ブランド・ジャパン2026キックオフセミナー 第1回

人はなぜそのブランドを思い出すのか「ブランド・ジャパン2026」想起調査が示す、選ばれるブランドの条件

ブランドコミュニケーション

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日経BPコンサルティングは、毎年11月に実施するブランド価値評価調査「ブランド・ジャパン」の2026年版データ集(2026年3月19日リリース)に収録されるノミネートブランドをこのほど発表した。ノミネートブランドは、毎年8月に行うプレ調査「純粋想起調査」で1500ブランドを決定する。今回新たに加わったブランドはどのようなブランドか。どうすれば人々に想起されるブランドになるのか。ブランドコミュニケーション部コンサルタントの石原和仁が解説した。

なぜ「想起」を測るのかブランド・ジャパンが純粋想起にこだわる理由

日経コンサルティングが2001年から行っているブランド価値調査「ブランド・ジャパン」は、2026年で26年目を迎える。ブランド・ジャパンでは、調査対象ブランドを決めるプレ調査「純粋想起調査」を毎年8月に実施し、一定の得票数を得たブランドをノミネートブランドに選定。その後、第三者の専門家監修の指標を用いて11月に本調査をし、翌年3月に結果の一部を発表。調査データを広報、ブランディング、マーケティングの指標となるデータとして販売している。

ブランド・ジャパンでは、日本の中で人々に選ばれる強いブランドとその理由が分かる。どのくらい思い出されるのか、心の中で特定のブランドがどれだけ強く意識されているか(占有率)を示す指標「マインドシェア」をスコア化している。そのため、ブランド力を分かりやすく可視化、数値化したものであり、ランキングを見れば人々に想起される強いブランドが分かる。

「なぜわざわざノミネートを決める想起調査をしているのか。日経BPコンサルティングが自社でノミネートブランドをピックアップすることもできるのでは?」と思う人もいるかもしれない。そこには「業界トップブランドだからブランド力がある」とは言えないケースもあるからだ。

想起には大きく「純粋想起」と「助成想起」があり、純粋想起は、選択肢を与えずに「〇〇と言えば?」という質問に自由に回答してもらう手法だ。一方で、助成想起は選択肢の中から知っているブランドや好きなブランドを回答してもらう手法である。

ノミネートを決める想起調査についての図。「なぜ想起調査でノミネートブランドを選ぶのか?」という問いに対し、ブランド力は「純粋想起率」で測ることを示している。純粋想起は、比較対象となる助成想起と対比され、真っ先に思い出すブランド=深く強い記憶としてブランド力の強さをより表す(○)と説明。一方、助成想起は「知っている」レベルで浅く弱い記憶も含み、実力が弱いブランドが混ざる(×)と示している。

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ノミネートを決める想起調査についての図。「なぜ想起調査でノミネートブランドを選ぶのか?」という問いに対し、ブランド力は「純粋想起率」で測ることを示している。純粋想起は、比較対象となる助成想起と対比され、真っ先に思い出すブランド=深く強い記憶としてブランド力の強さをより表す(○)と説明。一方、助成想起は「知っている」レベルで浅く弱い記憶も含み、実力が弱いブランドが混ざる(×)と示している。

この2つを比較すると、純粋想起されるブランドは、真っ先に思い起こすブランドであると言える。一番に想起するためには過去に何らかの深く強い経験があったり、話題に上ったりするなどの記憶があるはずだ。

一方で、名前を見て選ぶ助成想起の場合は、おそらく浅く、弱い記憶も含んでいると考えられる。そのため、ブランド・ジャパンではブランド力の強さをより正確に表すと考えられる純粋想起の手法を採用し、選ばれたブランドだけが本調査に進むことになっている。

ブランド・ジャパンの想起調査では、「BtoB企業」「衣」「食」住」「金融・不動産」「流通」など13分野において、人々が評価している、あるいは好感を持っているブランド名を書いてもらう。そして、回答数の多かった上位からノミネートされる仕組みになっている。

ブランド想起調査の内容を説明する図。「どんなブランドが想起されるのかを調べる」と題し、生活者が分野ごとに自由記述するブランド名の対象が13分野であることを示す。分野は「企業総合、BtoB企業、衣、食、住、健康・福祉、運輸・物流・車、電機、流通、金融・不動産、情報・IT、趣味・レジャー、教育・人材」。

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ブランド想起調査の内容を説明する図。「どんなブランドが想起されるのかを調べる」と題し、生活者が分野ごとに自由記述するブランド名の対象が13分野であることを示す。分野は「企業総合、BtoB企業、衣、食、住、健康・福祉、運輸・物流・車、電機、流通、金融・不動産、情報・IT、趣味・レジャー、教育・人材」。

