日経BPコンサルティング、「ソーシャルメディア利用実態調査」を発表
Twitterは「リーダー型男性」、mixiは「リーダー型女性」、ニコニコ動画は「内向型の男性」が多く集結。企業のマーケティング利用では、日本コカ・コーラ、角川グループパブリッシングが一歩先行

2010年07月29日

日経BPコンサルティング(東京都港区)は、2010年6月に実施した「ソーシャルメディア利用実態調査」の結果をまとめた。報告書として7月29日に発行する。

本調査では、ソーシャルメディアにアクセスしたことがあるインターネット・ユーザー1200人を対象に、(1)どのような属性を持つ人が、かつ、(2)ふだんどのような意識を持っている人が、(3)オンライン上でどのような行動を取っているかを把握し、さらに(4)どのようなソーシャルメディアを利用しているかを俯瞰した。国内29ものサービス・プラットフォームについて、そのユーザー像と利用状況を横串に可視化した調査は本邦初である。

ユーザー像に特徴があるプラットフォームを挙げると、Twitterには「リーダー型の男性」、mixiには「リーダー型の女性」、ニコニコ動画には「内向型の男性」が相対的に多く集まる傾向があることがわかった*1)。とくにmixiには、SNS のコミュニティを立ち上げたり、商品やサービスのレビューを投稿したりと活発に行動し、周囲への影響力が強い女性ユーザーが多く存在する。一方、YouTubeは、最も利用者数が多く、オンライン上で情報を発信する「参加者」と、見ているだけの「観察者」のバランスがよくとれているプラットフォームだ*2)。これに対し、価格.comは、利用者こそYouTube に次いで2番目に多かったが、情報発信に参加せず、具体的な行動を起こさない「不参加者」の割合が高い。

さらに、ソーシャルメディアにおける企業アカウントとの接触率や想起、態度変容についても調査した。最も多く想起されたのは、日本コカ・コーラ。このほか、パナソニック、ソニー、ソフトバンク、エイベックス・グループ・ホールディングスなどが挙がった。プラットフォームをたどると、日本コカ・コーラはmixi、パナソニック、ソニー、東芝は価格.comやQ"Aサイト、エイベックス、角川グループパブリッシングはYouTubeやニコニコ動画などの動画共有サイト、ミツカンはクックパッドで想起されていた。日本コカ・コーラは自社の保有する会員制サイトとの融合、角川グループパブリッシングはコンテンツを共有する仕組みを持っている。複数のサービスをつなげて広がりを持たせる、共有を促す、一貫したテーマでの継続的なコミュニケーションが、ユーザーに強い印象を与えたと言える。

*1) 本調査では、インターネット・ユーザーの“リアル”での意識や価値観によって、オンライン上の行為にどのような違いが生じるかを見るために因子分析を行ない、回答者を3つの心理クラスターに分類。「アクティブリーダー型」「フォロワー型」「内向型」とした。詳細は次頁を参照。

*2)インターネット・ユーザーのオンライン上での行動をベースに、ソーシャルメディアへの関与度をモデル化した属性をオンライン行動属性とした。インターネット(パソコン・携帯)上での行為を23項目抽出し、ユーザーを「コーディネイター」「クリエイター」「参加者」「観察者」の4つのカテゴリに分類した。詳細は次頁を参照。

参考資料

最もサービス利用者数が多かったのはYouTube、2番目は価格.com

企業がソーシャルメディアをマーケティングに活用するためのファースト・ステップとして、どのようなソーシャルメディア・プラットフォームにどんな利用者がいるのかを明らかにした。調査対象としたのは、主要29のプラットフォームである。図表1に、各メディアの利用状況を示す。

図表1 サービス利用率とアカウント保有率(上位15のプラットフォーム)
図表1 サービス利用率とアカウント保有率(上位15のプラットフォーム)
図表2 利用しているソーシャルメディア(上位15のプラットフォーム)
※グラフ中の値は最大値。特徴的なもののみ抜粋した
図表2 利用しているソーシャルメディア(上位15のプラットフォーム)

