大学広報“受難時代”の乗り切り方―広報が経営を牽引する時代に

大学ブランドをつくる3つの言葉

2014.01.29

大学広報

  • コンサルティング本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント中村 美穂

近年、大学広報はただ学内の情報を発信するだけではなく、自校のブランドをつくる部署だと言われています。広い目で見ると大学経営の最前線に立つ役割を担っています。4回目(最終回)となった本稿では、大学ブランドをつくるための手順を3つのキーワードを使って解説していきます。マンモス校だけでなく、地方の有名私大の例も交え締めくくります。

大学を知ってもらうために「ひろげる」

大学ブランドを考える際、3本柱になる言葉がある。「ひろげる」「とがる」「よろこばす」だ。これらは、大学のブランドをつくり上げていく上で欠かせぬ言葉であり、大事な順番でもある。

まず「ひろげる」。言うまでもなく認知を「ひろげる」ことを指す。大学名をはじめ、大学の情報を広く知ってもらうために、ある程度の金銭や人的資源を投入して広報活動を行う。前々回の記事(第2回:自校のポジショニングを確認する)で提示したプロット図の中で、(1)や(2)に位置する大学は「ひろげる」ことから始めるべきだ。

大学認知度のプロット図(「第2回:自校のポジショニングを確認する」より)
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自校は、どのステークホルダーからどの程度知られているのかを確認し、そこから誰にどのメディアを使って何を訴求するのかを検討していくことが大切になる。

認知度が違えばコミュニケーションの方法も違ってくる。例えば、岡山県にあるノートルダム清心女子大学は、岡山県在住者からの認知率は97.7%とほぼ全員が知っている状態である(「大学ブランド・イメージ調査2013-2014」より)。一方で、北に隣接する鳥取県在住者からの認知率は半数を切っていた。この場合、岡山県在住者に大学名を知ってもらうための「ひろげる」活動は十分と考えてよいが、鳥取県に住む高校生の受験や入学を願うなら、鳥取県在住者に対しては「ひろげる」ための投資を行う必要がある。

大学の魅力を伝えるよう「とがる」

認知を広げたら、次は他大学との差別化を進める段階に入る。これまで何度か述べている、この大学“ならでは”の魅力を訴求する広報活動であり、上記のプロット図で(3)の位置に当たる大学は、このポイントを押さえるべきだろう。

現在自校は、ステークホルダーからどのようなイメージを持たれているのか、発信している魅力とステークホルダーが持っているイメージにギャップはないか。今後は何を発信するのかを確認し、“ならでは”の魅力を伝えるために投資を集中投下していく。

例えば国士舘大学は、首都圏在住者からの認知率が早稲田大学に次いで第2位となった(「大学ブランド・イメージ調査2013-2014」より)。先ほどの、岡山県におけるノートルダム清心女子大学と同様に、地元の首都圏に住むほとんどの人が知っている状態である。そのため、もはや大々的に大学名を連呼することに意味はなく、「ひろげる」ことに加えて国士舘大学“ならでは”の魅力を訴求することが大事になる。

改めてステークホルダーから持たれているイメージを確認すると、「スポーツ活動に熱心に取り組む」という項目が非常に高く、学生に対するイメージでは「精神的にタフである」が第1位になっていることが分かった。このデータを基に大学側は、自分たちが打ち出そうとしているイメージと、その受信者が感じるイメージにズレがないかの点検を行い、今後の発信内容や発信方法を決めることが望まれる。

国士舘大学では現在、ステークホルダーから持たれているタフな学生イメージを生かし、心身ともに強い学生の魅力を伝えようとしている。加えて、この大学に入ったら何を学べるかという実学の部分を丁寧に伝える広告を展開している。

「とがる」段階にいる大学は、今持たれているイメージを起点に、強みをさらに強くするのか、弱みをカバーするのか、広報を中心とした組織としての判断とその後の集中的かつ効率的な活動の展開が求められていることを認識すべきだろう。

身近な大学になるべく「よろこばす」

ブランド形成の最終段階である「よろこばす」では、大学のファンを増やすこと、愛校心や帰属意識を高めることが求められる。在学生が「この大学に通ってよかった」と思うこと、近くに住む人が「この大学、お勧めよ」と入学を推奨すること、教職員がそこに勤めていて誇りに思うこと、こうした状態が「よろこばす」であり、上記のプロット図で(4)(5)の位置に当たる大学が努力すべきポイントになる。

前回(第3回:大学の「シンボルマーク」が担うブランドづくり)紹介した早稲田大学は、シンボルマーク制作の過程やつくり上げることで、ステークホルダーの帰属意識が高まるよう意識していた。

ロゴ以外の手段においても、オープンキャンパスは受験生を直接「よろこばす」大事な場として位置づけた。キャンパスに来た高校生をどのように出迎えるか、在学生にどのような役割を持たせるか、そして一度来た高校生をどのように受験、入学までつなげるか。取得した個人情報を使ってアプローチを繰り返したり、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用してキャンパスや学生の様子を発信し続けてもよい。

リアルとバーチャルをうまく組み合わせてつながりを持ち続けることで、一度大学を訪れた高校生は大学に親しみや好感を持ち、「この大学が好きだから入学したい!」と思わせる可能性も高まるだろう。

大学の受験生確保が非常に大変な時代である。受験生の数が減る一方なのに情報は溢れ、ターゲットに正しい情報を伝えることが困難になっている。逆に、本来大学が意図していないイメージばかりが広がってしまうこともある。

だからこそ、自校の魅力とステークホルダーが抱くイメージにギャップがないかを確認し、戦略を練り、発信を行い、イメージの確認をするというサイクルを回し、少しずつ「ひろげる」「とがる」「よろこばす」を進めていくこと、すなわち大学のブランド力向上が不可欠なのだ。

このサイクルを回していく中で必要になる基礎データや戦略案、点検ポイントなどについて、私たちは既に複数の大学で調査・コンサルティングを行っており、発信物の制作においても実績がある。今後も大学経営を牽引する広報の一翼を担えれば幸いである。

中村 美穂

コンサルティング本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント

2008年入社。大学や企業のブランディングに関する調査・コンサルティングなどを担当。「大学ブランド・イメージ調査」は2009年より担当し、個別の大学に対する調査・コンサルティングも行っている。(※著者の肩書きは記事公開時のものです)

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広報が経営を牽引する時代に

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