クライアントの声 豊橋技術科学大学

注目される豊橋技科大の研究力 書籍、イベント、雑誌広告による戦略的広報が奏功

豊橋技術科学大学の研究力が注目されている。世界大学ランキング1位の米カリフォリニア工科大学の下條信輔ボルチモア冠教授と「脳とこころ」について共同研究室を開設、日本マイクロソフトなどと「多言語リアルタイム翻訳の実用化」に取り組むなどが話題となっている。豊橋技科大の研究力が注目される理由は何か、副学長(研究力強化担当)の原邦彦特定教授に話を聞いた。

豊橋技術科学大学は、全国で22機関しか支援されていない文部科学省の平成25年度研究大学強化促進事業に選定されました。

原 邦彦原 邦彦 氏
国立大学法人豊橋技術科学大学
特定教授
副学長(研究力強化担当)
技術科学イノベーション研究機構副機構長
研究推進アドミニストレーションセンター(RAC)センター長
RAC研究戦略室長、シニアURA(リサーチアドミニストレーター)

原副学長 豊橋技科大は、これまでに21世紀COEやグローバルCOEプログラムに採択され、その発展として「エレクトロニクス先端融合研究所(EIIRIS)」を設立したことなどから、研究力を高く評価されています。また、約20年間取り組んできた産学官連携などの実績も加味されて、研究大学として選定されたのだと思います。

vol01_img003.jpgエレクトロニクス先端融合研究所(EIIRIS)

 

事業の実現構想として、どのようなことを計画したのですか。

原副学長 単純にこれまでの取り組みの延長や数値目標の実現だけではなく、豊橋技科大独自の施策も併せて盛り込みました。学内に「研究推進アドミニストレーションセンター(RAC)」を設置して、あらためて「研究力とは何か」を根本から見直しました。研究力とは、以下のいくつかのチカラを合わせた総合力ではないでしょうか。

  • ① よいテーマを見つけるチカラ
  • ② 世界の仲間たち、資金、設備を集めるチカラ
  • ③ 価値をつくり出すチカラ
  • ④ 世界に情報発信できるチカラ
  • ⑤ 人を育てるチカラ
  • ⑥ 国際社会に貢献し、社会から信頼されるチカラ

よい研究テーマを見つけるには、ヒト、モノ、お金を組織で集める必要があります。その際に豊橋技科大が取り組んでいることを、きちんと広く提示できなければなりません。分かりやすく言えば「地方の大学から全国区の大学」になることです。

著名な研究者の講義を書籍化し、ブランドイメージを向上

原副学長 そのために、前任の部署「テーラーメイド・バトンゾーン教育推進室」で、ノーベル賞級の世界的に活躍されている研究者や、産業界で活躍されているトップリーダーの方々を講師としてお招きする一連の講義シリーズを企画しました。講師の方々には学内の研究施設や研究チームを見学いただく機会も設け、豊橋技科大の研究力をより深くご理解いただいています。そして、著名人の講義内容を集めた講義録を一般書籍として発行することを日経BPコンサルティングにお願いしました。

書籍実績

その際に弊社にお声がけいただきありがとうございました。当時、原先生は技術と経営に明るい編集者がいる出版社をお探しでした。豊橋技科大さんとは、グローバルCOEの成果をまとめたムックを発行したことがあり、その実績を評価していただいたのだと思います。

原副学長 講義録の書籍の出版は、豊橋技科大のブランド向上にとても効果があり、いくつかの大学から「この企画はすごいね」という反響が来ました。例えば、近隣の大学の学長先生から「豊橋技科大は、多くのノーベル賞級の研究者が講義に行くに値する大学なのですね」と、かなり高い評価を受けました。

この講義シリーズは好循環を生み、科学技術政策を担う「内閣府総合科学技術・イノベーション会議」の議員の方々、科学技術関係のファンド(予算)の配分を担う「日本学術振興会(JSPS)」や「科学技術振興機構(JST)」の役員の方々を講師としてお招きすることにつながりました。

ノーベル賞受章者としては、白川英樹先生(2000年化学賞)、益川敏英先生(2008年物理学賞)、大村智先生(2015年生理学・医学賞)が講義をされています。大村先生の業績が、ご自身の言葉で語られた文章は珍しく、豊橋技科大の書籍は価値があると思います。

そのほか、日本国際賞、文化勲章などを受賞したノーベル賞級研究者の方々の講義は多数収録されていますし、トヨタ自動車の張富士夫会長(役職は当時)らの産業界のリーダーや研究開発部門のトップたちの講義も収録されています。

