志願者数が大幅増!千葉工業大学の地道な広報努力とは?

2017.01.22

大学広報

  • カスタムメディア本部第二編集部 兼 周年事業ラボ 熊谷 勇一

今年も受験シーズン到来。志願者数では、早稲田大学が長年維持し続けた首位の座を明け渡して以来、明治大学、近畿大学が激しく競い合ってきました。そんな中、志願者数上位校のうち近年最もその数を増やしたのは、単科大学である千葉工業大学。その要因は、広報の基本を地道に実施してきたことと、充実した教育内容をアピールしたことでした。

2018年問題——。18歳人口が2018年頃から減り、大学進学者も減っていくこの問題を目前に控えた現在、大学は生き残りをかけて激しい競争を繰り広げています。志願者数を見ると、2009年まで11年連続で首位だった早稲田大学が2010年にその地位を明治大学に明け渡し、その後2013年まで明治が連続首位に。2014年から2016年までは、関西の総合大学である近畿大学が連続して首位になり、毎年どこが1位になってもおかしくない状況が続いています。

そんな中、単科大学でありながら近年急速に志願者を増やし、2016年には長年顔ぶれが変わらなかった上位10位の間に入り込んで9位となった大学があります。千葉県習志野市にある千葉工業大学(千葉工大)です。

千葉県習志野市にある千葉工業大学

千葉県習志野市にある千葉工業大学

志願者急増の要因としてまず挙げられるのが、工学部の再編です。2016年に工学部、創造工学部、先進工学部の3学部に改組しました。「改組の目的は2つあります」と語るのは、同大入試広報部長の日下部聡氏です。

1つ目は、1学年の学生数を減らし教育効果を高めるため。以前の工学部では、学科によっては1学年300人を超え、きめ細かい教育がしづらい面がありました。2つ目は、学生の進路である産業界が、学生により高い専門性を求めるようになったことに対応するためです。

「この2つの目的のために再編した結果、千葉工大の教育・研究内容と進路という将来像が学生や保護者に伝わりやすくなり、志願者増につながったと思われます。さらに、学科単位ではなく学部単位の大規模な再編だったので、注目を浴びたのでしょう。近年では、小規模な学部改変では志願者は増やせませんから」(日下部氏)

ロボットと宇宙の研究を広くアピール

千葉工大の教育・研究活動で有名な「ロボット」と「宇宙」を効果的に広報したことも、志願者増の要因の1つです。同大のロボット研究は2003年設立の「未来ロボット技術研究センター」に始まり、その後2006年にロボット研究に関する学科が設置されました。「当時の理事長が古田貴之教授(現・未来ロボット技術研究センター所長)と出会い、経済産業省が発表した『日本の成長戦略』にロボットが入っていたこともあり、『これからはロボットの時代。千葉工大の魅力の1つとすべきだ』と判断したのです」(日下部氏)。特に有名なのは東京電力福島第一原子力発電所事故で活躍したレスキューロボットや、人型ロボット。大学全体のブランディングの観点からも、ロボット研究は最も先端的かつ魅力的で、同大の強みと言えるでしょう。

ロボット研究の例:災害対応ロボットの櫻弐號(さくらにごう)

ロボット研究の例:災害対応ロボットの櫻弐號(さくらにごう)

もう1つの先端的かつ魅力的な教育・分野は、惑星探査など宇宙関連で、これも政府の成長戦略に則っています。「近い将来に注目を浴びそうな分野を教育・研究内容として取り込む際、著名な研究者を招へいする方法がよく採られます。本学では研究者一人だけではなく、研究チーム単位でお声掛けしています。応じてもらいやすく、研究成果もすぐ出るのです」と日下部氏は語ります。

宇宙に関する研究例:ISS(国際宇宙ステーション)に設置されたMETEOカメラ(左)とそこから撮った映像(右)宇宙に関する研究例:ISS(国際宇宙ステーション)に設置されたMETEOカメラ(左)とそこから撮った映像(右)

リリースを工夫し、メディア掲載数が8倍に

優れた教育・研究をしていても、学生や保護者に知ってもらえなければいけません。そこで日下部氏が工夫しているのは、メディア向けのプレスリリースの出し方。「『尖った』研究成果を中心に、プレスリリースを出しています。例えば『世界初』『日本初』といった卓越した成果を中心にしています。この結果、メディア掲載回数は従来の8倍になりました。特にテレビ掲載が増えましたが、地方ではテレビの影響力が大きいですね」。

広報媒体としては、漫画『宇宙兄弟』(小山宙哉作、講談社)とコラボレーションした大学案内もあります。学内の宇宙に関する研究と関連のある作品で、主人公たちを表紙デザインに採用したところ好評を得て、8万部発行の予定を11万部にまで増やしました。

派手な施策が並んでいるように見えるかもしれませんが、「より良い教育をするための組織改編とその情報発信」「研究活動の効果的なアピール」「大学案内という情報収集の基本となる媒体の改善」という、広報として当然の活動を地道に実施してきたことが志願者増につながっていると言えるでしょう。

漫画『宇宙兄弟』とコラボレーションした大学案内漫画『宇宙兄弟』とコラボレーションした大学案内

留年率、退学率を下げて評判が口コミで広がる

工学部再編と分かりやすい広報のほかに志願者急増の理由として日下部氏が挙げるのが、「留年率と退学率の大幅な改善」です。「千葉工大ではある時期まで留年率が高く、それに伴って退学率も高かったのです。しかし教職員とともに努力することによって留年率と退学率の低下を実現し、その評判が口コミで広まりました。留年率や退学率が高いと、高校の先生が生徒や保護者に志願を勧めてくれないうえ、悪評が立ってしまいますから」。上位校なら留年率や退学率が高くても「厳格な成績評価を実現している」と判断されますが、中堅校以下では「教育方法に問題があるのでは」というイメージを持たれてしまいがちなのです。

理工系の学問は、文系と比べて「積み上げ式」の性格が強いこともあります。順序立てて学んでいく必要があり、その過程でよく理解していない科目があると、次以降の科目も理解できなくなってしまいがち。そうなると、留年や退学に結び付きやすくなってしまいます。それを改善すべく、テストで及第点が取れなくてもその後補習をして追試験を実施するなど、学生が理解するまで丁寧に教える努力をここ数年間続けてきました。

2018年問題では、偏差値が高い大学ほど人気を保ち、低い大学から志願者が減っていくという流れは変わらないでしょう。しかし志願者が大幅に増えたからといって、偏差値が大幅に上がるわけではありません。日下部氏は「そもそも、偏差値だけで決められている大学の序列をなんとか崩したい」と言います。偏差値以外の価値をどう認識してもらうかが、今後の千葉工大の広報のポイントになるでしょう。

カスタムメディア本部第二編集部 兼 周年事業ラボ
熊谷 勇一

中央大学文学部哲学科卒業。その後、現在これだけ盛り上がるとは思わずに、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程でAI(人工知能)の研究をして修了。2006年に入社して以来、大学や研究機関のメディア制作に携わっている。共著に『自校史ブックス 大正大学』(弊社刊)がある。

※肩書きは記事公開時点のものです。

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