「内向型」男性の多いニコニコ動画、「アクティブリーダー型女性」はmixi、食べログ「コーディネイター」が活躍するニコニコ動画、2ちゃんねる

図表2では、利用しているソーシャルメディアを、心理クラスターとオンライン行動属性の2つの切り口で比較した。心理クラスター(左図)による違いを見てみよう。「アクティブリーダー型」男性は「2ちゃんねる」(36.8%)、「Yahoo!掲示板」(26.3%)、「Twitter」(15.8%)など、会話がメインのプラットフォームで他のクラスターを上回った。「アクティブリーダー型」女性は「mixi」(37.4%)の利用者が4割弱と高く、「食べログ」(20.6%)の利用率も高い。

「フォロワー型」の男性は「Wikipedia」(50.2%)の利用率が高いほか、男性の中では「mixi」(30.0%)も高めだ。普段の情報源としては「友人・知人・家族」「コミュニティサイトやSNS」の低さが目についたものの、オンライン上のコミュニケーションではSNSも使われているようだ。また、普段から幅広い情報源に接していた「フォロワー型」の女性は「クックパッド」(38.0%)、「Ameba」(19.2%)比率が他のクラスターと比較して高い。

「内向型」男性は、「YouTube」(68.1%)、「価格.com」(66.5%)、「Yahoo!知恵袋」(47.2%)、「ニコニコ動画」(36.6%)など、いくつかのプラットフォームで利用率が他のクラスターを上回る。「オンライン上の行動は活発だが、“リアル”の意識・価値観では慎重派」な男性が少なからず存在していると言って良いだろう。他方、現実と同じくソーシャルメディア上でも慎重ぶりが垣間見えるのが「内向型」の女性だ。「クックパッド」(37.5%)のような情報検索型のプラットフォームでは高いものの、「mixi」(23.8%)や「Ameba」(9.0%)などのSNS、ブログではポイントが伸び悩んでいる。

オンライン行動属性で利用しているソーシャルメディアを比較すると(右図)、ニコニコ動画(46.0%)、2ちゃんねる(41.3%)で「コーディネイター」が他のカテゴリより高く、差が生じた。mixi、Twitter、Amebaは「クリエイター」が高く、情報発信が活発に行われている様子がうかがえる。Twitterは「コーディネイター」(25.4%)が「クリエイター」(23.7%)をわずかに上回った。情報の発信だけでなく、共有も活発に行われているといえそうだ。

その一方、価格.comは「不参加」が高かった。「見ているだけ」のユーザーが多数いるプラットフォームといって差し支えないだろう。

「参加者」が多く、「見ているだけ」のユーザーが少ないのはmixi、Twitter、Ameba
図表3では、特徴的な3つのSNS、つまりmixi、Twitter、Amebaの「中にいる人」がどのような人であるかを見るために、オンライン行動属性モデルと心理クラスターで構成比を示した。3つのプラットフォームとも、「参加者」の比率が高く、「観察者」との差が小さい。つまり、「見ているだけの人が少ない」ことを意味する。「コーディネイター」や「クリエイター」の含有率も高く、情報が活発にやりとりされている様子がうかがえる。さらに、mixiとAmebaの利用者は「フォロワー型」を筆頭に女性の割合が多く、Twitterは男性が多い。

図表3 主要プラットフォームにおけるオンライン行動属性モデルおよび心理クラスターの構成比
図表3 主要プラットフォームにおけるオンライン行動属性モデルおよび心理クラスターの構成比

ソーシャルメディアで想起された企業は日本コカ・コーラ、パナソニック、ソニー、ソフトバンクなど

ソーシャルメディア上で企業のマーケティング活動がどのように受け止められているかを見るために、企業アカウントがどのくらい認知されているかについても尋ねた。

企業アカウントの認知率が高いプラットフォームは、Twitter、モバゲータウン、mixi、Amebaの順になった。ただし、実際にソーシャルメディア上で認知していたり接触したことのある企業名を想起してもらうと、Twitter以外のプラットフォームでは、アカウント名の想起率は、接触率の半分以下だった。ソーシャルメディア・プラットフォームの利用者は、情報収集や利用者同士の交友、コンテンツを楽しむなどそれぞれ目的を持っている。そのなかで、企業が発信する情報が受け入れられ、記憶に残せる比率の目安がこの数字となるだろう。

プラットフォーム全体で想起された企業アカウントには、日本コカ・コーラ、パナソニック、ソニー、ソフトバンク、エイベックス・グループ・ホールディングスなどが挙がった。上位の企業が想起されたプラットフォームをたどると、日本コカ・コーラはmixi、パナソニック、ソニー、東芝は価格.comやQ&Aサイト、エイベックス、角川グループパブリッシングはYouTubeやニコニコ動画などの動画共有サイト、ミツカンはクックパッドで想起されていた。

