2016年 ITの重点投資分野は「クラウドサービス」で、投資が拡大する筆頭は「ビッグデータ活用」/通信事業者満足度はNTTドコモが音声端末、データ端末ともに1位に
~「携帯電話・スマートフォン“法人利用”実態調査2016」より~

2015年12月18日

株式会社日経BPコンサルティング(東京都港区)はこのほど、「携帯電話・スマートフォン“法人利用”実態調査2016」の結果をまとめた(2015年12月18日報告書発行)。携帯電話の法人における利用実態と利用意向を探る本調査は、2005年に開始してから今回で11回目である。

2016年のモバイル・ソリューションへの投資に関する重点投資分野の1位は「クラウドサービス」、次いで「スマートフォン」、「タブレット端末」という結果になった(図1)。今後のモバイル端末の主流は昨年と同様に「タブレット端末」である(図2)。

通信事業者に対する満足度については、音声端末部門、データ端末部門いずれもNTTドコモが1位となった(図3)。

また、企業が負担する1人当たりの音声端末の月額負担料金は6072円で、昨年から451円の減少となり、通話定額への移行の影響が見られる結果だった。今回新たに調査した格安SIM、格安スマホの企業での利用については、格安SIMによる通話サービス利用企業は0.7%、データ通信サービス利用企業は3.2%、企業における格安スマホの利用率は0.7%という結果で、データ通信に格安SIMを採用する企業の比率が高かった。

2016年の投資注力度が最も高いのは「クラウドサービス」
投資拡大幅が最も大きいのは「ビッグデータ活用」

モバイル・ソリューションへの投資は、「クラウドサービス」が最も高く、次いで「スマートフォン」、「タブレット端末」、「モバイル・セキュリティ」が続く。また、「高速モバイルデータ通信対応」、「無線LAN」、「モバイルの業務アプリケーション連携」も含めた7項目が昨年と同様に、重点投資テーマといえる。

投資注力度としては上位7項目とは離れているものの、「ビッグデータ活用」、「IoT/M2Mソリューション」に対する投資意欲も高まっていく傾向にある。2015年の投資注力度は対2014年で8項目が拡大し、2016年は対2015年で11項目が拡大する。2015年から2016年への投資拡大幅が最も大きいのは、「ビッグデータ活用」である。2016年は、企業のICTに対する投資が「ビッグデータ活用」に、より多く注ぎ込まれる。次いで、「モバイル・セキュリティ」、「業務アプリケーション連携」、「モバイル・セントレックス」、「IoT/M2Mソリューション」といった分野への投資意欲が高くなる傾向で、更に投資拡大が期待できる。

モバイルデータ通信端末の中心はシェア縮小も引き続き「タブレット端末」

2016年も2015年に引き続きモバイルデータ通信端末の中心は「タブレット端末」になる。「タブレット端末」を選択した企業は42.9%で、昨年の45.7%から2.8ポイントの縮小となったが、大きなシェアを占めている。2016年も企業におけるタブレット端末の需要は高まると考えられる。

一方、モバイルデータ通信端末の中心は「スマートフォン」と回答した企業は24.2%で、昨年の23.7%から0.5ポイント拡大した。ノートパソコンも昨年の27.7%から1.4ポイント拡大して29.1%となった。ノートパソコンも軽量、薄型、ハイスペック化がさらに進み、ユーザービリティ面、アプリケーション面でノートパソコンを利用するケースは引き続き多い。また、利用シーンに応じてタブレット端末としても使えるノートパソコンも増え、タブレット端末とノートパソコンの垣根がなくなってきている点でもノートパソコンのニーズが2016年度も引き続き高い要因と考えられる。

音声端末主契約、データ通信主契約の満足度は、いずれもNTTドコモが総合満足度で1位
エリア、品質、販売対応、アフターサービスなど個別6項目でも1位に

音声端末主契約の総合満足度で1位は、NTTドコモだった。昨年、KDDI(au)に1位の座を譲ったものの、今回10.4ポイントの差をつけての1位となった。

総合満足度以外の各項目では、NTTドコモが音声端末11項目およびデータ通信端末12項目中、いずれも6項目で1位を獲得しており、1位の数が最も多い。その1位の項目は、「通話エリア(屋内外の2項目)」、「通話品質」、「法人営業担当者の対応」、「販売店・ショップ店員の対応」、「アフターサービス・サポート体制」の6つである。エリア/品質と法人営業担当を中心とした対応面での満足度は非常に高く、NTTドコモの強みは変わっていない。一方で、価格、料金面での満足度が他の通信事業者よりも低い点は、昨年と変わらない傾向となっている。

2位となったKDDI(au)は、音声端末で「月々の利用料金」、「法人割引サービス」、「法人向けサービス/ソリューション」、「電話機」の4項目が1位。またデータ端末は「データ通信速度」、「端末の価格」、「月々の利用料金」、「法人割引サービス」、「法人向けサービス/ソリューション」の5項目で満足度1位となった。3M戦略でデバイスからネットワーク、ソリューションといったトータルの提供を行っているKDDI(au)の強みが出た評価ともいえる。

