「Webブランド調査」結果解説④
ユーザーの関心を動かすWebサイト──「Webブランド調査」が示す態度変容のポイント
製品・サービスに対する関心を高めるWebサイトの共通点
企業が運営するWebサイトにはさまざまな役割が存在するが、商品情報を中心とするサービスサイトでは、企業が提供する製品・サービスの価値をユーザーにわかりやすく伝えることが重要な課題の一つといえる。近年では、各商品のブランドサイトやオウンドメディアと連動し、ユーザーの理解促進やブランドイメージ向上を目指す動きが顕著である。これらの取り組みの効果測定としては、ユーザーが自社のブランドストーリーや特徴をどの程度理解したか・関心を持ったかといった意識変容を定量的に把握することも重要だ。「Webブランド調査」では、Webサイト閲覧を通じて、製品やサービスに対する「関心」や「購入意向」がどの程度変化したかを、「態度変容:製品・サービス」として指標化している。「2024-秋冬」調査で「態度変容:製品・サービス」のスコアが高かったサイトを見ると、食品・飲料メーカーのサイトが多数を占めた(図1)。これらのサイトは、新商品情報や期間限定アイテムの発信に加え、食・健康に役立つ情報やレシピコンテンツを充実させることで、ユーザーの関心を高めることに成功している事例といえる。
図1 「態度変容:製品・サービス」スコア上位10サイト
業種別に見る「態度変容」評価の傾向と高評価サイトの工夫
一方、食品や日用品のように高頻度で購入される商品を持たない業種もある。「Webブランド調査」は19業種のWebサイトを対象としており、業種別に「態度変容:製品・サービス」を見ると、購入頻度や利用機会が少ない業種の平均スコアは低い傾向にある(図2)。しかし、これらの業種において高評価を得ているサイトもある。
例えば、「住宅・不動産」カテゴリーの「LIXIL」は、業種平均44.2ポイントに対して、59.7ポイントと突出したスコアを獲得している。自由意見では、リフォームに関する事例や商品写真の分かりやすさが好評で、将来の利用を具体的にイメージできる情報発信が奏功しているといえる。また、「金融」カテゴリーで評価が高い「楽天カード」「イオンカード 暮らしのマネーサイト」などは、キャンペーンやポイントに関する情報とともに、カードの比較・検討のしやすさに関する自由意見が多く見られる。
こうした結果から、業種・業界の特性に合わせて、ユーザーに響く情報設計や導線をいかに作るかが重要といえる。
図2 「態度変容:製品・サービス」業種別平均スコア
ユーザー視点を組み込んだWebサイト改善と評価指標の活用が重要
「態度変容:製品・サービス」の結果が示すように、Webサイトで目指すコミュニケーションや情報発信の方向性は業種や業界に応じて検討する必要がある。その際には、担当者の現場感覚や過去の経験も重要だが、それだけではユーザーの本音や行動を十分に把握することは難しい。
定量調査・定性調査の両面を活用しながら、ユーザーニーズやサイト上の評価ポイントを把握することが、コミュニケーションの効果を最大化する近道だ。「Webブランド調査」では、ユーザー(回答者)がどのコンテンツで興味を持ち、好印象を抱いたかを把握することができる。調査結果を活用し、ユーザーの意識変容を促すWebサイト構築・運用に役立てていただきたい。
■Webブランド調査について
(URL:https://consult.nikkeibp.co.jp/branding/solutions/web-brand/)
調査目的 | Webサイトのブランド力を測定し、企業や団体のWebにおけるブランドコミュニケーション戦略の成果を定点観測する |
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調査手法 | インターネット調査 |
調査対象 | 全国、20歳以上のインターネット・ユーザー (日経BPコンサルティングの提携調査会社の調査モニター) |
有効回答数 | 36,962件 |
調査対象ブランド | 企業や団体が運営する日本の主要500サイト |
調査実施期間 | 2024年10月11日(金)~2024年10月21日(月) ※半年ごとに年2回実施(春夏:4月、秋冬:10月) |
調査企画・実施 | 日経BPコンサルティング |
連載:「Webブランド調査」結果解説
- 1)ユーザーにとって「良い」サイトとは何か? 企業サイトの役割を最大限発揮するためのポイント
- 2)「使いやすい」Webサイトの共通点──「Webブランド調査」で見るリニューアルの成果
- 3)「Webブランド調査」から見る、Webサイトが築く企業の信頼性
- 4)ユーザーの関心を動かすWebサイト──「Webブランド調査」が示す態度変容のポイント
ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント
池田 梨子
Webサイト評価調査「Webブランド調査」を担当するほか、各種ブランド調査やインタビュー、ブランドメッセージ制作などのブランディング支援に従事。周年事業デザインセンターのコンサルタントとして周年事業の各種支援も行う。
※肩書きは記事公開時点のものです。