職種の属性にある「研究・開発」の読者比率が低下し、その一方で調査対象の言葉が適用されるであろう分野の読者の比率が高まるというもの。昨今のキーワードはテクノロジー系であり、「研究・開発」の読者比率が相対的に落ちてくるということは、テクノロジーの使い手が興味を持ち始めることを意味しています。つまり、実用化に近づいたといえます。さらにこうした傾向がどのくらい続くかで、一瞬の話題に終わるのか、継続的な話題となってキーワードとなるかが推測できます。

どのような業種での関心度が高いかを見ることで、潜在的な市場の広さや、新た市場創出につなげられる時期かどうかを推定できます。「電気、電子機器」といった特定の業種にとどまらず、「自動車、輸送機器」「機械、重電」といった他のモノづくり系業界でも関心度が高いか、「金融・証券・保険」「不動産」「医療」「エネルギー」などサービス系の業種にまで広がっているかを見ると、調査対象の言葉が関わる潜在的な市場の広さが見えてきます。さらに、関心度がモノづくり系の業界だけでなくサービス系の業界にまで広がっていれば、モノの作り手から使い手までつながり、市場創出の時期が迫っているといえます。

AIに最も注目する職種、業種はどこか?

実例を挙げ、どのような傾向が分かるのかを見てみましょう。まず、人工知能(AI)の例です。下の図1は、「人工知能」「AI」関連のすべての記事に対する読者の閲覧状況を「職種」の属性で調査した結果です。職種の属性の中から、閲覧度合の変化が大きなところ、そしてAIの要素技術開発に関わる「研究・開発」、さらにAIを使ったシステムの開発に関わる「情報処理・情報システム」を載せました。なお、図の縦軸「変化度合」は、2016年10月時点の読者閲覧状況を100としたときの変化を示しています。例えば、「人工知能」「AI」関連の記事を閲覧した全読者のうち特定の職種(研究・開発など)が占める割合が、2016年10月時点から2017年10月で倍増していれば、変化度合は200として表しています。

図1 「人工知能」「AI」関連の全記事に対する読者の閲覧状況
「人工知能」「AI」関連の全記事に対する読者の閲覧状況

上図をみると、2017年3月ごろから「研究・開発」の低下と、AIの使い手に相当する属性の上昇が見られ、AIがキーワードとして急速に浸透しつつある職種は「財務・経理」「建築・土木関連」「総務・人事」ということが分かります。カネとヒトに関わるところ、という感じでしょうか。なお、本稿では詳細の説明は省きますが、属性の「経営者・役員」の上昇が顕著になっていることは、事業検討から投資のフェーズに変わりつつあることを示しているようです。

次に、AIについて「業種」の属性で調査した結果を見てみましょう(図2)。業種の属性の中から、閲覧度合の変化が大きなところ、そしてAIの要素技術やシステムの開発に関わる「情報処理、SI、ソフトウエア」を載せました。

図2 「人工知能」「AI」関連記事に対する業種別閲覧状況
「人工知能」「AI」関連記事に対する業種別閲覧状況

上図を見ると、「旅行」を筆頭に、「飲食店・宿泊」「不動産」「運輸」「建設」「人材サービス」「介護・福祉」といった、人間が作業に直接携わることが多い業種でAIへの関心度が高まってきたことが分かります。AIを使って人間が携わる業務の効率化を図ろうという意欲が強まりつつあるといえます。

最近話題のブロックチェーンではどうか?

AIの調査では、読者の閲覧状況が大きく変動した後の結果を見ました。AIはここ1~2年、新聞やWebニュースを賑わせており、バズワードからキーワードに脱した感があります。それでは、昨今話題になることが多くなった言葉ではどうなっているでしょうか。そうした言葉の代表例として、ブロックチェーンの調査結果を見てみましょう。

図3は、「ブロックチェーン」という言葉がタイトルに入っている記事に対する読者の閲覧状況を「職種」別に見た結果です。前出のAIでの調査結果と同じく、職種の属性の中から、閲覧度合の変化が大きなところと、ブロックチェーンの要素技術開発に関わる「研究・開発」、そしてブロックチェーンを使ったシステムの開発に関わる「情報処理・情報システム」を載せています。

図3 「ブロックチェーン」関連の記事に対する職種別の閲覧状況
「ブロックチェーン」関連の記事に対する職種別の閲覧状況

この図をみると、2017年秋ごろから「研究・開発」と「情報処理・情報システム」の低下が見られ、同時にブロックチェーンの使い手に相当する属性での上昇が見られます。中でも、「専門職(医療関連)」におけるブロックチェーンへの関心度の高まりは顕著です。カルテや診断データといった個人情報管理に、ブロックチェーンを活用しようという姿勢が強まってきたように見えます。なお、「経営者・役員」の変化度合は緩やかであり、まだ投資のフェーズには至っていないようです。

次に、ブロックチェーンについて「業種」の属性で調査した結果を見てみます。ここでも、業種の属性の中から閲覧度合の変化が大きなところ、そしてAIの要素技術やシステムの開発に関わる「情報処理、SI、ソフトウエア」を入れています。

図4 「ブロックチェーン」関連記事に対する業種別閲覧状況
「ブロックチェーン」関連記事に対する業種別閲覧状況

上図を見ると、ブロックチェーンに対する「食品、医薬、化粧品」と「医療」の業種の注目度が急速に高まりつつあることが分かります。食の安全や、医療関連データ管理のセキュリティーを高めることに、ブロックチェーンを活用しようとする動きが出てきたようです。

現在、ブロックチェーンの最大の活用先は仮想通貨です。上図には、仮想通貨の影響を大きく受けそうな業種「金融・証券・保険」の変化度合も入れています。ただ、「金融・証券・保険」での数値の変動はほとんどありませんでした。「金融・証券・保険」業界のビジネスパーソンにとって、「ブロックチェーン」という言葉は既に目新しい言葉ではなくなったことを示しているといえるでしょう。

今回、ほんの一部ですが、日経BP総研が持つキーワードを見極める術を紹介しました。AIやブロックチェーン以外の気になる言葉についても、そして今回紹介しました以外の職種や業種などでも調査しています。さらに、他の分析を加えた詳細な調査も用意しています。トレンドをつかみ、新規市場を狙おうと考えているとき、ぜひ日経BP総研にお声掛けください。

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大久保 聡

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