ブランド・ジャパン2026キックオフセミナー②

ブランド・ジャパン初ノミネート、Google「Gemini」の可能性と活用のポイント

  • 金縄

    ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 金縄 洋右

ビジネスの場で生成AIの活用が進む中、26年目を迎えるブランド価値評価調査プロジェクト「ブランド・ジャパン」にノミネートするブランドを決める「純粋想起調査」でGoogleの生成AI「Gemini(ジェミニ)」が初ノミネートとなった。Geminiはどんな機能があり、何ができるのか。先駆けて導入した企業ではどのような成果が出ているのか。Googleのシニアディレクターでコンシューマーマーケティングを統括する小池渉氏がGemini活用のポイントなどを解説した。

2025年12月12日開催、オンラインセミナー
25年分のブランド評価を紐解き、AI時代の未来を描く
「ブランド・ジャパン2026」想起トレンド&Google Geminiの可能性 より文=尾越 まり恵 構成=金縄 洋右

進化する「Gemini」でプロダクトを再構築

Googleのミッションは、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」だ。創業以来、大事にするこのミッションを軸に、Googleでは検索、YouTube、Gmail、Googleマップ、Android(アンドロイド)や、Google Chrome(グーグルクローム)など、人々の生活を支える幅広いプロダクトを提供している。

そして現在特に力を入れているのが、Googleの生成AI「Gemini(ジェミニ)」だ。「ブランド・ジャパン2026」において、Geminiがはじめてノミネートされた。

Googleの小池渉氏は、セミナーへの登壇にあたり、イベント趣旨や参加者プロフィールに基づいた最適なトピックをGeminiに相談したという。

Geminiの回答のポイントは、下記の2点だった。

  1. AIは学習フェーズから実装フェーズへとシフトしていること。
  2. 効率化だけではなく、AIとともに新しい体験をどう作り出すかが鍵であること。

「このポイントは、日ごろ私が感じていることと一致しています。AIの重要性はすでに十分理解されているので、実装につながる具体的な話を知りたいというのが今のニーズではないでしょうか」と小池氏は話す。

オンラインセミナーの一場面。動画制作での活用を説明している。

AIはいま、世界を大きく変えようとしている。Googleでは「AIの可能性に基づき、AIをすべての人にとって役に立つものにする」というビジョンを掲げて、すべてのプロダクトをAIで再構築しようとしている。その中心にあるのがGeminiだ。Geminiのアプリは全世界で6億5000万人(2025年10月現在)が利用し、日本でも利用者が急増している。

「単なる効率化のツールではなく、人のアイデアや想像力をさらに広げるためのパートナーになりたいと考えています」と小池氏は話す。

Geminiが持つ特徴の1つが「マルチモーダル」で、優れたテキスト処理の性能だけではなく、画像生成や編集、動画生成、プレゼン資料の作成やコーディングなど幅広い機能を併せ持つ。中でも2025年、大きく成長したのが動画生成機能「Veo3」だ。この新たな機能を使えば、リアルで質感のある動画をわずか数行のプロンプトで作成することができる。

Googleでは、「AIは人間を代替するのではなく、人の創造性を拡張するもの」と考えている。実際、Veo3をプロの映像クリエイターに使ってもらったところ、「自分の自由な発想を形にできる相棒として大きな可能性を感じる」という反応を得られた。

開発者の想像を超えて、可能性が広がっていく

さらに、もう1つ大きく進化したのが、画像生成&写真編集ツール「Nano Banana(ナノバナナ)」だ。Geminiではプロンプトにより0から画像を生成することも、自分が持っている元画像をアップロードして画像に変更を加えることもできる。

髪型のシミュレーション例。アップロードした人物画像から、9種類のシミュレーション画像が生成されている。

「登場人物や対象物の一貫性を保ちながら、さまざまなバリエーションの画像を生成できます。これはブランドの視点でも極めて重要な点だと思います」と小池氏は話す。

生活の中で実用的な活用もできる。例えば、転居の際に新居の写真をアップロードして、希望する家具や照明などをシミュレーションすることができる。立体表現、質感、照明、影の映り方など、リアルに再現することが可能だ。

家具配置レイアウトのシミュレーション例。新居の写真・希望する家具や照明の指示を出し、立体表現、質感、照明、影の映り方などがリアルに再現されている。

「3Dフィギュアの画像生成が世界的に広まりましたが、これはNano Bananaを開発した私たちの想像をはるかに超えていました。ユーザーとともに学び、Geminiを育てていく重要性を強く感じています」(小池氏)

