「Webブランド調査」結果解説③
「Webブランド調査」から見る、Webサイトが築く企業の信頼性
「企業の顔」であるWebサイトは、信頼構築の最前線
企業のWebサイトは、ステークホルダーがブランドと接する最も重要なタッチポイントの一つだ。総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、「世の中のできごとや動きについて信頼できる情報を得る」ために最も利用するメディアとして「インターネット」が全体の33.1%を占め、20代では半数以上が「インターネット」を最も優先している(※)。情報収集の中心がインターネットへシフトする中、Webサイトの印象はブランド認知やイメージ獲得に大きな影響を与える。特に「信頼性」は、Webサイトを通じてユーザーに安心感を提供し、ブランドとの長期的な関係を築く上で不可欠な要素だ。
「Webブランド調査」では、サイト全体の印象やイメージを測定する「サイト・ロイヤルティ」の指標を構成する項目として、「信頼できる」の評価を調査している。「2024-秋冬」の結果を見ると、500サイト中のトップ3は「NTT/NTTグループ」「セコム」「キリン」となった(図1)。
※ 「令和5年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(令和6年6月21日掲載)
目的別利用メディア(最も利用するメディア)参照
(https://www.soumu.go.jp/iicp/research/results/media_usage-time.html)
図1 「信頼できる」得票率ランキング
Webサイトの信頼性は、UX(ユーザーエクスペリエンス)の中核的な要素であり、UX評価のフレームワーク「UXハニカム」(Morville Peter,2004)においても「信頼できる(Credible)」は7つの品質要素の一つに位置づけられている(図2)。では、企業Webサイトにおける「信頼性」には、どのような要素が必要なのか。「Webブランド調査」の「再訪意向(また利用したいか)」とその理由に関する自由記述から、その要因が見えてくる。
「信頼できる」で最も高い評価を獲得した「NTT/NTTグループ」では、「また利用したい」理由として「信頼感」や「安心感」といった直接的な評価に加え、「世の中に貢献しようとする姿勢がよく分かった」という声が見られた。企業としてのビジョンや社会的な取り組みを効果的に伝え、ブランド全体の信頼感の向上に成功しているといえる。
「セコム」は、「堅実、誠実なイメージがサービス内容と合っている」といった自由意見が見られ、暮らしの安心・安全を守るサービス、企業姿勢がサイト全体で一貫性を持って表現されている点が高く評価されている。また、「料金表があり分かりやすい」などの声も見られ、情報の透明性も信頼性の向上に寄与していると考えられる。
「キリン」は、商品情報のわかりやすい発信とともに、健康への取り組みや研究開発力、IR情報やサステナビリティの取り組みなど、多角的でバランスのとれた情報発信が信頼性を高めている事例といえる。
図2 UXハニカム
信頼されるWebサイトの構築で、ブランド価値を高める
優れたUXを実現し信頼性を高めることは、企業のブランド価値向上や持続的な成長に直接的に影響する。信頼性の高いサイトの構築には、技術的なセキュリティ対策や動作の安定性の確保だけでなく、「Webブランド調査」のユーザー評価が示すように情報の質的な向上が不可欠だ。正確かつ最新の情報提供に加え、企業の誠実さや実績が伝わるコンテンツ設計が、ブランド全体の信頼感を高める。
信頼されるWebサイトは、ユーザーの継続利用や他者への推奨などを促し、ブランドロイヤルティ強化に貢献する。Webサイトを単なる情報発信の場ではなく、ユーザーとの信頼関係を築くプラットフォームとして整備するためには、定期的なユーザー評価の測定と戦略的な改善が重要といえる。
「Webブランド調査」でユーザーから見た「信頼性」を客観的に把握することで、ブランド価値を高めるWebサイト構築・運用に役立てていただきたい。
■Webブランド調査について
(URL:https://consult.nikkeibp.co.jp/branding/solutions/web-brand/)
調査目的 | Webサイトのブランド力を測定し、企業や団体のWebにおけるブランドコミュニケーション戦略の成果を定点観測する |
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調査手法 | インターネット調査 |
調査対象 | 全国、20歳以上のインターネット・ユーザー (日経BPコンサルティングの提携調査会社の調査モニター) |
有効回答数 | 36,962件 |
調査対象ブランド | 企業や団体が運営する日本の主要500サイト |
調査実施期間 | 2024年10月11日(金)~2024年10月21日(月) ※半年ごとに年2回実施(春夏:4月、秋冬:10月) |
調査企画・実施 | 日経BPコンサルティング |
連載:「Webブランド調査」結果解説
- 1)ユーザーにとって「良い」サイトとは何か? 企業サイトの役割を最大限発揮するためのポイント
- 2)「使いやすい」Webサイトの共通点──「Webブランド調査」で見るリニューアルの成果
- 3)「Webブランド調査」から見る、Webサイトが築く企業の信頼性
ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント
池田 梨子
Webサイト評価調査「Webブランド調査」を担当するほか、各種ブランド調査やインタビュー、ブランドメッセージ制作などのブランディング支援に従事。周年事業デザインセンターのコンサルタントとして周年事業の各種支援も行う。
※肩書きは記事公開時点のものです。