日本コカ・コーラは自社の保有する会員制サイトとの融合、角川グループパブリッシングはコンテンツを共有する仕組みを持っている。ミツカンは、クックパッドという一つのプラットフォームで、レシピコンテストやレシピ投稿など中長期的な施策を継続している。複数のサービスをつなげて広がりを持たせる、共有を促す、一貫したテーマでの継続的なコミュニケーションが、ユーザーに強い印象を与えたと言えよう。

なお、オンライン行動属性における「参加者」「観察者」とも、企業アカウントとの接触後に行った行為を聞いたところ、「何もしていない」が最多である。しかし、「読む」「聴く」「見る」については日常的に行なっているのが「参加者」「観察者」である。たとえ声高な主張や意見が顕在化しなくとも、企業や他のユーザーの発信する情報やコミュニケーションの経緯を「見ている」存在だということについても忘れずにおきたい。

調査概要

調査目的 ソーシャルメディア利用者のうち、(1)どのような属性を持つ人が、かつ(2)ふだんどのような意識を持っている人が、(3)オンライン上でどのような行動を取っているかを把握し、さらに(4)どのようなソーシャルメディアを利用しているかを把握することにより、企業がソーシャルメディアをマーケティングに活用するためのヒントを提供する。
調査機関 株式会社日経BPコンサルティング
企画協力 アジャイルメディア・ネットワーク株式会社、株式会社トライバルメディアハウス
調査方法 インターネットリサーチ
調査対象 ソーシャルメディア・サービスにアクセスしたことがある18歳~69歳の男女1200サンプル(クロス・マーケティング社のモニターを利用)
割付条件 性年代別に均等割付(12セル×各100サンプル)
調査期間 2010年6月25日~28日

調査対象
プラットフォーム

アットコスメ/Ameba/Wikipedia/ウィメンズパーク/OKWave/教えて!goo/価格.com/クックパッド/GREE/食べログ/Tumblr/Twitter/ニコニコ動画/2ちゃんねる/発言小町/はてな/Picasa/Pixiv/Facebook/フォト蔵/Ftrckr/MySpace/mixi/モバゲータウン/Yahoo!掲示板/Yahoo!知恵袋/Yahoo! DAYS/Ustream/YouTube
分析方法

I. オンライン行動属性

図表4 オンライン行動属性モデル(回答者全体)
図表4 オンライン行動属性モデル(回答者全体)

 本調査では、インターネット・ユーザーのオンライン上での行動をベースに、ソーシャルメディアへの関与度をモデル化した属性をオンライン行動属性とした。

 インターネット(パソコン・携帯)上での行為を23項目抽出し、図表5に該当する項目によって、ユーザーを「コーディネイター」「クリエイター」「参加者」「観察者」の4つのカテゴリに分類した。「いずれの活動にも参加しない」としたユーザーは「不参加」のカテゴリに分類した。各カテゴリの構成比をピラミッド状の図に示したものが図表2である。

図表5 オンライン行動のカテゴリ分類と回答率(回答者全体)
「インターネット(携帯・パソコン)で月1回以上行なうこと」の各項目に一つ以上該当した場合、右側のカテゴリに分類される
図表5 オンライン行動のカテゴリ分類と回答率(回答者全体)

II. 心理クラスター

図表6 意識・価値観によるクラスター
図表6 意識・価値観によるクラスター

次に、インターネット・ユーザーの“リアル”での意識や価値観によって、オンライン上の行為にどのような違いが生じるかを見るために因子分析を行なった。

因子分析によって得られた図表7の5つの因子から、回答者を3つの心理クラスターに分類し、クラスターの特性を各因子との関係から、それぞれ「アクティブリーダー型」「フォロワー型」「内向型」と名付けた。さらに、男女別の傾向の違いも見た。

「アクティブリーダー型」は、積極的に人と関わり、人をまとめることや自己表現することが得意、という特徴を持つ。

「フォロワー型」は、自分の意見を通すよりも人の意見に左右されることが多く、友人と群れる傾向がある。

「内向型」は、そもそも目立つことがあまり好きではなく、人とのコミュニケーションにもあまり積極的ではない。

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