研究力強化シンポジウムを開催

原副学長 講義を書籍化する企画が、豊橋技科大のブランドを全国区にした気がしています。しかし、研究力強化のためには、さらにブランドを広める必要がありました。研究者個人のレベルでは、インパクトが高い学術誌に論文を投稿して、採択、掲載される努力をしています。その面では世界で注目されている研究が数多くあるのは確かです。しかし、それはある学術領域での狭い認知でしかありません。

豊橋技科大が掲げている「異分野融合研究」を進める上では、他の学術分野の研究者にも訴求する必要がありますし、大学の研究に興味を持っている産業界の人たちにも訴求する必要があると考えました。

そこで、豊橋技科大の研究力をアピールするシンポジウムを開催することを考えたのです。2014年に東京で、2015年には豊橋で開催しました。そして、2016年1月に東京で開催したシンポジウムでは、研究大学強化促進事業に選定されてから温めてきた研究力強化の施策を発表できるタイミングが来たのです。それは、今の世の中が求めている研究テーマの追求でした。

先取りした研究領域を目利きして世界トップクラスの研究者と協働

先端(融合)共同研究室「こころの認知脳科学研究施設」 左から、米カリフォルニア工科大学 下條信輔ボルチモア冠教授、豊橋技術科学大学 中内茂樹教授、豊橋技術科学大学 北﨑充晃准教授先端(融合)共同研究室「こころの認知脳科学研究施設」
左から、米カリフォルニア工科大学 下條信輔ボルチモア冠教授、豊橋技術科学大学 中内茂樹教授、豊橋技術科学大学 北﨑充晃准教授

原副学長 現在は人工知能の研究開発がブームですが、豊橋技科大には人工知能を専門とする研究者がいませんでした。ただ、人工知能の機能を既存の機器に組み込む応用の研究をすることで本学の特色を出すことはできます。

しかし私は、多くの人たちが「そうだね」と言う研究は既に終わってしまったテーマではないかと思ったのです。多くの人たちが「本当かな」と疑問を呈する研究テーマを考えるのが大学の使命だと思うのです。そこで、私は人工知能の次に来るテーマは何かと考えたのです。それは、ずばり「こころ」ではないかと思いました。新しいフロンティアを考えるなら、「こころ」に軸足に置いたシステムを考えることが必要なのではないでしょうか。

そこで、研究人材の弱点を補うために、こころの研究では世界トップクラスの米カリフォルニア工科大学(Caltech)の下條信輔ボルチモア冠教授と「協働」する共同研究ラボラトリーを2015年7月に設置しました。単なる共同では問題意識の共有にとどまってしまいがちですが、Caltechの下條研究室には専任の教員(研究員)を豊橋技科大から派遣するとともに、豊橋技科大には共同研究専用の研究施設を設け、本格的に協働しています。

この件で下條先生に取材した際に、「当初豊橋技科大から共同研究のお誘いがあったときには、文科省へ提出する報告書のためのアリバイ工作かと思いました。しかし、専任の教員(研究員)を採用し、学生の指導もしながら研究に取り組める環境を用意していただくことを知って、豊橋技科大の本気度が分かりました」とおっしゃっていました。具体的な研究テーマ設定と研究環境が充実していることが他大学と比べて魅力的だったようです。

大学案内よりも注目される研究力紹介冊子を作製


シンポジウム「未来への挑戦 新たなステージに立つ」 (2016年1月21日、東京)シンポジウム「未来への挑戦 新たなステージに立つ」
(2016年1月21日、東京)

原副学長 共同研究ラボラトリーの企画は、まさに研究大学強化促進事業の中で大きな施策です。2016年1月開催のシンポジウムではこの点に話題を絞りました。このような戦略的な取り組みとそれを広くお知らせするためにどうしたらよいのかを考えた時、東京で開催することもあり、豊橋技科大ブランドの浸透にこれまでにお世話になった日経BPコンサルティングに依頼しようと思いました。

総合司会者の手配やポスター会場の設営など、シンポジウム当日の運営ノウハウはもちろん、日経BPコンサルティングからは、(1)日経ビジネスや日経ビジネスオンライン・メールに開催告知を掲載し、読者層である産業界のリーダーに訴求すること、(2)豊橋技科大の研究力を分かりやすく紹介する冊子を作製してシンポジウム当日に配布すること、などの提案をいただきました。

開催告知、当日の運営、冊子作製、記録DVD作製を一貫して提案させていただきました。シンポジウム参加者を募る開催告知に力を入れることで、豊橋技科大ブランドを広めることにしました。また、冊子は、シンポジウム当日の参考になるだけでなく、参加していなくても豊橋技科大の研究力が分かるよう、雑誌のように読みやすく編集したことが特徴です。

