イベントレポート<NBPC BRAND DAY 2025【第1部】>

ミッション・理念を貫いて高まるブランド価値

2025.05.30

ブランディング

  • 金縄

    ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 金縄 洋右

2025年4月18日(金)、日経BPコンサルティング主催「NBPC BRAND DAY 2025─『ブランド・ジャパン』25周年記念─」が、東京・品川のコンファレンスセンターにて午前・午後の2部制で開催された。本記事では、午前に行われた第1部「最新ブランド動向と企業の取り組み」の様子を紹介。
ブランド・ジャパン2025一般生活者編で総合3位にランクインした株式会社ローソンの代表取締役社長・竹増貞信氏の基調講演と、直近5年間の結果を再解析した結果を元に最も飛躍したブランド、常に成長を続けてきたブランドを讃える本イベントにおいて最優秀賞ブランドに選ばれたGoogle日本法人のシニアディレクター コンシューマーマーケティング 小池渉氏の特別講演を中心に紹介する。

ブランド・ジャパン2025・結果解説動画はこちら
写真=齊藤哲也

「ブランド・ジャパン」25周年に際し感謝伝える

寺山 正一

株式会社日経BPコンサルティング
代表取締役社長 寺山正一

開会の挨拶には日経BPコンサルティングの代表取締役社長 寺山正一が登壇。25年前に購入し、セミナー当日も着用していたエルメスのネクタイを引き合いに出しながらブランド・ジャパン25周年への感謝を述べた。

続いて、ブランド・ジャパン特別顧問でカリフォルニア大学バークレー校名誉教授、プロフェット社副会長でもあるデヴィッド・A・アーカー博士より届いたビデオメッセージが紹介された。
メッセージの中でアーカー氏は、情報過多で乱雑な現代において、改めてブランド価値を高めることの重要性について強調。同時にブランド構築は一朝一夕では成し得ないとし、市況に応じて試行錯誤を繰り返しながら進めるアジャイル型での取り組みが求められることを指摘した。

ピンチはチャンス! コロナ禍に顧客の声を収集し、過去最高益を達成

続いて、ローソンの代表取締役社長・竹増貞信氏が登壇。「ピンチはチャンス!」と題した基調講演が行われた。

積極的なIT投資でシステムを総入れ替えした2017~2019年、そして新型コロナウイルス禍の影響が色濃かった2020~2022年に大きな経営危機に陥っており、特にコロナ禍の影響は大きかったというローソン。「2020年は本部の利益を落としても、何とか加盟店の利益を守りたいと思った」と竹増氏は語った。それでも2020年度の既存店の売上高は前年比93%、当期純利益約60%減の86億円と、苦しい状況だったと話す。

株主からも厳しい声が飛ぶ中、竹増氏はグループ理念「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」に立ち返り、「『みんなの役に立ちたいチャレンジャー』であり『社会に認められたエッセンシャルワーカー』でありたい」と感じていたと強調した。

「ピンチと言っていても、いくらでもチャンスはある」「100年に一度の危機といわれているが、それは100年に一度のチャンスでもある」と言い聞かせたという。「何の根拠もなかったが、売り上げが減少した全国の店舗への資金的支援を約束し、加盟店利益には本部が責任を持つことを約束した」と竹増氏は語った。

竹増 貞信氏

株式会社ローソン
代表取締役社長 竹増 貞信 氏

都心・繁華街を中心とした加盟店からは日々窮状が届いていた状況の中、竹増氏は自らの足で行ける範囲の店舗を見て回ったという。「そこで多くの現場スタッフの声、生活者の声に耳を傾け“マチの変化”を確認。顧客のニーズに素早く対応するため、大変革実行委員会を立ち上げ、12のプロジェクトを走らせた」と語った。プロジェクトのほとんどは現場で見聞きしたことであり、コロナ禍に社員が考え、形にしたアイデアだったと強調した。

2025年にROE15%以上、EPS500円以上を実現することを掲げた中期経営計画「Challenge2025」を2021年に発表したが、当初は非現実的な数字と思われたのか、「あまりにも反響がなかった」と竹増氏は振り返った。だがこの「Challenge2025」のもと、コロナ禍による顧客の生活スタイルの変化とコンビニに対するニーズの変化に合わせて2021年から1年半をかけて全店リニューアルを実施するなど、大改革を推進。加盟店からの声も踏まえて、ローソン史上最大規模のCMも投下し、加盟店を支援したという。最終的に、チャレンジの指標として掲げていたROE15%以上、EPS500円以上という目標は、2年前倒しで実現することに成功したと語った。

「小売店としてのローソンは、感染拡大・人流の抑制に比例して売上高も影響を受け続けた3年だった」と振り返った竹増氏。次に見据えるのは2030年だと話す。リアル+テックによる社会課題解決を目指し、人流に左右されない経営として「マチの再創生×日販No.1」、ひいては「アジアのGAFA-L」を目指していくと語り、講演を締めくくった。

