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なぜ法政は東日本で一番人気の大学となったのか?(後編) なぜ法政は東日本で一番人気の大学となったのか?(後編)

法政大学が2017年度入試で全国の私立大学の中で志願者数第2位、東日本ではトップとなったのには複数の要因があります。前編では「地道なブランディング」について触れましたが、そのほかには近年の志願者の学問に対する志向や入試制度なども挙げられるといいます。廣瀬克哉常務理事、菊池克仁入学センター長に聞きました。

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2017年度入試で法政大学史上最高の志願者を集められた理由は何でしょうか。

廣瀬: いろいろな要素が複合した結果だと思っています。本学だけではなく、日本の大学全体の傾向として、大都市部、特に東京の総合大学で志願者数が軒並み伸びているということがあります。この傾向の上でさらに、他大学よりも本学を選んでもらったという面と、これまで本学を選択してくれた層とは違う層の志願者が出てきた面が合わさって大きな効果をもたらしたからだと思っています。
 一方で、過去最高の志願者数の更新は、2016年度にも実現したことです。2017年度も事前に手応えを感じていましたが、これほどまでとは思っていなかったというのが率直なところです。学部新設というような何か目立つことに取り組んだというよりは、例えば創立以来初めてとなる「法政大学憲章」を制定するなど、ここまでの実績をはっきりとした言葉として発信していく努力をしてきました。法政大学憲章は、ほかの要素と複合して、私たちの期待以上に受験生や保護者のみなさんの心に響いたのではないかと受け止めています。

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菊池: 2014年度から統一日程入試の学部併願制度を導入しました。これが要因の一つとなって2014年度と2015年度は志願者数が9万人強まで伸びました。その後2016年度は10万人を超え、2017年度はさらに伸びたかたちです。特に女子の志願者数が右肩上がりに増えていて、これまで本学をあまり受けてこなかった層の志願が増えていることを実感しています。実際、もともと女子に人気がある人文系・学際系学部だけでなく、経営、法、社会といった社会科学系の学部でも、学生の3、4割が女子という、今までにない高い比率になっています。

「法政を受けてこなかった層」と法政の強みに、関係性はありますか。

廣瀬: 少し前までの本学に持たれていたイメージは、率直に言って「東京にあって、名前がそこそこ知られている総合大学」だったと思います。さらに「もっと具体的にどんな大学なの?」と聞かれたときに、明確な特徴が際立っていなかった面がありました。同じ都内の他校のように「資格試験に強い」「建物やキャンパスがおしゃれ・ファッショナブル」といったイメージが、ぱっと出てこない。悪い印象もないけれども、良い印象についても焦点が定まりきれていない感じがあったかと思います。
 しかし、特に1999年以降の教学改革のなかで、それまでの6学部から現在の15学部にまで学部数を増やしてきました。それを通して、従来の学問領域ごとに学部を設置するという考え方に加えて、取り組むべき社会の課題に焦点を合わせた学部をもつようになりました。そうしていくうちに、社会の中で本学の位置付け方が変わってきて、より広い層の人に選んでもらえるようになってきたのだと考えています。
 例えば、SGU(スーパーグローバル大学創成支援事業)に選定された理由の一つだと思っていますが、本学は従来からグローバル化への対応にかなり力を入れてきた大学でした。特に、日本人学生にグローバルな体験をさせるチャンスを豊富に提供していたのです。
 グローバルな大学というと、海外からの留学生の受け入れに大きな強みを持っている、比較的小規模な大学がいくつかあります。しかし、総合大学で多数の日本人学生を海外へ派遣し、単位認定もされる留学体験を提供している点では、本学は国内有数の大学なのです。ただ、「法政ってグローバルだよね」「国際的に活躍したい場合は法政を選ぶといいよね」というイメージは、今までそれほど浸透していませんでした。
 2014年にSGUに採択され、田中優子総長が本学の先頭に立ってSGUと相まったグローバル化、ひいては大学改革に取り組んできて、「法政って実は先進的なんだね」というイメージを持ってもらえるようになったと思っています。女子の志願者が増えているのも、田中総長の活躍の影響を受けている面もあるでしょう。

社会科学系学部の人気は全体の傾向ともいえますが、そこに法政らしさはありますか。

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廣瀬: 一般的に大学の教員には「経済学部であれば経済学、法学部であれば法学というディシプリン(学術領域)を身に付けてもらうところ」という意識が、今もそれなりに強いと思います。しかし、ディシプリンを伝える方法論は大きく変わってきています。知識を講義で体系的に解説するだけではありません。そうした知識を背景に持った上で社会の現場に飛び込んでもらい、ディシプリンを身に付けていると何が見えてくるか、課題解決にどんな貢献ができるかを体験してもらうのです。そうすることで、学ぶことへのモチベーションも上がるし、知識が本当の意味で身に付いていくのが実感できます。

菊池: 進学相談会などで受験生と話すと、ディシプリンそのものよりも、社会の課題を解決する方法に興味を持っている人が多いようです。このような状況に対し、本学では例えば環境問題や開発問題に関心があれば、人間環境学部で徹底的にフィールドスタディーに取り組むことができます。2017年度に特に志願者を伸ばした学部は国際文化、経済、経営、人間環境で、テーマに応じた実践的な学びができる学部として受け入れられたのだと思います。

志願者大幅増に、制度面で奏功したものはありますか。

菊池: センター試験利用のC方式入試が挙げられます。いわゆる私立大学型の3科目で受験するB方式と違い、C方式は国公立大学の入試科目に則していて、合格発表や入学手続期間のタイミングも、国公立大学と併願しやすいようになっています。国公立大学を受験する前に合否が分かり、手続締切は国公立の合格発表日までになっているのです。導入以来、受験者数が伸び続けていて、近年では、地方在住で国公立大学を志望している受験生にも浸透してきている実感があります。

廣瀬: 出願すれば合否判定が受けられ、受験地に行く必要がないというのは、本学から遠いところに住んでいる受験生には魅力でしょう。

菊池: 本学は、前年度の合格最低点を公開しているのも大きな特徴です。センター利用入試の場合、センター試験の点数だけで合否が決まりますので、合格最低点が分かれば、出願が非常にしやすくなります。この情報を公開している大学は多くありません。

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地方の受験生に情報発信するに当たり、工夫していることはありますか。

菊池: 地方向けに限ったことではありませんが、ウェブ中心の広報に徐々に切り変えています。昨年、入試情報ウェブサイトをリニューアルし、さまざまな入試情報が見つけやすくなったと思います。それと、高校での進学相談会や大学説明会、複数の大学が集まる大学フェア等に積極的に参加しています。本学の職員のうち、約250人が研修を受けて「進学アドバイザー」となり、これらのイベントに参加しているのです。

廣瀬: 職員数は400人強ですから、6割以上の職員がさまざまな場に赴いているということです。彼らの所属部局は広報や入試関係だけではなく、実にさまざまな部署に及びます。これにより、人数の面でも内容の面でも幅広い対応ができるようになっているのです。

法政大学の躍進には、2030年までのビジョンという大局的な視点から、教職員一人ひとりが工夫をするというミクロの視点まで、幅広い強みがありました。

熊谷 勇一

カスタムメディア本部第二編集部 兼 周年事業ラボ

中央大学文学部哲学科卒業。その後、現在これだけ盛り上がるとは思わずに、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程でAI(人工知能)の研究をして修了。2006年に入社して以来、大学や研究機関のメディア制作に携わっている。共著に『自校史ブックス 大正大学』(弊社刊)がある。

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