大学広報“受難時代”の乗り切り方―広報が経営を牽引する時代に

大学における「ブランド」とは

2013.12.18

ブランディング

  • コンサルティング本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント中村 美穂

「大学はやはり国立大学」――。こんな認識を持っている方は少なくないでしょう。実際に、大学のブランド力を調査してみると、そうした傾向は色濃く表れます。その一方で、秋田県や大分県では、公立大学や私立大学が地域の国立大学を押しのけて強い存在感を見せていました。希望すれば誰もが大学に入れる「大学全入時代」を迎え、さらに2018年には18歳人口が大幅に減少することが見えている中で、どうしたら大学はブランド力を向上させ、地域や受験生、保護者などからの評価を高められるのでしょうか。

ブランド力第1位が国立大学にならない県

「あなたの住んでいる地域の大学の雄と言えば?」と聞かれたら、多くの都道府県でその地域の国立大学が挙がるだろう。

毎年、大学のブランド力を測る調査を行っているが、その結果を都道府県別で見ると、総合力の第1位はほとんどが国立大学になっている。一流感や信頼感、基礎学力の高さなどで圧倒的な評価を得ていることが多い。

しかし、そのような中で、国立大学ではない大学が1位になっている県もいくつかある。例えば、秋田県。秋田県の第1位は「国際教養大学」、県立の大学だ。「最低1年間の海外留学」が卒業要件になっているなど、特徴的な個性を強くアピールし、この大学の“ならでは感”が強烈な印象を与える。その印象の強さ、大学の魅力度において、地元の国立大学としてブランド力第1位だった秋田大学を今年上回った。

国際教養大学は昨年から今年でぐっと順位を上げたが、実はもっと以前から県内最強を保っている私立大学がある。大分県の「立命館アジア太平洋大学」だ。このところ3年連続で第1位となっている。

学生の半数近くが各国からの留学生、教員も約半数が外国籍という多文化共生キャンパスは、大学組織としての国際性や学生の語学力で他大学を寄せ付けない強さを持っている。このような大学の強さこそが大学のブランド力であり、その大学“ならでは”の魅力なのだ。

企業同様に大学の“らしさ”が求められる

近年、企業のマーケティング活動においては特に、その企業“ならでは”の魅力やその商品“らしさ”など、顧客に選ばれる強いブランド力が求められている。大学も今、同じ力が問われるようになった。

2007年ころから、大学への入学希望者が入学定員を下回る「大学全入時代」を迎えたと言われ、定員割れ、赤字経営、募集停止、閉校など、大学は厳しい競争環境に置かれている。ここにきて、2018年以降18歳人口がさらに大幅に減少する「2018年問題」の足音が大きくなってきた。

この事態を踏まえ文部科学省は、2012年6月に『大学改革実行プラン~社会の変革のエンジンとなる大学づくり』を発表した。2012年から2017年までを、改革の実行期間と定めており、2018年問題を乗り越えるための危機感が感じられる。

大学数が過剰になっていくなかで、選ばれる大学になるためにこれから大学は何をすべきかを考えてみたい。

選ばれる大学になるために

その解決策の1つが、大学の「ブランド」を構築し、活用していくことである。

ブランドの語源は、家畜などに焼印を施し(Burned)他者の家畜と区別すること。大学においても他の大学との違いをみせるための個性化、差別化が求められている。冒頭で例に挙げた秋田と大分の2校は、個性化、差別化を実現し、違いを強くアピールしている典型例だ。

大学の「ブランド」を活用するために、まず考えなくてはならないのは、大学の「何を」「誰に」「どのような手段で」伝えるかである。

「何を」は、大学の持つ魅力、アイデンティティ。自校の魅力は何か、発信すべき理念は何か、ステークホルダーからはどのように理解されているのか、何を求められているのかを理解することが大事になってくる。

「誰に」に当たるステークホルダーは、企業のステークホルダーと同様、多岐にわたる。受験生、受験生の父母、在学生、在学生の父母、教職員、卒業生、企業の人事担当や就職先のビジネスパーソン、地域住民…など、多種多様な人々に対して魅力が伝わることで「選ばれる大学」となり、そしてより強い関係性である「愛される大学」となっていく。

最後に「どのような手段で」は、自校とステークホルダーをつなぐコンタクトポイント、接点である。大学の広報活動は、広告やニュース記事、Webサイト、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、学校案内、書籍、公開講座など、様々なコンタクトポイントを使って展開されている。

具体的に、「大学の魅力を受験生に知ってもらうには、どんな手段を使うのが効果的か」「産学官の連携を、どのように伝えるのがよいのか」、伝える相手と伝える内容に合わせて最適な手段を選ぶ必要がある。

「魅力」の発信でブランド力は高まる

このように多くのステークホルダーと最適なコンタクトポイント持ったうえで、大切なのは、一貫した大学の「魅力」を発信することである。

情報過多の時代において「選ばれる大学」になるためには、その大学の魅力をステークホルダーの記憶に残すことが大切。「この大学に行けば、国際社会で活躍できる教育が受けられる」「資格を生かすのであれば、この大学に行けば間違いない」など、その大学“ならでは”の魅力、その大学“らしさ”を知ってもらうのだ。

明確で一貫した魅力を、適切な手段で発信していくことで、受け手には、「ただ名前を知っている大学」ではなく、「魅力のある大学」として記憶されるだろう。その記憶が大学のブランド力を上げ、入学者数の確保だけではなく、在学生や教職員の満足度の向上、企業などの採用時のプラスの効果、さらに広報活動の効率化にもつながる。

これからの大学は、何が魅力として捉えられているのか。選ばれ、愛される大学になるためのブランドづくりについて、次回以降、より具体的に考えていく。

中村 美穂

コンサルティング本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント

2008年入社。大学や企業のブランディングに関する調査・コンサルティングなどを担当。「大学ブランド・イメージ調査」は2009年より担当し、個別の大学に対する調査・コンサルティングも行っている。(※著者の肩書きは記事公開時のものです)

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