今回は特に「ビジネス・パーソン編」の中でも老舗企業ブランドに焦点を当て、29歳以下と50歳以上での評価の違いを、昨今の社会情勢と照らし合わせながら一部紹介する。
「総合力」ランキングに見る、世代ごとのブランド評価の違い
「ブランド・ジャパン2025」ビジネス・パーソン編の「総合力」(※1)トップから20位までの順位を全体(18歳~60歳)、29歳以下、50歳以上に分けて見る。1位のトヨタ自動車は各世代でトップとなり、年代に関わらずブランド力が高い。人々の頭の中になんらか好意的なイメージがあると考えられる。
年代ごとでは、29歳以下でスターバックス、Amazon(アマゾン)、ファミリーマートなどといった日常的に接点が多く、SNSでも存在感のある企業が上位に入っている。一方、50歳以上ではソニー、パナソニック、本田技研工業といったこれまで“ジャパンブランド”の代表として日本経済を長年高い技術力で支えてきた老舗ブランドが並ぶ。
※1 ビジネス・パーソン編の「総合力」は、先見力、人材力、信用力、親和力、活力の5因子に紐づく21項目のブランドイメージと、別建ての5項目の企業評価項目から算出している。
これら老舗企業ブランドについては、若年層の結果では評価に差が出た。パナソニックは50歳以上では6位と安定の支持を得る一方で、29歳以下では20位。本田技術工業は50歳以上で8位だったが、29歳以下では、20位圏外となった。
ソニーは、エンタメ・ゲーム系の製品での接点が大きいため若年層にも接触する機会がある。加えて、2025年1月に開業した「Ginza Sony Park」といった若者が自然と足を運ぶ、SNSでも話題にしやすい場を通じて、世代を超えたブランド体験を演出している。
改めて29歳以下のランキングを見ると、サイゼリヤが11位に入った。全体および50歳以上の場合は20位圏外となるなど若者世代と比べるとイメージがそれほど浸透していない結果に。物価高の社会的背景のある中、「安くて楽しい」「みんなで行ける」という点が若者世代の強い価値観にマッチし評価を得ているとも考えられる。
このほか若年層ではスターバックスやAppleなどの外資系ブランドが、共感性やライフスタイル提案力から高く評価される一方で、高年層ではトヨタやパナソニックなどの日本企業が、長年の信頼と社会貢献への実績から強く支持されている。コスパやタイパといた価値観に寄り添ったブランドが若者に支持され、高年齢層では信頼や歴史・伝統といった積み重ねがブランド価値として支持されている。
認知度にも世代格差 “知っているブランド”構造の差異
「認知度スコア」(※2)で見ても50歳以上ではパナソニックは5位と高い認知を得ているが、29歳以下では20位圏外となった。一方、スターバックスやサイゼリヤのように若者世代には高い認知度スコアを獲得しているものの、高年齢層には浸透していないブランドもある。世代ごとに認知度の構造が異なる実態も「ブランド・ジャパン」の調査結果から浮かび上がる。
※2 認知度を「よく知っている」~「全く知らない」を5段階で尋ねた。「認知度スコア」は、この選択肢それぞれに異なる重みをかけ100で割った加重平均値を指す。
「ブランド・ジャパン」は第三者の専門家監修の客観指標のもと、25年間変わらぬ指標で調査をしているため、データ購入でこれらの結果を経年で確認することも可能となる。企業、商品、サービスブランドを混ぜて調査した「一般生活者編」の総合力や認知率の結果と比較してみると、より世代間ごとのブランド認知の実態が見えてくる。
ブランド本部 ブランドコミュニケーション部
金縄 洋右
ビジネスアーキテクト部を経て、ブランドコミュニケーション部に所属。
ブランド評価調査プロジェクト「ブランド・ジャパン」をはじめ、さまざまなブランドコミュニケーション領域の案件を担当。
※肩書きは記事公開時点のものです。