ブランド・ジャパン2026キックオフセミナー①
人はなぜそのブランドを思い出すのか「ブランド・ジャパン2026」想起調査が示す、選ばれるブランドの条件
なぜ「想起」を測るのか
ブランド・ジャパンが純粋想起にこだわる理由
日経コンサルティングが2001年から行っているブランド価値調査「ブランド・ジャパン」は、2026年で26年目を迎える。ブランド・ジャパンでは、調査対象ブランドを決めるプレ調査「純粋想起調査」を毎年8月に実施し、一定の得票数を得たブランドをノミネートブランドに選定。その後、第三者の専門家監修の指標を用いて11月に本調査をし、翌年3月に結果の一部を発表。調査データを広報、ブランディング、マーケティングの指標となるデータとして販売している。
ブランド・ジャパンでは、日本の中で人々に選ばれる強いブランドとその理由が分かる。どのくらい思い出されるのか、心の中で特定のブランドがどれだけ強く意識されているか(占有率)を示す指標「マインドシェア」をスコア化している。そのため、ブランド力を分かりやすく可視化、数値化したものであり、ランキングを見れば人々に想起される強いブランドが分かる。
「なぜわざわざノミネートを決める想起調査をしているのか。日経BPコンサルティングが自社でノミネートブランドをピックアップすることもできるのでは?」と思う人もいるかもしれない。そこには「業界トップブランドだからブランド力がある」とは言えないケースもあるからだ。
想起には大きく「純粋想起」と「助成想起」があり、純粋想起は、選択肢を与えずに「〇〇と言えば?」という質問に自由に回答してもらう手法だ。一方で、助成想起は選択肢の中から知っているブランドや好きなブランドを回答してもらう手法である。
この2つを比較すると、純粋想起されるブランドは、真っ先に思い起こすブランドであると言える。一番に想起するためには過去に何らかの深く強い経験があったり、話題に上ったりするなどの記憶があるはずだ。
一方で、名前を見て選ぶ助成想起の場合は、おそらく浅く、弱い記憶も含んでいると考えられる。そのため、ブランド・ジャパンではブランド力の強さをより正確に表すと考えられる純粋想起の手法を採用し、選ばれたブランドだけが本調査に進むことになっている。
ブランド・ジャパンの想起調査では、「BtoB企業」「衣」「食」住」「金融・不動産」「流通」など13分野において、人々が評価している、あるいは好感を持っているブランド名を書いてもらう。そして、回答数の多かった上位からノミネートされる仕組みになっている。
ブランド想起はどのように生まれるのか
脳の連想ネットワークとスキーマ最適化の考え方
ブランド・ジャパンには一般生活者が評価する1000ブランド「一般消費者編」と、有職者が評価する500の企業ブランド「ビジネス・パーソン編」がある。
想起調査の結果、ブランド・ジャパン2026の一般消費者編では、「グローバルワーク」(衣)「ジョナサン」(食)「キングジム」(住)「シャボン玉せっけん」(健康・福祉)、「福山通運」(運輸・物流・車)など52のブランドが新たにノミネートされた。
また、「情報・IT」の分野では、「OpenAI」や「Chat GPT」「Gemini」といった生成AIブランドが26年目を迎えるブランド・ジャパンで初めてノミネート入りの基準を満たす票数を獲得した。
人々に想起されるブランドになれば、消費者に優先的に選ばれるようになるというメリットがある。例えば、家電を購入する際、機能やアフターサービスなど、検討項目が多すぎるため、意識だけで複数のブランドを比較検討するのは難しい。結果的に「やっぱりソニーさんのブランドかな」と、想起ブランドがそのまま購入に結び付きやすい構造になっている。
さらに、マーケティングのコストを下げたり、株を購入する気持ちのハードル下げたり、あるいはこの会社で働きたいと考える人が増え人材採用がしやすくなったり、他の企業から取引したいと思われたり、社会的な信頼を得られたりするメリットもある。
では、ブランドを想起する仕組みはどうなっているのか。例えば、「優れた家電メーカーは?」と聞かれた時に、多くの人が、ソニーやパナソニックを思い浮かべるだろう。「温かいインナー」といえばユニクロ、「誠意のあるお詫び」といえば、とらやを思い浮かべるかもしれない。そうした瞬時に想起されるブランド力があれば、自然と購入につながっていく。こうした無意識の選択には脳の連想ネットワークモデルが関係していることが分かっている。
「優れた家電メーカーは?」という問いに対して、脳の連想ネットワークの中では「高品質」「デザイン性が高い」などさまざまなイメージが浮かび上がり、結果的にソニーというブランドが導き出される。
この連想の全体像を「スキーマ」、単体を「ノード」と呼ぶが、想起されるためにはスキーマをいかに最適化するかが鍵となる。最適なスキーマを作るというのは、情報の点を埋め込み、情報をつなげることだ。
人は、無数の選択肢の中から、すべてを比較して意思決定しているわけではない。
多くの場合、記憶と感情に導かれ、「思い出したブランド」を選んでいる。
だからこそ、ブランドにとって最も重要なのは、選択の瞬間に思い出される席を確保することだ。「ブランド・ジャパン2026」が示す想起データは、その席を巡る競争の現在地を映し出しており、それらを確認することにもつながる。
2025年12月12日開催、オンラインセミナー
25年分のブランド評価を紐解き、AI時代の未来を描く
「ブランド・ジャパン2026」想起トレンド&Google Geminiの可能性 より
ブランド本部 ブランドコミュニケーション部
ブランド・ジャパン プロジェクトマネージャー
石原 和仁
大学ではバイオテクノロジーを専攻。卒業後は、飲料メーカー、リサーチ会社、マーケティング会社を経て、日経BPコンサルティングに入社。2015年より日本最大のブランド価値評価調査「ブランド・ジャパン」のプロジェクトマネージャーを担当。様々な企業のブランディング業務(調査、体系づくり、PDCA設計、ブランドメッセージ制作など)に従事
※肩書きは記事公開時点のものです。
ブランド本部 ブランドコミュニケーション部
金縄 洋右
ビジネスアーキテクト部を経て、ブランドコミュニケーション部に所属。
ブランド評価調査プロジェクト「ブランド・ジャパン」をはじめ、さまざまなブランドコミュニケーション領域の案件を担当。
※肩書きは記事公開時点のものです。
