【体験リポート】大学リスキリング講座 東京理科大学編

ビジネスパーソン向け講座、マネジメント(ベース領域)、デジタル戦略(情報領域)を受けてみた

  • コンテンツ本部ソリューション3部 兼 マーケティング本部ビジネスアーキテクト部 兼 ブランド本部周年事業・デザインセンター コンサルタント 脇山 誠司

近年リスキリングが注目されており、大学が開催する社会人向けのリスキリング講座も誕生しています。東京理科大学「オープンカレッジ」の講座を実際に受講した体験を紹介しながら、大学のリスキリング講座のメリット、注意点を明らかにしていきます。

オープンカレッジのDX講座に申し込む

東京理科大学では、「オープンカレッジ」と呼ばれる一般の方を対象とした講座を提供しています。その主な2つのタイプとして、ビジネス講座と一般教養講座があります。

ビジネス講座では、マネジメントや人事管理、経営戦略、財務知識といったビジネスの現場で活用できる知識を身につけられる講座が多く開催されています。特に昨今の状況にあわせて、デジタルや情報などの分野の講座が多いのも理工系大学ならではの特徴です。主にオンラインで平日夜間に開講されているため、社会人の方でも受講しやすいと思います。講座の回数は2回から4回が主流で、受講料は1万円から2万円程度です。

一般教養講座では、ライフサイエンスや語学など社会人にとって有用な教養、さらには親子でも楽しむことができる実験講座など、幅広いジャンルの講座が用意されています。数学や科学に関するものも多くあり、理工系の大学らしい趣が感じられます。

社会人のリスキリングとして、ビジネススキル関連やデジタルトランスフォーメーション(DX)関連などの講座が充実

今回、受講したのは「いまさら聞けないデジタルトランスフォーメーション(DX)超入門」と「実践的な知恵―創造的思考篇」の2つ。リスキリングにおいて人気が高いDX関連の講座を選びました。DXというと、デジタル技術を使って業務改善をするというイメージが強いですが、本来のDXは経営の在り方や事業そのものをトランスフォーメーションして、新たな価値を生み出し競争力を高めることです。

今回選んだ2つの講座は、DXを推進するために必要な基礎的な知識や知恵を身につけることを目的とした講座です。

受講講座1

「いまさら聞けないデジタルトランスフォーメーション(DX)超入門 DXの本質を理解し、自社での活用を考える」

<講座概要>
DXとは何なのかという、DXにまつわるAI・ビッグデータ・IoT・5Gなどのキーワードをもとに実際のビジネスモデルや私たちの生活がDXにより一変した事例を紹介。
用語の理解だけでなくその目的、構成要素、変革のステップを同時に学ぶことで、自社の現在と将来の取り組みや方向づけの検討ができるようになることを目指す。

講義時間:90分(18:30-20:00)、全3回、オンライン形式
講師:株式会社ロードフロンティア 代表取締役 並木 将央 氏

受講講座2

「実践的な知恵―創造的思考篇 発見を促進し、さまざまなアイディアを生成、実行するための思考習慣を鍛える」

<講座概要>
創造的な製品やサービスの開発は、天才的“ひらめき”だけでなく、仮説の設定・検証・解釈から発見を導いたり、効果的な対話の中から、アイディアを創発すること、導いたアイディアを実行に移す上で役立つフレームワークの活用によって実現される。講座では学習科学に基づいた個人の事前学習と授業での演習を用いて、創造的思考力を構成する思考習慣や基礎概念を学ぶ。

講義時間:90分(19:00-20:30)、全3回、オンライン形式
講師:AMS合同会社 代表 山本 秀樹 氏

受講を申し込むと、オンライン講義のURLと講義用の資料PDFが送られてきました。このPDFには「講義が始まる前に一読し、予習課題を終えておく必要がある」という通知も添えられていました。

そして講義当日、Zoomを使って接続。一方的な講義形式の授業になると予想していたのですが、実際はそうではありませんでした。講師と受講者間でインタラクティブなやり取りがあり、シンプルな例題を用いて受講者へ一問一答形式で問いを投げかけることで考えさせる場面、また時には受講者同士でのディスカッションの場も設けられていました。カメラオンで互いの表情も見ながら積極的に参加することで理解が深まる機会もあり、オンデマンド配信とは違う、リアルタイムの講義がそこにはありました。

小グループでのディスカッションも。インタラクティブな講義

「いまさら聞けないデジタルトランスフォーメーション(DX)超入門」講座の講義は全3回で、講義内容はDXと既存のBPRの違い、DXとは経営の在り方そのものを変えること、DXを推進するための方法、といったことが解説されました。

講義では、日本企業はDXに対して認識を間違えやすいと強調されました。「守りのDX」という言葉が近年出てきましたが、これは業務プロセスの改善にすぎず、DXとは企業が顧客に提供する価値そのものを変革させるものであり、本質的な意味でDXには該当しません。

また企業でのDXの取り組みが遅れている現状や、少子高齢化が進む社会においてDXで生産性を高めていかないと日本の経済力が低下し国際競争力がなくなってしまうこと、日本がいかに世界から取り残されているかなど、歴史的背景やさまざまなデータなども紹介しながら現状の日本企業に対して警鐘を鳴らしました。「皆さんがDX人材となり社会をけん引していってほしい」と講師は講義を締めくくりました。