原副学長 日経BPコンサルティングに任せたことによって、結果は非常によい反響がありました。特に冊子については、想定外の効果がありました。産学連携で企業を訪問する際に大学案内と一緒に冊子を持参して社長や役員クラスの方々に見ていただくのですが、20ページでできた冊子を真っ先に手に取られて「すごいですね。このようなことに取り組んでいたとは知りませんでした」とおっしゃるのです。ほとんどの訪問先で、同じような反応をされます。

ブランド認知が全国に広がり、教員に自信も

原副学長 豊橋技科大のブランド認知を全国区にするという約20年間にわたる取り組みは、ようやく実が結んできたと感じます。それによって、これまで注目されていなかった教員の人たちが自信を持ち始めています。
限られた予算内で最大限の効果を発揮する企画を提案していただいた日経BPコンサルティングが果たされた役割は非常に大きいと思っています。

お世辞や誇張ではなく、結果に大変満足しています。

著名な研究者や企業トップリーダーによる講義シリーズや、先端共同研究ラボラトリーの設置など、豊橋技科大の取り組みがあってこその企画提案であり、私たちはその内容とよさに、いち早く気づいたと思っています。

日本マイクロソフト、ブロードバンドタワーとの三者合同記者会見日本マイクロソフト、ブロードバンドタワーとの三者合同記者会見「2020年医にけたAI・機械学習における多言語コミュニケーションの実現」
左から、豊橋技術科学大学 井佐原均教授、豊橋技術科学大学 原邦彦副学長、日本マイクロソフト 榊原彰執行役CTO、ブロードバンドタワー 藤原宏会長兼社長、エーアイスクエア 石田正樹代表取締役、日本マイクロソフト技術統括室 田丸健三郎業務執行役員NTO

原副学長 シンポジウムのタイトルを「未来への挑戦」として、サブタイトルは「新たなステージに立つ」としました。まさに開学40年を迎えて、最近の豊橋技科大は卓越したステージにステップアップしたと感じています。

2016年4月に、既存の研究所やリサーチセンター、共同研究ラボラトリーなどのプロジェクト的な研究を束ねる研究組織「技術科学イノベーション研究機構」をつくりました。学内から多くのプロジェクト研究の応募があり、2016年度は15のプロジェクトを採択しました。カルテックの下條教授のほかに、米マサチーセッツ工科大学(MIT)のキャロライン・ロス教授、産業技術総合研究所と先端(融合)共同研究室を設置しています。

また、先端融合やイノベーション(創発)の研究開発に取り組むだけでなく、地元や社会生活への貢献も考慮した「社会システム研究部門」をつくりました。東海地震に対応する災害検知や防災情報共有システムの実装、愛知県東三河地域の新たな農業振興方策の策定なども盛り込んでいます。

さらに本学は、2016年6月21日に、日本マイクロソフト、ブロードバンドタワー、本学の三者が「AI・機械学習による多言語コミュニケーションの実現に向けて協業」することを発表しました。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催時までに、海外からの来訪者に対してリアルタイム翻訳ができることを目指しています。これも科学技術イノベーション研究機構のプロジェクトの一つです。

豊橋技科大は、卓越した研究組織づくりと研究テーマ設定に取り組み、それを訴求することで、研究力強化のよい循環が回っていることが分かりました。

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原邦彦(はら・くにひこ)氏

学歴・学位
1969年 3月 名古屋大学工学部卒業
1984年 7月 工学博士(名古屋大学)

職歴
1969年 4月 日本電装入社
1998年 6月 デンソー取締役就任
1998年 7月 デンソー基礎研究所長
2002年 6月 日本自動車部品総合研究所専務取締役就任
2005年 6月 コンポン研究所常務取締役就任
2007年 6月 コンポン研究所取締役副所長就任
2010年 6月 コンポン研究所取締役副所長退任、顧問就任
2010年 7月 豊橋技術科学大学特命教授
2014年 4月 豊橋技術科学大学特定教授・学長特別補佐
2016年 4月 豊橋技術科学大学特定教授・副学長(研究力強化担当)

主な公職
2007年 4月 文部科学省高等教育局ものづくり技術者育成支援事業評価委員
2012年11月 愛知県幸田町マスタープラン策定委員
2014年 1月 NEDO分野横断的公募事業ピアレビュア
2016年 4月 科学技術交流財団理事

所属学協会・団体
応用物理学会 (正員)、日本化学会 (正員)、電気学会(正員)、自動車技術会 (正員)、日本工学アカデミー(正員)

※肩書きは記事公開時点のものです。

【書籍】技術を生かすグローバルリーダー育成の教科書
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「RAC」

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