一方、前回は前年比で満足度が大きく改善したのがソフトバンクだったが、今回は音声端末、データ端末ともスコアが下降した。「通話エリア(屋内)」、「法人営業担当者の対応」、「販売店・ショップ店員の対応」、 「アフターサービス・サポート体制」でのポイントの低下が目立っている。

音声端末の月額会社負担は6072円で前回から451円の減少
通話定額の利用は全体の約6割が利用、データシェアプランは全体の5割の企業が利用

業務で必要な携帯電話・PHS音声端末の月額料金において、会社が負担している額は、一人当たり平均6072円だった。昨年平均の6523円から、今回は451円減となり、昨年に引き続き、さらなる減少となった。2014年の6月以降に各社が揃って提供し始めた通話定額への移行が進んでいる結果とも受け取れる。その通話定額の利用率は全体で62.5%。利用意向まで含めると7割の企業が選択している。音声端末主契約の通信事業者別では、最も利用率が高いのはNTTドコモの73.7%である。

また、データ定額/パケットパックの利用率は、全体で68.3%。またデータシェアプランは、全体で50.5%の企業が利用している。データシェアプランの利用率が高いのは、NTTドコモの音声端末主契約企業の63.6%。通話定額、データシェアプランを先行して導入したNTTドコモが最も高い利用率となっている。

格安SIMによる通話サービス利用企業は0.7%でデータ通信サービス利用企業は3.2%
企業における格安スマホの利用率は0.7%

格安SIMによる通話サービスを利用している企業は、わずか0.7%だった。格安SIMによる通話サービス自体がまだそれほど浸透していないということもあるが、今後の利用意向を含めると、12.5%と約1割の企業が格安SIMによる音声サービスを利用する可能性がある。

一方、データ通信サービスに格安SIMを利用している企業は3.2%で、通話サービスよりはやや高いものの、企業における格安SIMの利用はまだこれからである。利用意向まで含めると16.0%となっている。格安SIMによる通話、データ通信サービスも含め関心があると回答している企業まで含めると、格安SIMに対して約半数の企業は何かしら関心がある。

格安スマホの利用率も格安SIMによる通話サービスと同じく、わずか0.7%だった。通話サービス付きの格安SIMと格安スマホの組み合わせの利用によるものと言える。利用意向を含めると12.2%となり約1割の企業が格安スマホを利用する可能性がある。

(藤澤 一郎=日経BPコンサルティング チーフコンサルタント)

調査概要

「携帯電話・スマートフォン“法人利用”実態調査2016」は、今回が11回目。企業へのアンケート調査とモバイル通信事業者3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)へのヒアリング調査を実施。アンケート調査は、全上場企業と非上場の優良企業の合計5000社の情報システム部門に調査票を郵送し、614社の情報システム部門、総務部門などから回答を得た(回収率:12.3%)。調査期間はアンケート調査が2015年10月26日~11月17日、ヒアリング調査が2015年11月27日~12月2日。携帯電話/PHSの法人利用の実態と、今後3年間の企業の導入計画、さらに経年での比較も含めた法人利用・ニーズの変化を分析した。音声通信とデータ通信の両面で調査している。

調査報告書

日経BPコンサルティングは2015年12月18日に、調査結果をまとめた「携帯電話・スマートフォン“法人利用”実態調査2016」報告書を発行した。通常版の報告書は約300ページで、業種や売上規模、従業員数別の全集計結果を収録したCD-ROM付き。価格は330,000円(税込)。ローデータ版も提供している。詳しくは、下記サイトへ。
http://consult.nikkeibp.co.jp/research/reports-and-data/keitai_hojin/

図1 モバイル・ソリューションに関する投資の注力度
図1 モバイル・ソリューションに関する投資の注力度 クリックで拡大

図の見方(投資注力度)

各企業に対し、前年に比べ投資の度合いについて2015年はどうだったか、2016年はどう考えているかを聞いた。
投資の注力度の回答に重み付け(「拡大」3ポイント、「横ばい」1ポイント、「縮小」マイナス3ポイント)した合計値を有効回答数(無回答を除外)で除した値をプロット。注力度指数が1の場合、前年との投資が同じということを示す。1より大きい場合、投資拡大傾向、1より小さい場合、投資縮小傾向となる。ピンクのセルにある項目は、前年よりも投資が拡大。また赤い斜線より上に位置する場合、前年よりも投資幅が拡大していることを示す。

図2 今後主流になるモバイルデータ通信
図2 今後主流になるモバイルデータ通信 クリックで拡大
図3 法人主契約企業の通信事業者満足度
図3 法人主契約企業の通信事業者満足度 クリックで拡大

算出方法

「満足度スコア」: 非常に満足(n1):100ポイント、どちらかといえば満足(n2):50ポイント、どちらともいえない(n3):0ポイント、どちらかといえば不満(n4):-50ポイント、不満(n5):-100ポイントとして、各満足度のn数(n1~n5)をかけ、全体のn数で割った値
「満足度スコア」=(100×n1+50×n2+(-50)×n4+(-100)×n5)/n
(n=n1+n2+n3+n4+n5)

本件に関するお問い合わせ

株式会社 日経BPコンサルティング ビジネスイノベーション・ラボ 藤澤 一郎

(Tel.03-6811-8304 Fax.(03)5421-9180)

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