講義は定刻に終了しますが、質問のある受講者に講師は納得いくまで説明してくれます。質問者が毎回複数人いましたが、それによる議論の深まりと満足感もこの講義の特徴の一つでした。

2つ目の「実践的な知恵―創造的思考篇」は、社会人がビジネスで必要となる思考法を学ぶという講座で、こちらも講義は全3回でした。

講義内容は、新しいアイディアや発見を促進する上で役立つ思考習慣、ブレーンストーミングやアイディアを創発する思考法、アイディアを実行・検証する際に役立つフレームワークの要点を学ぶ、というものです。例えば、仮説に基づいた調査を実施する「仮説演繹(えんえき)法」、可視化を促すための実験(モデル)の種類やその活用方法、などについて解説されました。

配布された講義資料には毎回課題が出されていて、その課題に対して小グループでディスカッションすることが何度もありました。アイディアを実現するためのフレームワークの紹介や、観察をもとにアイディアを生み出す手法の「デザイン思考」の実践的な方法についての解説も行われました。

90分間の講義の中で、多岐にわたる内容を深く理解できるよう解説がなされ、また受講者同士のディスカッションが活発だったため、講義の終了時間があっという間にやってくる感覚になりました。

受講者はおおよそ20人で、年齢層は40代が多かったようです。色々な方々とお話しする機会もあったのですが、金融業から製造業まで、さまざまな職種の方々が参加されていました。オンライン開催ということもあり、全国各地の方、さらには外国からの参加者もいて、講義冒頭では硬い表情の受講者たちでしたが参加地域に関する雑談で場が和み、オンラインでも議論しやすい空間がつくられたように感じました。

受講者に聞いた「受講動機」

【DX超入門】講座

・職場でDX推進を期待されており、まずDXを知りたいと思った(40代、課長クラス)
・息子が東京理科大に通っていて、オープンカレッジでDXのことを知りたかった(40代、主婦)
・以前受講した並木先生の講義が分かりやすく、興味のあるDXを受講した(50代、課長クラス)
・常識として把握しておくため(40代、主任クラス)

【実践的な知恵―創造的思考篇】講座

・企画系の部署なので、新しいアイディアを発掘したり、取りまとめる知識や手法を身につけたい(30代、主任クラス)
・価値創造、イノベーションの業務をしているため(40代、課長クラス)
・戦略的思考力の強化として上司から推薦された講座(30代)
・情報化で膨大な情報に溺れないよう判断する能力を身につけたい(30代)

受講者に聞いた「受講後の感想」

【DX超入門】講座

・DXの実現に必要なことを体系的に学ぶことができ、自社の課題を発見できた(30代)
・DXを業務効率化と競争力強化の2軸で整理することで、DXの目的について理解が深まった(40代)
・日本でDXが進まない理由や、DXが必要な事業なのか判断軸を得られた(20代)
・受講者の質問に対する先生の回答が鋭く率直なアドバイスが、面白く有益だった(40代)

【実践的な知恵―創造的思考篇】講座

・何かスゴイものを自分の頭から生み出さなければならないと強迫観念を感じていたが、今後はリラックスして考えられそう(40代)
・講座で学んだ思考法を仕事や日常で取り入れながら、思考の訓練をしていきたい(30代)

学びの第一歩としてオープンカレッジ活用はアリ

体験した講座の内容は実践的であり、企業が抱えている問題点など生の話を聞くことができました。これは独学では難しく、大学の講座を受講するメリットだろうと感じました。

「DX超入門」講座では、過去から現在の社会と企業経営の変化を追い、いまのビジネスモデルが未来に通用するのかを起点に、DXの必要性とDX実現に必要な要素、考え方を学ぶことができました。「実践的な知恵―創造的思考篇」講座では、問題解決策を考える上で役立つ基礎概念、思考法を学びました。講義後も思考の訓練を重ねることで、課題解決に必要な情報を整理する力、多角的な視点が身につき、創造力の育成に役立つと感じました。

どちらも、本来は半年や1年かけて学んでいくほどの深みがある内容でした。そのため、少々駆け足で進んでしまったな、という感想も持ちました。じっくり学びたいという方は、MBAスクールや大学院を検討するのも一つです。一方で、講師とのインタラクションや年代や職種、役職などさまざまな参加者同士のディスカッションがあったことで、授業には充実感がありました。東京理科大学オープンカレッジは経済的にも時間的にも受講しやすいため、学びの第一歩を踏み出すために活用するのがお勧めです。

コンテンツ本部ソリューション3部 兼
マーケティング本部ビジネスアーキテクト部 兼
ブランド本部周年事業・デザインセンター コンサルタント
脇山 誠司(わきやま せいじ)

ビジネスアーキテクト部として各部署と連携しながら、幅広い業務のプランニング(コンテンツ制作、ブランド戦略、周年事業、デジタルマーケティングなど)に携わる。
また、マーケティング本部としてWebサイトの分析から戦略策定までのコンサルティング業務も手掛ける。

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