ブランド評価とは、企業におけるブランド戦略の「顔」

基調講演のあとは、ブランド・ジャパン企画委員会委員長である一橋大学院経営管理研究科教授 阿久津聡氏による挨拶が行われた。

阿久津 聡氏

ブランド・ジャパン企画委員会委員長
一橋大学大学院 経営管理研究科国際企業戦略専攻教授
阿久津 聡 氏

同氏は「ブランド評価とは、いわばブランド戦略の『顔』であり、『表情』である」と指摘した。企業がどのような存在でありたいか、どのようなパーパスを持って社会に貢献していくのか、具体的にどのような活動をしていくのか。そうしたものが企業の「顔」や「表情」として、ブランド・ジャパンのランキングに結果として表れてくる、と強調。ブランド評価自体は、1年ごとに微細な変化が認められるものの、比較的どの企業も安定していると語りつつ、「顔」「表情」として意味のある変化が出てくるのは、3年や5年、10年といった単位であると、25年の歴史を振り返りながら指摘した。ブランド・ジャパンは、そうした企業の顔つきの変化が見えるものだと話し、「100年先も続けていきたいと思っている」と意気込みを語った。

阿久津氏の講演のあとは、日経BPコンサルティング ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 石原和仁による「ブランド・ジャパン2025」結果解説を行った。

直近5年間の結果を再解析した結果を元に最も飛躍したブランド、常に成長を続けてきたブランドを讃える「ブランド・ジャパン」25周年アワードの表彰式が実施された。

最優秀賞に「YouTube」、コンビニエント部門優秀賞に「Google」が選出されたGoogle日本法人のほか、フレンドリー部門優秀賞でカップヌードルが選出された日清食品、アウトスタンディング部門優秀賞に選出されたUSJ、イノベーティブ部門優秀賞に選出されたワークマン、ブランド上昇部門優秀賞に選出されたイオンモールが表彰された。

白澤 勉氏、山本 歩氏、小池 渉氏、林 知幸氏、宮入 貴子氏

表彰を受けた(左から)日清食品株式会社マーケティング部部長 白澤 勉氏、合同会社ユー・エス・ジェイ ブランディング&クリエイティブ部部長 山本 歩氏、Google 日本法人シニア ディレクター 小池 渉氏、株式会社ワークマン役員待遇 営業企画部兼広報部 部長 林 知幸氏、イオンモール株式会社戦略統括部 社長室長 宮入 貴子氏

ミッションや理念を貫き、挑戦を続けることが重要

続いて、Google日本法人Senior Director, Consumer Marketing 小池渉氏による特別講演が行われた。

Googleは1998年、検索エンジンを開発した会社として始まって以来、グーグルマップ他さまざまなプロダクトを開発し、全世界10億人以上のユーザーを抱えていると紹介。そのミッションは、「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」であると語った。Googleでは、それを推進する力がAIであると考え、「モバイルファーストからAIファーストへ」「AIの力で解き放とう、日本の可能性」というスローガンのもと、大胆かつ責任あるサービスとして、すべてのGoogleの主力サービスを再構築していると小池氏は述べた。

小池 渉氏

Google 日本法人
シニア ディレクター、コンシューマー マーケティング
小池 渉 氏

ブランド・ジャパンにおける評価が急上昇し始めたのは2002年以降のこと。そんなGoogleが大切にしてきたポイントは、「オーセンティシティ」「ユーザー」「マジック」の3つだと小池氏は説明した。

「オーセンティシティ」とは、「ミッションに基づいているか、自分たちならではの価値があるか」という視点。「ユーザー」とは、「ユーザーにしっかり焦点を当てているか」という視点のことだという。ユーザーファーストに特化したサービスの事例として、小池氏は「思ったまま、見たまま」に検索することのできる「検索のマルチモーダル化」を挙げた。「人が検索に合わせるのではなく、検索が人に合わせる」時代に突入している、と同氏は指摘した。

そして「マジック」とは「絶え間ないイノベーション」のことだと小池氏は説明。BCNアワード2025 Androidスマートフォン部門1位を獲得したGoogleピクセル、カメラをかざせば目の前のあらゆるものについて会話AI「Gemini」を例に挙げた。

小池氏は、YouTubeもマジックの一つだと指摘。YouTubeについて、「表現する自由、アクセスする自由を世界中にもたらし、4500億円以上の経済効果と9万人以上の雇用を創出してきた」と話し、YouTube Short、字幕の自動生成などさまざまな利便性に着目し、マルチデバイス、マルチフォーマット化を実現してきたと強調した。

オーセンティシティは、ミッションに沿った一貫性のことであり、それはすなわちユーザーのために生み出されるイノベーションへの絶え間ない挑戦でもある。それが長期的な挑戦を生み出していくこと、そして、自分たちのミッションや理念をブレずに貫くことが大事であることを強調し、小池氏は特別講演を締めくくった。

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金縄 洋右

ブランド本部 ブランドコミュニケーション部
金縄(かねなわ) 洋右(ようすけ)

ビジネスアーキテクト部を経て、ブランドコミュニケーション部に所属。
ブランド評価調査プロジェクト「ブランド・ジャパン」をはじめ、さまざまなブランドコミュニケーション領域の案件を担当。

※肩書きは記事公開時点のものです。