AIとの共創で新たなユーザー体験を実現

続いて、小池氏は企業がマーケティングにAIを活用する場合のポイントについて語った。

「マーケティングにAIを活用するためには、既存業務の単なる置き換えではなく、AIを前提に全体を組み立て直す必要があります」と小池氏は指摘する。

リサーチ→要件定義→プランニング→開発→テスト→修正と進む従来型のWaterfall(ウォーターフォール)のプロセスから、AIを前提にプロセス全体を再構築することで、効率と効果の両方を大きく向上させることができるのだ。

まず、プランニング段階では、「発想と収束」という共創サイクルがある。人間がGeminiにディレクションを与えて発想の起点を作り、Geminiはそこから数百パターン以上の多様なバリエーションの提案を一気に生成し、多様なアイデアを一次整理、評価する。それを人間が最終的に選別して磨き上げていく。従来、数週間から数カ月かかっていたこのプロセスが、Geminiを使うと半日~1日で完了できるという。

マーケティングにおける共創プロセスを導入し、成果を出している企業も増えてきた。例えば、NTTドコモが提供する料金プラン「ahamo(アハモ)」では、Geminiで仮想ペルソナを構築し、不満や要望をヒアリング。抽出されたインサイトに基づきGoogle広告を打ち出した結果、「ahamo契約」の検索数が33%増加した。

また、動画などの領域でも、Geminiは低コスト、短期間での作成を可能にする。「朝思いついたアイデアを、午後には世の中に出すことができるのです」と小池氏は語る。

AIはユーザー体験も変革する。マガジンハウスが刊行する雑誌『BRUTUS(ブルータス)』とのコラボレーション企画「もしもし、ブルータス。」では、過去45年分のBRUTUSを学習したAIとの音声対話を可能にした。またGeminiに自分の写真をアップロードし好きな表紙テーマを選ぶだけで、自分を主役にした特別号の表紙を作る体験を実現した。

「多くの人に試していただき、SNSでも大きな話題となりました。自分の顔だけではなく自分のペットを表紙にするという予想外のトレンドも生まれて、私たちも人の発想とクリエイティビティに改めて驚かされました」(小池氏)

「3Dフィギュアの画像生成が世界的に広まりましたが、これはNano Bananaを開発した私たちの想像をはるかに超えていました。ユーザーとともに学び、Geminiを育てていく重要性を強く感じています」(小池氏)

SNSで共有された『BRUTUS(ブルータス)』とのコラボレーション企画「もしもし、ブルータス。」の制作例。想定しなかったクリエイティブな使い方もあった。

AIを活用した新しい体験がどんどん生み出され、それによって人の想像力がさらに拡張されていく。「AIの可能性を感じ、私たちはいま非常にわくわくしています」と小池氏は話す。

小さくスタートし、事例を広く共有する

最後に小池氏はAIの導入を組織全体で加速させるためのポイント3つ紹介した。1つは、「学びと実験」。組織のリーダーはメンバーに対して、実際に手を動かし実験する時間を与えること。手を動かし「これは使える」という実感値を持ってスタートすることが大切だ。

2つめが、「スモールスタート」。一気にすべてを変えようとすると、計画すること自体に膨大な時間がかかってしまう可能性がある。まずは限られた人数や部署などで小さく、素早く実行してみる。そこで得られた具体的な学びを、より広範な導入への青写真として活用することが大事だ。

3つめが「組織の横断」。成功事例だけではなくて、なぜ失敗したのかという学びも含めて組織全体で共有する。さらには、社外とも共有することで、業界全体的な学びが加速し、AIの活用が進んでいく。

「AIを活用することで、人々がより価値の高い仕事に集中し、創造性をさらに高められる時代がやってきました。皆様と一緒により良い未来を作っていければと願っています」と呼びかけた。

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連載:ブランド・ジャパン2026キックオフセミナー

金縄 洋右

ブランド本部 ブランドコミュニケーション部
金縄(かねなわ) 洋右(ようすけ)

ビジネスアーキテクト部を経て、ブランドコミュニケーション部に所属。
ブランド評価調査プロジェクト「ブランド・ジャパン」をはじめ、さまざまなブランドコミュニケーション領域の案件を担当。

※肩書きは記事公開時点のものです。