ブランド想起はどのように生まれるのか 脳の連想ネットワークとスキーマ最適化の考え方

ブランド・ジャパンには一般生活者が評価する1000ブランド「一般消費者編」と、有職者が評価する500の企業ブランド「ビジネス・パーソン編」がある。

想起調査の結果、ブランド・ジャパン2026の一般消費者編では、「グローバルワーク」(衣)「ジョナサン」(食)「キングジム」(住)「シャボン玉せっけん」(健康・福祉)、「福山通運」(運輸・物流・車)など52のブランドが新たにノミネートされた。

また、「情報・IT」の分野では、「OpenAI」や「Chat GPT」「Gemini」といった生成AIブランドが26年目を迎えるブランド・ジャパンで初めてノミネート入りの基準を満たす票数を獲得した。

人々に想起されるブランドになれば、消費者に優先的に選ばれるようになるというメリットがある。例えば、家電を購入する際、機能やアフターサービスなど、検討項目が多すぎるため、意識だけで複数のブランドを比較検討するのは難しい。結果的に「やっぱりソニーさんのブランドかな」と、想起ブランドがそのまま購入に結び付きやすい構造になっている。

さらに、マーケティングのコストを下げたり、株を購入する気持ちのハードル下げたり、あるいはこの会社で働きたいと考える人が増え人材採用がしやすくなったり、他の企業から取引したいと思われたり、社会的な信頼を得られたりするメリットもある。

では、ブランドを想起する仕組みはどうなっているのか。例えば、「優れた家電メーカーは?」と聞かれた時に、多くの人が、ソニーやパナソニックを思い浮かべるだろう。「温かいインナー」といえばユニクロ、「誠意のあるお詫び」といえば、とらやを思い浮かべるかもしれない。そうした瞬時に想起されるブランド力があれば、自然と購入につながっていく。こうした無意識の選択には脳の連想ネットワークモデルが関係していることが分かっている。

連想ネットワークモデルを示す図。「優れた家電メーカー?」という問いに対し、中央の「SONY」から、「世界のSONY」「革新的・尊敬」「高画質・音質」「高品質」「値段高い」「ウォークマン」「PS5」「楽しい」「大人気・話題」「成長企業」「デザイン性」「スタイリッシュ」「映画」など多数の連想語が矢印で結ばれている。これらノードとリンクのまとまりを「スキーマ(連想の全体像)」と呼び、その結果の回答例として「A. SONYです」と示している。

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連想ネットワークモデルを示す図。「優れた家電メーカー?」という問いに対し、中央の「SONY」から、「世界のSONY」「革新的・尊敬」「高画質・音質」「高品質」「値段高い」「ウォークマン」「PS5」「楽しい」「大人気・話題」「成長企業」「デザイン性」「スタイリッシュ」「映画」など多数の連想語が矢印で結ばれている。これらノードとリンクのまとまりを「スキーマ(連想の全体像)」と呼び、その結果の回答例として「A. SONYです」と示している。

「優れた家電メーカーは?」という問いに対して、脳の連想ネットワークの中では「高品質」「デザイン性が高い」などさまざまなイメージが浮かび上がり、結果的にソニーというブランドが導き出される。

この連想の全体像を「スキーマ」、単体を「ノード」と呼ぶが、想起されるためにはスキーマをいかに最適化するかが鍵となる。最適なスキーマを作るというのは、情報の点を埋め込み、情報をつなげることだ。

想起されるブランドになる条件を説明する図。「想起されるメリット→想起のしくみ→想起される方法」の流れの中で、「最適なスキーマを作る」が重要と示す。下段で、情報の点=ノード(①ベースをつくる:ブランドのキーワード、②ビジュアルをつくる:ロゴ・色・形・メッセージ)と、情報をつなぐリンク(③ちょっとした驚き:意外性・新規性、④好きになる体験づくり:課題解決・共感・同一化、⑤新しい価値観の提案:大小のパラダイムシフト)に整理している。

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想起されるブランドになる条件を説明する図。「想起されるメリット→想起のしくみ→想起される方法」の流れの中で、「最適なスキーマを作る」が重要と示す。下段で、情報の点=ノード(①ベースをつくる:ブランドのキーワード、②ビジュアルをつくる:ロゴ・色・形・メッセージ)と、情報をつなぐリンク(③ちょっとした驚き:意外性・新規性、④好きになる体験づくり:課題解決・共感・同一化、⑤新しい価値観の提案:大小のパラダイムシフト)に整理している。

人は、無数の選択肢の中から、すべてを比較して意思決定しているわけではない。多くの場合、記憶と感情に導かれ、「思い出したブランド」を選んでいる。

だからこそ、ブランドにとって最も重要なのは、選択の瞬間に思い出される席を確保することだ。「ブランド・ジャパン2026」が示す想起データは、その席を巡る競争の現在地を映し出しており、それらを確認することにもつながる。

石原 和仁(日経BPコンサルティング)金縄 洋右(日経BPコンサルティング)


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