大学広報“受難時代”の乗り切り方―広報が経営を牽引する時代に

自校のポジショニングを確認する

2013.12.25

大学広報

  • コンサルティング本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント中村 美穂

今や企業のマーケティングだけでなく、大学にもブランド力が求められるようになっています。国立大学であれ、私立大学であれ、どれくらいの認知度があり、どのようなイメージを持たれているかが重要な時代です。しかしながら、ただ単に大学の広報に力を入れ、宣伝にコストをかければブランド力が高まるわけではありません。全国のべ470校のデータから見えた、大学ブランド力向上のポイントを紹介します。

「大学ブランド力」をデータから分析

前回(第1回:大学における「ブランド」とは)、その大学“ならでは”の「魅力=大学ブランド力」が重要だという話をした。では実際、厳しい大学競争環境の中で全国の大学のブランド力がどのような分布にあるか、データで確認してみたい。

大学ブランド・イメージ調査は、大学を、学力偏差値ではなく「大学ブランド力」という評価指標で測っている。

今年で7年目を迎えるこの調査では、のべ470校を対象に全国を9ブロックに分け、地域の在住者にその地域にある大学のイメージを尋ねる。各大学はこの調査結果から、ステークホルダーが自校をどれくらい認知し、どのようなイメージを持ち、どの程度選ばれ、愛される大学なのかを確認できる。

調査の最終指標である「大学ブランド力」は、大学に対する49のイメージ項目の回答結果から算出する。その「大学ブランド力」と、別設問で尋ねている「大学認知度」をプロットした以下の図から、魅力が浸透している大学群と、危険な状況にある大学群が見えてくる。

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認知度を高めるだけでは不十分

横軸が「大学認知率(%)」、縦軸が「大学ブランド力(偏差値)」。右側に行くほど大学の認知が進んでおり、上に行くほど大学のブランド力が高い=魅力が浸透しているということになる。

図の中で(1)の部分は、大学に対する認知度も低く、さらに魅力の浸透もこれからという、ブランド力を上げていく最初の段階。そこから認知、魅力の浸透が進んでいき、(3)のポジションに至る。ここでは認知度がかなり進み、大学名を聞けば8~9割前後の人が知っているものの、具体的なイメージを問われると答えに詰まる場合が少なくない。

「大学名は知っているけれど、どのような学部があるかは分からない」「大学の場所は知っているが、キャンパスの雰囲気やそこに通っている学生の資質は分からない」などのような場合だ。(3)に位置する大学は、今後、より具体的な中身の発信が必要になり、図でいうと右を目指すのではなく上、つまり(4)や(5)のポジションを目指していくことになる。

この図の中で魅力的な大学は(5)、そして(4)に位置していることが多い。この位置の大学は、他大学とは一線を画して「選ばれる大学」「愛される大学」となっており、各地域を代表する国立大学や、その地方で「私学の雄」と言われる私立大学が入る。

“シャチホコの背中”にビジョンを持つ大学

さらにもう1つ、魅力的な大学のポジションがある。それは、このシャチホコ型のプロットの中で、非常に内側に位置している大学、シャチホコでいうお腹側ではなく背中側にいる大学だ。

認知度は高くないが、知っている人にはとても強いイメージを残しており、この大学“ならでは”のアイデンティティが深く浸透している。「知る人ぞ知る魅力的な大学」の位置を占める。

例えば、前回触れた秋田県の国際教養大学や、大分県の立命館アジア太平洋大学をはじめ、公立はこだて未来大学(北海道)、長岡技術科学大学(新潟県)、国際基督教大学(東京都)、南山大学(愛知県)などが挙げられる。

これらの魅力的な大学に共通して評価の高いイメージ項目が、「教育機関としてのビジョンがある」だ。魅力的と映る大学は、大学の組織がしっかりとしたビジョンを持って運営を進めていることが伝わっている大学なのである。

個性が伝わっていない大学は「危険地帯」

一方で、この図の中で危険な場所がある。認知度、ブランド力ともに低い左下ではない。ここは、これからの伸びしろが多い大学群になる。危険なのは(3)の右側だ。この部分に位置する大学は、大学名の認知は進んでおり、その大学の名前は9割以上の人が知っている状態である。

しかし、具体的に「何が魅力?」「どんなイメージ?」と聞かれると回答が出てこない(「知らない」「分からない」、もしくは回答者によってバラバラのイメージやマイナスイメージが挙がる)。広報、広告活動で認知は広まったが、その大学ならではの個性、アイデンティティがうまく伝わっておらず、大学への入学意向にもつながらないのだ。

ここに位置する大学に対してイメージを尋ねると、「電車の吊り広告を見て大学名は知っているが、教育・研究の中身を分からない」とか、「箱根駅伝に出ているから名前は聞いたこともあるが、選手以外の学生のイメージがわかず入学を勧めるまでには至らない」などの意見が挙がってくることになる。

「魅力的な大学群」と「危険な大学群」。そして、魅力的な大学群がそろって評価されている「教育機関としてのビジョン」。次回は、大学組織がビジョンを掲げて進める「ブランドづくり」の1つの過程として、シンボルマークの制作を取り上げる。

中村 美穂

コンサルティング本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント

2008年入社。大学や企業のブランディングに関する調査・コンサルティングなどを担当。「大学ブランド・イメージ調査」は2009年より担当し、個別の大学に対する調査・コンサルティングも行っている。(※著者の肩書きは記事公開時のものです)

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広報が経営を牽引する時代に

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