研究員ブログ

リアル開発会議に見る、新事業成功の法則

2018.02.15

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    日経BP総研 クリーンテック研究所 中道 理

各分野で得意技を持つ異業種企業が一緒になって新規事業を作り出す。そんなプラットフォームを提供しているのがリアル開発会議です。日経BP総研側から開発するテーマを提案。これに応募いただいた企業で、一緒に開発を進めるスタイルを採っています。

最近のテーマの一つに、「100kgドローン」があります(写真)。100kgもの大重量を運べるドローンを作り、これを使ったビジネスを考えるというものです。この呼びかけに対し、無人機を開発した技術者や、ドローンを開発しているメーカー、情報システム会社などが集まりました。幸運だったのは、木材店が参加してきたことです。木材店とは、山主から山を借り上げ、その山の木を切って、市場に売るという商売をしている業者です。この木材店が、山の深いところ(奥山)にある価値の高い木だけを切って販売したいというニーズを持っており、大重量を運べるドローンで、このニーズを何とか満たせないかと考え、プロジェクトに参加してきたのです。この木材店のニーズを解決するために、今、業種を超えたコラボレーションが始まっています。

写真 「100kg可搬ドローン」プロジェクトの募集時のイメージ画像

「100kg可搬ドローン」プロジェクトの募集時のイメージ画像

ドロ沼にはまる前に撤退可能

このように、自社だけで検討していては絶対に分からない社外の人々からの情報と、集まってきた企業のリソースを活用できるのがリアル開発会議です。リアル開発会議では、これまで25のテーマを発表し、プロジェクトを進めてきました。もちろん、プロジェクトの進捗はさまざまです。スムーズに進んでいるものがある一方で、ニーズが別にあることが分かり、テーマが変わってしまった、あるいは明確なニーズが見えなかった、もっと市場の成熟が必要だった、といったさまざまな理由で先に進まなかったものもあります。

リアル開発会議において、大事にしているルールの一つに、うまくいかないと思ったものについては、さっさとあきらめるということがあります。「そんな無責任な!」と言われそうですが、最初の段階でうまくいかない、何かおかしいと感じたものは、いくら挽回しようとがんばっても、たいていの場合うまくいかないからです。

企業内で新プロジェクトを進める場合、企画を通し、予算をつけてもらうと、後戻りは難しいでしょう。さんざん苦労して予算をつけてもらったのに、やめるとなると、さて経営陣をどう説得していいのか。大変な苦労をします。やめると言えず、言い訳をしながら、ずるずると死の行進を進めることは少なくありません。

社外の企業とプロジェクトを進めると、あっさりとやめられます。リアル開発会議では、何か問題があれば、みんなで話し合って、次のステップを決めるというルールで運営しています。プロジェクトを進めてきて、うまく行かないと分かったとき、「(プロジェクトに参加している)A社の担当社もB社の担当者もうまく行かないと言っている」、もっといえば「リアル開発会議事務局があきらめようと言っている」という具合に説明すればよく、説明が楽になります。

「強いニーズを持つ企業」を求む

では、うまく進んでいくプロジェクトはどうかというと、「おもしろいね」「うちも一肌脱ぐよ」といった具合に、どんどん前に進みます。なぜそれがうまく進むのか、要素を挙げていけばあることはあるのですが、これをすれば必ず成功するという方程式らしいものはまだ見つかっていません。明らかなのは、プロジェクトを進める過程で、明確なニーズを持っている企業が現れると進めやすいということです。先の100kgドローンは進行中のプロジェクトですが、山から木を下すという明確なニーズを持った木材店が現れたことで、進むべき道が見えました。もちろん、プロジェクトの最初の段階では、明確なニーズを持った企業はチームにおらず、プロジェクトを動かし、外部にアナウンスしているうちに、そうした企業が現れるケースもあります。

リアル開発会議では、今後も、さまざまな業種・業態に目を配り、ニーズの種を見つけ、これをテーマとして募集することで、異業種の連携によるニーズとシーズのマッチングを進めていく所存です。

日経BP総研 クリーンテック研究所
中道 理

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